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NEWS EVENT SPECIAL SERIES

日本のアーティストの海外進出に必要な下調べと戦略。『CUEW』に集まった関係者に取材

2026.7.8

#PR #MUSIC

海外進出を志向する日本のアーティストにとって、その具体的な道筋や手がかりをつかむのは、必ずしも容易ではない。どの国を目指すべきか、誰と組めばいいのか、いつが動き時なのか──その足がかりとなる示唆を得られる場として、ショーケースフェスティバル『CUEW Showcase & Conference』が、2026年4月9日、10日の2日間にわたって東京・渋谷のDragon Gateで開催された。

本稿では一部のトークプログラムの内容と、海外から訪れた3名のデリゲーツへのインタビューをもとに、海外での活動を考えるアーティストや音楽関係者のヒントとなる言葉を紹介する。現地参加できなかったアーティストや関係者にも参考になる形で知見を共有するので、最後までぜひご覧いただきたい。

2度目の開催。『SYNCHRONICITY』との連動、100名近い海外デリゲーツが参加

『CUEW』は日本やアジアのアーティストの才能を世界へ発信するプラットフォーム。日本やアジアのアーティストたちがキャリアの転換となるきっかけを掴み、未来のヘッドライナーへと成長できる場の創出を目的に掲げている。

初開催となった2025年のショーケースイベントでは、8ヶ国の音楽業界関係者をデリゲーツ(組織やチームの代表者、派遣員の意)として招聘し、2日間にわたるカンファレンスや交流会・ショーケースライブを実施。その後、藤原さくらのエジプトのフェス出演や、sorayaの香港・台湾での単独公演が実現するなど、具体的な成果も生まれている。

初回の『CUEW』は2025年8月、2日間にわたり渋谷のXXI / FOWSにて開催。独立行政法人国際交流基金(JF)との共催のもと、カンファレンスプログラムと交流会、ショーケースライブを実施した。

第2回となった今回も、独立行政法人国際交流基金(JF)との共催を継続しながら、規模を大幅に拡大し、韓国、タイ、台湾、インドネシア、イギリス、アメリカ、フランス、ドイツなど20を超える国から100名近いデリゲーツが参加。世界各地のフェス関係者やエージェントなど、現場の最前線で活躍するプロフェッショナルたちが集い、リアルな経験をもとに率直な言葉を交わした。さらに4月11日、12日に行われた都市型音楽フェス『SYNCHRONICITY』と連携することで、デリゲーツたちが同フェスの出演アーティストを視察できる機会も設けられた。

日本では珍しい、ショーケースフェスティバルの役割

そもそもショーケースフェスティバルとは、音楽業界関係者とアーティストのマッチングを目的としたイベントだ。一般的な音楽フェスとは異なり、アーティストが業界関係者に直接プレゼンを行い、 音楽やパフォーマンスを披露し、キャリアを進展させることが主な目的となる。アメリカの『SXSW』やイギリスの『The Great Escape』などが代表例として知られるが、日本ではまだ認知が十分とは言えず、その土壌形成に向けた課題意識が『CUEW』の開催背景にある。

会期中はデリゲーツらによるトークセッションに加え、アーティストと関係者が1対1で出会える「Speed Meeting」や交流会など多様なネットワーキング機会が用意され、参加者は専用アプリを通じて直接コンタクトを取ることもできる。ミュージシャン、レーベル、エージェント、プロモーター、メディアなど、多様な立場のプレイヤーが一堂に会する場となった。

撮影:Sherwin Wong

ここからはいくつかのトークセッションで得られた知見を紹介しよう。

下調べが重要。では何を調べたらよいのか?

