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オーセンティシティーとユーモアある精神の融合から見える杉本博司の現在
というわけで、ある審美性にもとづいた銀塩写真は絶滅するかもしれないが、写真が扱ってきた表象の問題が、まったく別のかたちで蘇生しつつあるのが現在である。
『杉本博司 絶滅写真』は、キャリア初期の代表作から始まり、20世紀の近代社会を象徴する建築やファッションのイメージを扱う作品群を経由して、光の三原色という現象にも言及するなど、先祖返りするような近作で終わる。そのどれもが職人的な技術を駆使した労作であり、そこに例えばAIによる画像生成やバイブコーディングの軽薄さはない。しかし近代芸術とは、そのような軽さ、軽率さ、遊戯性とともに生まれ育まれてきた歴史を持っている。


ステートメントで述べられている、「PHOTOGRAPHY」を、撮影した対象の霊魂を抜き取ってしまう「抜霊画」と訳したりする杉本の言語センスや、展覧会会場で掲示された作家作の狂歌群などからは、彼なりの軽薄さへの関心を感じる。というか、杉本作品には、オーセンティシティー(真正性)へと突き進もうとするきわめて野心的な推進力と同時に、それを自ら茶化さざるにはいられないドレスダウン(例えばヴィヴィアン・ウエストウッド)のパンキッシュな身振りが、ほとんど必ず併存しているのだ。
今回の展覧会で律儀に作品一つひとつに付与された狂歌など、まだまだ人生の若輩者である筆者からすれば「よせばいいのに……」と赤面してしまう代物ではあるのだが、しかしそれを付け加えずにいられなかったユーモアある精神の同時代性も、なんとなく察せられる。芸術に永遠などない。芸術に純粋性などない。いわんや万世一系の血統などあるはずもない。あまりにもバカげた政治主張が跋扈する時代に抵抗する……とまでは言わないが、大袈裟に「絶滅」の2文字をMA-1に刺繍して背負ったりする大仰な身振り(あのMA-1、好きです)に、杉本芸術の現在性を見出すこともできるはずだ……なんて言っちゃったりなんかしちゃったりしてー。
『杉本博司 絶滅写真』

会期:2026年6月16日(火) – 9月13日(日)
開館時間: 10:00–17:00(金曜・土曜は10:00–20:00)
入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日
会場:東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー(アクセス:https://www.momat.go.jp/access)
主催:東京国立近代美術館、日本経済新聞社
特別協賛:DIOR
協賛:セイコーグループ、サンエムカラー
特別協力:公益財団法人小田原文化財団、ギャラリー小柳
観覧料一般:2,300円(2,100円)、大学生 1,200円(1,000円)、高校生 700円(500円)
※いずれも消費税込 ※( )内は20名以上の団体料金※中学生以下、障害者手帳をご提示の方とその付添者(1名)
は無料
※本展の観覧料で入館当日に限り、所蔵作品展「MOMATコレクション」(4 – 2F)もご覧いただけます。(本展のサテライト展示として、所蔵品ギャラリー3階では、東京国立近代美術館所蔵の『劇場』『海景』から全13点と撮影や暗室作業に関する覚書を記した「スギモトノート」も公開中。)
問い合わせ: 050-5541-8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト:https://art.nikkei.com/sugimoto/