2021年の結成以来、東京のライブシーンを中心に活動している3ピースバンド・downtの音楽を初めて聴いた時、自身の青春時代を想起した。今にも崩れそうな儚さと、もがき前に進もうとする力強さが共存していたためだ。
3月6日に満を持してリリースされた1stフルアルバム『Underlight & Aftertime』には、ライブを経てより強固になった再録曲や新機軸を提示する楽曲を含む11曲が収められている。結成からの3年間を詰め込みながら、新たな姿を見せつける1枚だと言えよう。
富樫ユイ(Vo,&Gt)、河合崇晶(Ba)、テネール・ケンロバート(Dr)の3人に本作『Underlight & Aftertime』についてはもちろん、自身のルーツや不安だらけのバンド結成、模索を続けていたこれまでの作品についてを語ってもらった。インタビューを通じて見えてきたのは、形にすることの苦悩とそれ以上の喜びだった。
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3人と音楽の出会い。「音楽が嫌いですと自己紹介をしていた」(河合)
―downtの音楽は今にも終わってしまいそうな儚さがあるのに、それでも凛として屹立している強さがあると感じています。今日はそういったところも伺えればと思うのですが、まずは皆さんと音楽の出会いから教えてください。
富樫(Vo&Gt):小さいころピアノ教室に通っていたのが、音楽との出会いです。兄が洋楽を好きだったこともあって、家の中では常に音楽が流れていて。ただ、バンドを知るまでには少し時間がかかりました。中学時代に学園祭で先輩方がバンドで演奏しているのを見て、私もやってみたいと思って高校入学時に楽器を買いましたね。
―最初からギターを選んだんですか?
富樫:そうですね。大学のサークルで4年間ギターを続けていたんですが、社会人になってからしばらく楽器を触らなくなってしまって。ある時、全てを投げ出したいと思ってバンドをするために上京して、downtが始まりました。
ロバート(Dr):僕は母親が槇原敬之や宇多田ヒカルを聴いていたのが、きっかけだったかな。中高で楽器を始めたわけではなかったんですが、中学生ぐらいの時に聴いていたBUMP OF CHICKENがバンドを好きになったきっかけかもしれないですね。
―バンドを始めたきっかけは何だったんですか?
ロバート:高校に入ってLINKIN PARKを好きになって、音楽をきっかけに友達ができて。そこから楽器に興味が湧きだして、大学に入ったタイミングでドラムを始めました。そこからは色々なコピーバンドを経て、社会人になってオリジナルのバンドを始め、河合さんと出会いましたね。
河合(Ba):俺は物心がつくころには、エレクトーンをやっていました。
―それは習い事で?
河合:そうですね。田舎だったので習い事の選択肢も無く、いとこがやってたので習っていたんですが、つまらなくて。当時は「音楽が嫌いです」と自己紹介をしていました。
―それほど嫌いだったところから、音楽に興味を持ったきっかけは何だったんですか?
富樫:ゲームやアニメが好きだったので、ゲーム音楽がきっかけでした。田舎でCDショップも無かったし、インターネットで音楽を聴く時代でもなかったので、ゲーム機を使って音楽を聴いていましたね。
―ゲーム音楽とバンドは違ったところもあると思うんですが。
河合:高校の寮の友達にHi-STANDARDやGOING STEADY、Metallicaなどを教えてもらって少しバンドを好きになって。そこから学園祭でキーボードを使ってベースを演奏したんですが、きちんと演奏したいなと思ってギターを始めましたね。
-今お話しいただいたルーツを、downtを通して再構築している感覚なのでしょうか? それとも自分の軸にないものを増やしている感覚ですか。
ロバート:自分の意識外のことに新しく触り始めている感覚が強いです。今まで聴いてきたものを受けて、意識的に変化させることはないですね。
河合:自分が感動したものしかできないと思っているので、ライブや音源でいいなと思ったものを自分なりに表現しているつもりです。自分たちで「オリジナル」を一から創造しようとすると、逆に無難なものにしかならなかったり、独特の「雰囲気」だけになっちゃいますね。音楽だけに関わらずですが。
富樫:私は聴いたものをリファレンスにすることが、元々なくて。波の流れのような抽象的なものを、ギターのフレーズに落とし込んでみるところから始まることが多かったです。自分の中では絵を描く感覚と似ていると思っています。
河合:既にあるテンプレートを綺麗になぞろうとしたら、途中で勝手に変えたくなっちゃったりもして、最終的に微妙に違うじゃないですか。料理と一緒かな。