海外でのライブやショーケースイベント・フェス出演にあたり、複数のトークで繰り返し語られたのが、“Do your homework.”——十分な下調べをしろ、ということだ。

海外進出を考える時、まずイギリスやアメリカを目指すアーティストは多い。ウェールズ最大の国際ショーケースイベント『FOCUS Wales』共同創立者・音楽責任者のアンディ・ジョーンズ(Andy Jones)は、『Worldwide Music Network: アジア,ヨーロッパ,US をつなぐ音楽ネットワーク』のセッションのなかでこう話した。

『Worldwide Music Network: アジア,ヨーロッパ,US をつなぐ音楽ネットワーク』
フェス文化が成熟するヨーロッパと成長を続けるアジアをつなぐ音楽ネットワークに注目。フェスやショーケースの連携に加え、エージェントの役割にも触れながら、新たな機会やファンベースの広がり、地域間の相互理解とアーティスト支援の可能性を探った。

アンディ・ジョーンズ:多くのウェールズのアーティストが「アメリカに行きたい」とデフォルトのように言います。でも、なぜアメリカなのか? 現地の業界とすでに繋がりがあるのか? 現地でファンベースが育っている兆候はあるのか? と聞くと、たいてい「特にないけど、行ってみたいから」という答えが返ってきます。

世界は広く、チャンスは様々な場所にある。だからこそまず下調べをして、データに基づいて、自分に最も合ったマーケットを見極めることが大切です。

フランスのブッキングエージェントであるロマン・ピケレーズ(Romain Piquerez)(RP Booking)は、「下調べをすることは大前提」としたうえで、「カタツムリのやり方」という言葉を用いて、焦らずじっくり進めることの大切さを説いた。海外に出る前に、まずは自国で実績を作り、自国の音楽業界のプロフェッショナルたちと繋がること。それが他国の関係者への橋渡しになってくれることもある。

その具体例として彼が挙げたのが、自身がフランスでDYGLをブッキングした際の経験だ。彼は、フランスで複数のフェスティバルを運営し日本と深い繋がりを持つプロモーターの存在を事前に知っていたからこそ、フランスでは新人バンドだったDYGLのフェスティバル出演を実現できたのだという。

https://youtu.be/xK-oDb741OM?si=h5CnFzO9yy1oU3MA

海外フェスにどうしたら出られるのか。重要なのは「ライブ」のクオリティ

『Festival New Wave: 音楽フェスティバルにおける新しい潮流』のセッションでも、フェスの出演応募における「ホームワーク」の重要性が話題に挙がった。

『Festival New Wave: 音楽フェスティバルにおける新しい潮流』
各フェスの個性を起点に、ダイバーシティや社会的メッセージなど、いま問われるテーマを紐解く。フェスは時代を映す鏡なのか。グローバル化とローカル性の間で、これからのあり方と役割を探るセッション。

大規模のフェスに出れば良いというわけではなく、観客層やジャンルの傾向が自身の音楽と合っていなければ、出演してもミスマッチが生じる。応募の前に過去のラインナップを調べ、どんなオーディエンスなのかを把握する必要がある。同セッションに登壇したタイ『Wonderfruit』のミュージックディレクター、フォン・リー(Phuong Le)も「『Wonderfruit』への出演を希望するなら、『Wonderfruit』が何であるかを理解することが重要です。私たちは、私たちのスピリットに合ったアーティストをブッキングします」と語る。

では具体的に、海外フェスのブッキング担当者たちはアーティストのどのような点に注目するのか。複数の登壇者が口を揃えたのが、ライブの質だ。

『Festival New Wave』に登壇したセルビア『EXIT Festival』の共同設立者イヴァン・ミリヴォイェヴィッチ(Ivan Milivojev)は、「SNSの数字などよりもずっと良い演奏をするバンドがいることを知っているし、そういうバンドをブッキングしたい」と語り、スウェーデン『Way Out West』のダニエル・ブズドゥセク(Daniel Bzdusek)も「たくさんの応募を精査するが、良いライブアクトであることは非常に重要」と同意する。

前述の『Worldwide Music Network』に登壇したドイツ『Reeperbahn Festival』のロビン・ワーナー(Robin Werner)は「私たちは日本でもっとも有名なアーティストだけを求めているわけではありません」と話す。「人々が求めているのは大衆的な成功や大きな数字ではなく、独自性です。『これこそが私が音楽やカルチャーに求めているものだ』『このアーティストが体現しているものが好きだ』と感じさせるものがあれば、世界中にファンベースを築いていけると思います」。

