2024年3月28日(木)から東京・初台の新国立劇場、4月27日(土)から京都・左京区のロームシアター京都で国内初上演されるシアターピース『TIME』の新ビジュアルと、アーティストコメントが発表された。
坂本龍一が生前最後に全楽曲を書き下ろし、高谷史郎(ダムタイプ)とコンセプトを考案、創作した『TIME』は、2021年にオランダで初演。「時間」をテーマとした作品となっており、夏目漱石の『夢十夜』(第一夜)、夏目漱石が影響を受けたとされる中国の故事「邯鄲(かんたん)」「胡蝶の夢」のテキストが引用されている。ビジュアルアートは高谷が手がけ、田中泯、石原淋がダンサーとして、宮田まゆみが笙奏者として出演。衣裳デザインはソニア・パーク(ARTS&SCIENCE)、音響FOHエンジニアはZAKが手がける。
今回発表されたコメントは、坂本、高谷、出演者の3名によるもの。坂本のコメントは2023年6月に刊行された自伝『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』から抜粋された内容となっている。
東京公演のチケットは10月14日(土)、京都公演のチケットは10月29日(日)より発売開始。なお、東京公演初日は坂本の命日となる。
坂本龍一
パフォーマンスとインスタレーションの境目なく存在するような舞台芸術を作ろうと考え、『TIME』というタイトルを掲げ、あえて時間の否定に挑戦してみました。
(2023年新潮社刊『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』より抜粋)
高谷史郎
坂本龍一さんと長い時間をかけて創作に取り組んだ『TIME』がようやく日本で上演の運びとなりました。奇しくも東京公演の初日は一周忌。坂本さんの訃報を聞いた時、この偶然に慟哭し言葉を失いました。2021年コロナ禍のアムステルダムでの初演は、田中泯さん、宮田まゆみさん、そしてチーム全員が一丸となって坂本さんと共に成し遂げた奇跡の初演でした。私は幸運にもこれまで数多く坂本さんと作品を制作させていただき、その過程で多くのことを学びました。『TIME』のテーマである「時間」についても様々な角度から多くのことを語り合いました。坂本さんが思索を重ね情熱を持って作り上げた『TIME』。他の作品と同様に『TIME』も坂本さんのアイディアで埋め尽くされています。そのシンプルな構造の中に何重にも様々な思想が織り込まれていて、坂本さんがプロットされたより深い意味を、今後も作品を上演していくたびごとに、私自身、理解を深めていくのだと感じています。終盤、舞台に響く藤田六郎兵衛さんの笛の音は、六郎兵衛さん生前最後となってしまった演奏を、渡邊守章先生演出の舞台公演の際に急遽記録させていただいた音源であり、坂本さんの強い思いでこのシーンが生まれました。すべてが奇跡のようであり夢のようであり、それは「時間」の中に、存在します。
田中 泯
ヒトは現在だけを生きている者ではない。現在だけに眠る者でもない。金輪際の外にまで心踊らせ生きる者だ。僕は坂本龍一さんと、ずっとその事を話し続けてきた。これからもだ。沈黙の内側での会話だった。ある時、坂本龍一さんと高谷史郎さんが用意し演出する舞台作品「TIME」へ参加を頼まれた。お二人の共鳴する舞台の時にカラダを投げ込みたいと自然に思った。用意はとっくに済んでいる。「TIME」の日本公演が間も無く始まる。また坂本さんと話せるかな。
宮田まゆみ
「TIME」。
空間、音、ことば、そのすべてが静寂から生まれ、終(つい)には静寂に吸い込まれてゆく。
大いなる静けさに包まれたかけがえのない時をオランダで過ごしました。
日本でまた、この幸せを皆さまと共にすることができる。なんとうれしいことでしょう。
坂本さんもきっとふわふわと雲に乗っておいで下さるに違いありません。
2024年春を待ち遠しく思います。
石原 淋
さあ、今度はどんな旅に出かけようか。どんな支度をすればいいかな。そこにいけばどんな呼吸を感じられるかな。戻れなくってももういいや!ってなくらい、おもいっきりファンタジーに飛び込んでいこう。波瀾万丈の大河の流れに乗り、永遠と続く小さな命の1つ、心細い事ばっかりだけれど、なんだか「あたたかいや」って思える儚い一瞬を感じ続けたい。ね、そうだよね?。