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ドラマ『さよならノワール』は「完璧じゃなくていい」と繰り返す 最終話直前レビュー

2026.9.15

#MOVIE

©フジテレビ
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警視庁に実在する「犯罪被害者支援室」を舞台に、様々な人の「闇」を描いてきたドラマ『さよならノワール』(フジテレビ系)が最終回を迎える。

元暴力団対策係の刑事・黒木夏海(小池栄子)と「空気が読めない」心理学者・白石絵梨子のタッグで、様々な犯罪被害者や遺族を支援してきた本作は、後半から、その支援先をそれぞれの同僚たちに広げていく。

ドラマ冒頭から謎の多かった、失踪していた黒木の元上司・山崎創(渡部篤郎)が最終回直前の第10話でついに登場するも、終盤、彼は何者かに銃撃されてしまう。

山崎の秘められた過去や黒木の「失った何か」も気になる本作について、ドラマ・映画とジャンルを横断して執筆するライター藤原奈緒がレビューする。

※本記事にはドラマの内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。

鴨居卓海(岡山天音)が抱えていた「闇」と支援

過去の事件の被害者遺族だった刑事・鴨居卓海(岡山天音)©フジテレビ
過去の事件の被害者遺族だった刑事・鴨居卓海(岡山天音)©フジテレビ

前半を振り返った記事で、白石絵梨子(北香那)は、「闇」を覗き込まずにはいられない性質を持つと書いた。前半までは、それは基本的にバディである黒木夏海(小池栄子)の持つ闇に対して向けられていた。黒木は、警視庁西池袋署の暴力団対策係から犯罪被害者支援室に異動するきっかけとなった1年前の出来事を、「終わらない問い」として抱え続けている。第5話において、白石のことをよく知る精神科医・五十畑修(岡部たかし)は、彼女が「黒木さんに惹かれている」ことを危うさとして捉えていた。なぜなら彼女は「闇に首を突っ込んでいく」習性があるから。同時にその習性は、彼女が「特別な感情はない」と何度も前置きしつつ惹かれている、強行犯係の刑事・鴨居卓海(岡山天音)が抱えている「闇」を予感させてもいた。

そして第9話では、その鴨居が抱え続けていた過去が明らかになった。彼は、20年前に起きた誘拐事件の被害者・立花晶子(伊藤かれん)の実の兄だったのだ。第9話では、20年前の時点では犯罪被害者として必要な支援を受けることができなかった鴨居に対し、白石や、犯罪被害者支援室の面々、鴨居の同僚である刑事たちが、思い思いに彼を気遣い、改めて支援を行えないかと奮闘する姿が描かれた。

臨床心理士・白石(北香那)が闇を覗き込む理由

「闇」を覗き込まずにはいられない臨床心理士・白石(北香那)©フジテレビ
「闇」を覗き込まずにはいられない臨床心理士・白石(北香那)©フジテレビ

白石は、ただの興味本位で闇に首を突っ込んでいくわけではない。彼女はいつも、つらい過去や答えのない問いを抱えているのであろう人に対して、思わず手を伸ばさずにはいられないという、切実な感情に突き動かされている。

「時々、距離感がおかしいとこがある」「根本的に人の痛みがわからないから、それを補いたくて心理学を専攻した」「人に期待を押し付けるタイプだという自覚があるから、仕事以外で人と付き合うのはやっぱり控えようと思う」と自ら口にするように、人と関わることに対して強い苦手意識を持っているにも関わらず、彼女は、彼女にとって「大事な人」である黒木や鴨居に真っ直ぐにぶつかっていく。カウンセリングによって、黒木に自身が抱えている問題とちゃんと向き合う時間を与えたり、妹の事件が起きた13歳当時の鴨居に懸命に寄り添おうとしたりする。その原動力は、「何年ぶりかで親しく話せるようになった人だから」とか、「友人として認めてもらえたから」といった、「普通」の人から見ればささやかな喜びにあり、その人間らしさを愛おしくも感じてしまう。