同じセッションに登壇したアンディ・ジョーンズ(Andy Jones)はこう続ける。「キュレーターとして私が求めているのは、自分自身の個性をしっかり持った、本物のアーティストです。人々が興奮して、記事を書きたくなって、一緒に仕事をしたいと思うような、そういう際立つものを見つけたい」。

出演で終わらせない。機会を最大限生かすために

実際にショーケースイベントやフェスに出演が決まったら、その機会を最大化するためにも考えておくべきことがある。

『Building the Future Through Festivals: ショーケースフェスティバルが新たな才能とグローバル市場への道を切り拓く』のセッションでは、『The Great Escape 』のアイラ・マクロビー(Isla Mcrobbie)が「ショーケースに出演するだけで、期待通りの観客が集まり、翌朝には世界ツアーが決まってレーベルからの契約オファーが殺到する──そう思い込むのはとても危険です」と警告した。重要なのはチームで戦略的に動くことだという。

『Building the Future Through Festivals: ショーケースフェスティバルが新たな才能とグローバル市場への道を切り拓く』の様子 / 撮影:Sherwin Wong

『SXSW』のプログラマーであるジュネヴィーヴ・ウッド(Genevieve Wood)も「『SXSW』で一貫して良い結果を出しているアーティストは、フェスティバルに臨む前にしっかりとした計画を持ち、具体的なアクションプランを持っている人たちです」と同調する。

具体的にはどう動くべきか。

効果的なのは海外公演を点ではなく線で設計することだ。『Worldwide Music Network』に登壇したロマン・ピケレーズ(Romain Piquerez)は、たとえば ドイツの『Reeperbahn Festival』なら同フェスだけを目指すのではなく、その前後にフランスなど近隣諸国で開催されるフェスも視野にいれることで、チャンスをさらに増やすことができると話す。5月の『The Great Escape 』や『FOCUS Wales』に合わせて多くのアーティストがイギリスに集まるように、業界関係者が集中する時期を捉えて複数の機会を繋げることが、コスト面でも露出面でも効率的な戦略になるということだ。

また、現地でのネットワーキングも不可欠だ。前述のアイラ・マクロビーはこう話す。

アイラ・マクロビー:フェスティバルに来ることがわかっている人たちには必ず声をかけてください。たとえばその人をコーヒーに誘って自分のショーについて話すこと。常にみんなの意識の中に自分の存在を置いて、毎年必ずその人たちを自分のパフォーマンスに招待するようにしてください。

『FOCUS Wales』のアンディ・ジョーンズは、フェス側が業界のキーマンやスカウトと直接交流できる環境を作っても、アーティストがその機会を十分に活かせないことがあると語る。音楽業界、特に小さなエージェンシーやレーベルほどアーティストが何者なのかを知りたがっているのだという。

アンディ・ジョーンズ:頭の中にある壁を乗り越えて、カンファレンスやネットワーキングイベントに参加して、自己紹介してほしい。結果は必ずついてきます。部屋にいる全員と同じだけ、あなたも重要な存在だと理解してください。デリゲーツたちはあなたのことを知りたいと思っています。

動き出すのに適切なタイミングとチャンス

下調べができたとして、いつが行動すべき時なのか。『Reeperbahn Festival』のロビン・ワーナーはこう話した。

ロビン・ワーナー:自分自身で完全に確信が持てない時──今年のこのタイミングがベストだ、来年でも再来年でもなく今年なんだと思えない時は、やめたほうがいい。でも本当にそう確信できたなら、全力で取り組んでください。

『FOCUS Wales』のアンディ・ジョーンズは毎年多数の応募を受けるショーケースイベント主催者の立場から、最終的に出演枠を得るアーティストは、パフォーマンスが優れていることは前提として、「いまこの機会を活かせる準備ができていると私たちをもっとも納得させられたアーティスト」だと話した。

アンディ・ジョーンズ:わざわざ飛行機に乗って来てもらう以上、私たちもその経験からしっかりビジネスの成果を得てもらわなければなりません。だから、応募する前にエージェント、レーベル、プロモーターなど、将来一緒に働きたい人たちと事前に対話を始めておくことが大切です。

海外で聴かれるために必要なこと

『Behind the Great Show: ブッキングエージェントの存在と役割』のセッションでは、現役エージェントたちがリアルな意見を交わした。

『Behind the Great Show: ブッキングエージェントの存在と役割』
アーティストと機会をつなぐキープレイヤーの役割を掘り下げる。日本と欧米の音楽産業の違いを踏まえ、エージェントの歴史やネットワーク、アーティストとの関係性を解説。アジアのアーティストがどう接点を築くべきか、評価軸や信頼できる海外パートナーの見極め方まで実践的に考えた。

パネリストとして登壇したのは、ニューヨークを拠点とする「Anniversary Group」のコンサート・ブッキングエージェントであるザック・シルヴァ(Zach Silva)、同じくニューヨークを拠点とする「Ground Control Touring」のタレントエージェント兼マネージャーのジョー・プライス(Joe Price)、ロンドンを拠点とする音楽エージェントのシルス・ウィリアムス(Cils Williams)だ。

アーティストはいつエージェントをつけるべきなのかという問いに対し、ジョー・プライスは「できるだけ早く」としたうえで、アメリカの場合は、ツアーを組むことができ、渡航コストを賄えるだけの仕事がある時が適切だと話した。そしてそのためには、レーベルを持つことも助けになるという。

ジョー・プライス:アメリカにレーベルを持つことで追加の資金調達ができることがあるからです。それによってツアーが実現しやすく、持続可能になる。プロモーターへのアピールにもなります。エージェントとして、その地域でリリースがあること、レーベルのマーケティングで露出があることをプロモーターに伝えられるのは大きい。ブッキングへの後押しになります。

エージェントたちはどのように自分たちの担当アーティストと出会っているのか。その経路は様々だ。「最近はマネージャーやバンドから直接コンタクトが来ることが多い。あとは地道に新しい音楽を探し続けること」と語るのはジョー・プライス。担当アーティストの1組である幾何学模様との出会いを印象深げに振り返る。

ジョー・プライス:僕はレコードオタクで、彼らの最新アルバムを聴いて、ブルックリンのライブに行きました。当時は知名度も低く、200人キャパの会場に30人くらいしかいなかったんですが、ライブを観た瞬間、このバンドと仕事しなきゃと確信して翌日には契約した。結局10年ほど一緒に仕事をしました。

https://youtu.be/xujoru4cFwk?si=4AXeb2qlEUk-IUVB

いっぽうBalming Tigerなど韓国のアーティストを多く担当しているシルス・ウィリアムス(Cils Williams)は「YouTubeのアルゴリズムをうまく育てた結果です」と笑う。

シルス・ウィリアムス:韓国のスキンケアにハマっていて、アルゴリズムがK-POPを流し始めたんです。それでBTSやBLACKPINKから始まって、やがて韓国のオルタナティブな音楽が出てくるようになって、いま担当しているアーティストたちに出会いました。

ツアーマネージャーとの関係も、新しいアーティストを見つけるうえで重要です。ツアーマネージャーはフリーランスであることが多く、様々なアーティストと仕事をするため、良いツアーマネージャーと仲良くしておくと、良いアーティストに繋がることが多いと思います。

ジョー・プライスと同じくニューヨークで活動するザック・シルヴァは、「人からの紹介が重要。一緒に仕事をしているアーティストからの推薦はとくに」と語る。ジョー・プライスも「バンドからバンドへの推薦は本当に大きい」と同意していた。

グッズの重要性。売上はギャランティーの2倍以上になることもある

さらに話題は、マーチャンダイズの役割にもおよんだ。多くのアーティストがツアーTシャツやトートバッグなど多様なグッズを制作しているが、ジョー・プライスはマーケティングツールとしてのグッズの重要性を強調する。「かっこいいグッズは着てもらえて、SNSでシェアされて、広がっていく」からだ。

ジョー・プライス:幾何学模様、南ドイツ、maya ongakuを観てとくに感じましたが、彼らはポスターからTシャツ、トートバッグ、タバコの紙まで、全てに細部へのこだわりがあった。ショーの後に長い列ができて、みんな写真を撮ってシェアしていました。先日もブルックリンで高中正義がソールドアウト公演をやりましたが、グッズの列が本当に長くて、買えなかった人も写真を撮ってSNSに上げていました。