「白石化」していく同僚たち

暴力団対策係、強行犯係の面々も「白石化」していく©フジテレビ
暴力団対策係、強行犯係の面々も「白石化」していく©フジテレビ

そして、そんな白石のみが携えていたはずの習性が、登場人物全体に広がっていったかのようだったのが、連続ドラマ終盤の展開である。第9話では黒木や白石たち犯罪被害者支援室の面々のみならず、同僚刑事全員が、20年前に妹の死の原因となった誘拐事件の犯人・熊沢学(杉山圭一)に鴨居が復讐してしまうのではないかという心配を抱え、各々、鴨居を思うがゆえの行動を起こす。

第10話は、黒木が、「闇堕ち」したと噂される元上司・山崎創(渡部篤郎)を探す回だった。休暇をとってまで山崎を探そうとする黒木を心配した暴力団対策係の係長・河口(眞島秀和)は、彼女と行動を共にする。そして、そんな2人の勝手な行動の危うさを心配するそれぞれの同僚たちの姿が描かれた。

大切に思う人のために、対立から連帯へ

連帯は黒木と白石から広がっていった©フジテレビ
連帯は黒木と白石から広がっていった©フジテレビ

このドラマは毎話、タイトルバックのシーンが印象的だが、第10話のオープニングは「闇」から始まる。闇の中にタイトルとともに浮かんでいるのは、黒木たちの元上司・山崎の顔だ。闇カジノの隅に佇む彼の姿を、カジノのスタッフ・ユウジ(緒形敦)は「幽霊みたいだった」と言う。記憶を失っているように見える山崎は、自分が何者かも、必死で彼を探しにきた元部下である黒木と河口のこともわかっていなさそうだ。「闇の向こうへ行ってしまいそうな人を、止めようと必死に手を伸ばす」のは、白石だけではなかった。今度は、黒木と河口が「闇」の向こうに行ってしまった山崎を、必死で追いかけている。

そうやって、大切に思う人を心配せずにはいられない彼ら彼女らは、それゆえに、元々あったはずの垣根をいとも簡単に越えていった。序盤は、黒木と白石、そして2人を見守る臨床心理士の田村貴子(戸田恵子)という女性のみのチームである犯罪被害者支援室と、他の刑事たち、つまりは男性のみで構成されている暴力団対策係、強行犯係との対立構造で物語が進んでいくかのように思えたが、白石と鴨居の自動販売機スペースでの交流を皮切りに、気づけば境界は曖昧になり、女性同士、男性同士だけではない様々な連帯が生まれていった。

井上由美子脚本が語りかける「完璧じゃなくていい」

落ち込む白石に黒木も語りかける©フジテレビ
落ち込む白石に黒木も語りかける©フジテレビ

「悩みや辛さを抱えたままでいい。完璧じゃないほうが人間味があっていいということです」とは、白石が黒木に対して言った言葉だ。第6話で、交通事故に遭った6歳の少年・将斗(橋本則行)の母であるシングルマザー・林田あかり(恒松祐里)と接して、離れて暮らす娘を思い出し、冷静ではいられなくなった黒木に、白石はそう投げかけた。逆に、その後の第7話では、黒木の方が、失敗して落ち込む白石に対して「(被害者・岩田が白石に心を開いたのは)ダメなところがあったからじゃない? 完璧さは、傷ついた人を息苦しくさせるから」と投げかける。高校の生物教師・岩田倫太郎(三河悠冴)の恋と美人局被害を描いた第7話は、「人間以外の生物は、失敗イコール死に直結するんです。狩りや逃走に失敗したら終わり。人間だけが落ち込んだり、泣き暮らすことができる。そしてまた、生き続けることも……」という岩田の言葉で締めくくられた。

「完璧じゃなくていい」。井上由美子脚本『さよならノワール』はそう何度も語りかける。完璧じゃないから、人は時に間違える。闇に惹かれ、闇に落ちる。それは、犯罪被害者支援室の面々が向き合ってきた、様々な犯罪被害者や遺族たちもそうであり、刑事や臨床心理士に至っても変わらない。でもだからこそ、彼ら彼女らは、互いに補い合い、支え合おうとする。最終話では、これまでずっと姿を現さなかったにも関わらず、本作全体のキーマンであり続けてきた山崎が、彼女たちが向き合う最後の支援対象となるだろう。果たして、彼の失われた記憶の中に、黒木の「失った何か」はあるのだろうか。

『さよならノワール』

©フジテレビ
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フジテレビ系にて毎週火曜よる9時から放送中
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/sayonaranoir-cx/

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