ザック・シルヴァはツアーの資金源としての役割に言及する。「私の経験では、グッズの売り上げがショーのギャランティーの2倍以上になることもあります」。

シルス・ウィリアムスからのアドバイスは、「キャリアの初期段階では、グッズを自分たちで売ること」。理由はシンプルで、アーティスト本人が売っているほうがファンはより買いたくなるからだ。自分たちで直接販売することは、どういう観客が来ているのかのマーケティングリサーチにも繋がる。

maya ongakuが自身でヨーロッパツアーを回った時の日記では、お金面のやりくりについても赤裸々に記載している。 / 連載『maya ongakuの米国西域記』を読む

最後に、トークセッションにも登壇したロバート・メイエリンク(Robert Meijerink)(『ESNS』ヘッド・オブ・ブッキング、オランダ)、ジュネヴィーヴ・ウッド(Genevieve Wood)(『SXSW』音楽フェスプログラマー、アメリカ)、コーラ・チャン(Cora Chan)(『Clockenflap』プロモーター、香港)の3名への単独インタビューの模様を紹介する。主に日本のインディー音楽シーンについて、また海外進出を考えるアーティストへのアドバイスを聞いた。

おとぼけビ〜バ〜の成功例

オランダのフローニンゲンで開催されている『ESNS』は約40年の歴史を持つヨーロッパ最大級のショーケースイベント。ロバート・メイエリンクは、同フェスのブッキングを統括するほか、地元ベニューのプロモーターとしても活動しており、これまでにおとぼけビ〜バ〜、MONO、冥丁、幾何学模様、羊文学、maya ongakuなどのアーティストをブッキングしてきた。『CUEW』への参加は今回が初めてだという。

ロバート・メイエリンク(『ESNS』ブッキング統括、プロモーター)

ロバート・メイエリンク:今朝の1on1ミーティングは素晴らしかったです。1時間のなかで非常に多くの方と出会えました。私にとって、日本の音楽やアーティスト、ビジネスについて理解を深めることはとても重要なことです。

1on1ミーティングの様子 / 撮影:Sherwin Wong

「ヨーロッパにおける日本の音楽への関心は高まっている」とロバート・メイエリンクは語る。実際に彼がブッキングした日本のアーティストも現地で成果を上げており、タイミングとプロモーションの重要性を強調する。

おとぼけビ〜バ〜はその代表例だ。彼女たちがオランダの大型フェスティバル『Lowlands』に出演した際、ロバート・メイエリンクは自分の会場でのブッキングを決めていた。その時点では未知数でリスクもあったというが、250枚のチケットが売れた。そして、2年後に彼女たちが戻ってきた時にはソールドアウト公演になった。

https://youtu.be/VEdOaPBqBmY?si=qIFzge9eNXm1PPic

ロバート・マイヤーリンク:タイミングがとても重要で、アーティストはヨーロッパでの何らかのプロモーション──たとえば音楽雑誌や専門メディアによるアルバムレビューなど──が必要です。プロモーターとしてリスクを取る「モメンタム(勢い、機運)」が必要なんです。

ロバート・マイヤーリンクがアーティストを見る際にもっとも重視するのは、ライブだ。今回の『SYNCHRONICITY』でも、すでに10組ほどのアーティストに注目しており、実際にステージを観てから判断するつもりだと明かした。

『CUEW』が手がける国際アーティストのショーケースには、世界各国から11組のアーティストがラインナップ。パフォーマンスは、2026年4月11日(土)12日(日)『SYNCHRONICITY’26』とのコラボレーションにより同フェスの中で開催された。

ヨーロッパへの展開を目指す日本のアーティストへの助言を尋ねると、ロバート・マイヤーリンクはまず、『CUEW』のようなイベントに積極的に参加することの重要性を強調した。出演しなくても、繋がりを作り、話しかけ、音楽を聴いてもらえる絶好の機会だからだ。

そして、もっとも大切なのは「準備をして、正しい形でサポートを受けること」だと話した。

ロバート・マイヤーリンク:すでに海外でツアーをしている先輩の日本人アーティストに話を聞き、知識や経験を共有してもらってください。そして、ヨーロッパに行くのなら、一度きりの旅ではなく、また戻ってくるための最初の投資と考えてください。長期的なビジョンが大切です。日本にいながらロンドン、パリ、アムステルダム、ケルンでチケットが売れる。それはアーティストとして非常にやりがいのある経験です。チャンスはあります。

『SXSW』に出演するには?

『SXSW』はおそらく日本でもっとも知られた音楽ショーケースフェスだろう。同フェスでプログラミングを担当するジュネヴィーヴ・ウッド(Genevieve Wood)も『CUEW』に初参加した。「日本にはこのようなショーケースフェスが必要でしたし、これは大きな瞬間だと思います」。

ジュネヴィーヴ・ウッド(『SXSW』プログラムディレクター)

毎年テキサス州オースティンで開催される『SXSW』は、音楽、映画、テクノロジーなどを横断する世界最大級のカンファレンス・ショーケースフェスだ。ウッドにとって「日本人アーティストのセクションはフェスのなかで最も好きな部分のひとつ」だという。これまでもロックからエレクトロニックミュージックまで多様なジャンルの日本人アーティストが『SXSW』の観客を沸かせてきた。

ジュネヴィーヴ・ウッド:日本の音楽シーンは女性がフロントマンのバンドが多いのが面白いですね。最近『SXSW』に出演したアーティストのなかにも私のお気に入りが何組かいて、板歯目はそのひとつ。凶暴なパンクバンドです。いっぽうでまったく異なるタイプの音楽ですが、今年参加した「苺りなはむ」もいます。インディー音楽が多様な場で育っているのは素晴らしいことです。

毎年数千組のアーティストが応募する『SXSW』の選考プロセスにおいて、プログラミングチームはすべての応募に目を通す。その際に重視するのはキャリアにおける「タイミング」だ。

ジュネヴィーヴ・ウッド:フェスに来ることに本当に意味があるタイミングのアーティスト、キャリアの次のステップを踏もうとしている新進気鋭の才能を重視します。母国での成功だけでなく、母国外でも観客が育っているかどうかも重要です。

ストリーミング再生回数やSNSのフォロワー数も参考にしますが、それだけが基準ではない。最終的に最も重要なのは、私またはプログラミングチームの誰かがその音楽に繋がりを感じ、ファンであることです。

また応募以外に「ショーケースプレゼンター」を通しての出演という経路もある。日本で開催されているサーキットイベント『TOKYO CALLING』のように、各地を拠点とするプレゼンターが『SXSW』にアーティストを連れてくるというケースだ。

『SXSW』に出演し、その後アメリカでプレゼンスを築いたアーティストの代表例として、ジュネヴィーヴ・ウッドもおとぼけビ〜バ〜の名前を挙げた。

ジュネヴィーヴ・ウッド:3回出演していますが、年ごとの成長を見るのは本当に特別でした。最初の年はまだ新たなチャンスを探している段階でしたが、その年のブレイクアウトアクトのひとつになり、その後も戻ってきました。

また、いま注目している日本のアーティストとしてハク。を挙げる。台湾で彼女たちのパフォーマンスを観て感銘を受けたという。

ショーケースイベントをいかに活用すべきかという点についてもジュネヴィーヴ・ウッドは明確なメッセージを持っている。

ジュネヴィーヴ・ウッド:誰とでも話すことが本当に重要です。どんな会話が新しいドアを開くかわかりません。そのために事前に十分な準備をすることも大切です。誰が参加するか調べ、どう繋がれるか考え、自己紹介のピッチを練っておく。ただ参加しているだけで何か良いことが起きると思わないこと。積極的に動き、恥ずかしがらず人に話しかけてほしいです。

応募のタイミングについては、慎重に見極めることを勧める。

ジュネヴィーヴ・ウッド:いまが応募すべきタイミングか、それとも来年の方が良いかを考えてほしい。タイミングは本当に大切です。まだ早すぎる状態で来てしまい、何を求めているかわからず、多くのエネルギーを費やしてオースティンに来たのに良い経験が得られない——そんなことは避けたいのです。

香港のフェス『Clockenflap』でチャンスを広げた水曜日のカンパネラ、中島健人

香港の都市型フェス『Clockenflap』でプロモーターを務めるコーラ・チャン。同フェスは、Vaundy、Creepy Nuts、toe、TURTLE ISLANDなど、メジャーからインディーまで幅広い日本のアーティストを香港のステージに送り出してきた。コーラ・チャンも『CUEW』への参加は今回が初めてだが、「非常に充実した一日でした」と初日を振り返った。

https://youtu.be/HCZ7OxinbdQ?si=7Q52ygIOfmst3NQq

2008年にスタートした『Clockenflap』で、日本の音楽シーンとの繋がりがとくに深まったのは、コロナ禍以降だという。

コーラ・チャン:コロナ禍以降に気づいたのは、私たちの観客がずっと若くなっていること、そしてパンデミック中にストリーミングやアニメを通じて、あるいは新しい音楽を発見する時間が増えたことで、日本の音楽がかつてないほど人気になっていたことです。

コーラ・チャンが子供の頃も日本の音楽は人気だったが、その頃は嵐などJ-POPが主流だった。その後、K-POPの勢いに押されてもいるが、コロナ禍で日本のインディーミュージックへの需要が再び強まった。そして、いま香港の若い観客は、アジア全体の音楽によりオープンになり、ストリーミングやプレイリスト、様々なSNS、香港、台湾、中国本土のメディアなどを通じて日本のインディーミュージックを発見しているという。また海外在住者が日本のフェスのチケットを買いやすくなったことも変化のきっかけになっている。

自身がいま注目している日本のアーティストを聞くと、カネコアヤノ、野口文、GEZANの名を挙げた。野口文の音楽はイギリスのインターネットラジオを通して発見した。

また、『Clockenflap』での忘れられない瞬間として、コムアイ時代の水曜日のカンパネラのステージについて話してくれた。

コーラ・チャン:当時私はまだ観客でしたが、非常に型破りなパフォーマンスで、多くのファンを生み出しました。後でスタッフから聞いたのですが、そのライブを観た近隣諸国のプロモーターたちも興味を持ち、自国のフェスティバルにブッキングするようになったそうです。

コーラ・チャン(『Clockenflap』プロモーター)

さらに2025年に出演した中島健人についても「彼のパフォーマンスは特に印象的でした」と振り返る。

コーラ・チャン:最初は彼の観客はディープなファンがほとんどだと思っていたのですが、SNSでの反応を見ると、彼を全く知らなかった人や、俳優としてしか知らなかった人がライブを初めて観て、感動していました。『こんなに素晴らしいパフォーマンスだとは思っていなかった』という声が多く、私たちにとっても非常に興味深い経験でした。

際立ったパフォーマンスが波紋のように広がっていく。『Clockenflap』が目指しているのも、国境を超えて活躍したいと考えるアーティストの「踏み台」としての役割だとコーラ・チャンは言う。

https://youtu.be/qGuHIEx2wB8?si=sAkCs3hNrt5Yfa2P

そして、海外を目指す日本のアーティストへのアドバイスとして、フェスを選ぶ際は規模よりも自分たちに合っているかを重視すべきと語る。

コーラ・チャン:大きなフェスティバルに出ても、観客とのミスマッチがあれば期待通りの効果は得られません。小さくても自分の音楽に合ったフェスティバルの方が、より共鳴してくれる観客に届けられることがあります。

海外にいる間は、積極的に繋がりを作ってください。旅費は高くつくのだから、すべての機会を最大限に活かすこと。ショーに出演した後は人と交流し、取材の機会があるか確認してください。何らかのかたちでの取材や報道はアーティストにとって非常に役立ちます。

『Clockenflap』への応募については、常にオープンです。私たちは常にアーティストを探しています、気軽に連絡してください。

デリゲーツたちの言葉を通して見えてきたのは、海外進出において求められるのが、特別な才能や運だけではないということだ。徹底した下調べ、適切なマーケットの選定、そしてチームでの戦略的な行動。さらに、自ら動いて人と繋がる姿勢と、タイミングの見極め——その積み重ねが、国境を越えたキャリアを形作っていく。『CUEW Showcase & Conference』は、その第一歩となる具体的なヒントが共有される意義深い場となっていた。

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