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サム・スミスが新作秘話とともに明かす「恋できない」と悩んだ過去の自分へ贈る声明

2026.8.21

#MUSIC

「自分みたいな人間は恋に落ちることはできないのだと思っていた」――。

世界的なトップスターとして第一線を走り続けるサム・スミスが、最新作『Hazel Eyes』で歌い上げたのは、そんな過去の自分へのアンサーであり、パートナーへ向けた限りなく深く無垢なラブソング。

幸せの絶頂に潜む「失うことへの恐れ」すらも包み込み、真の自己愛に辿り着いたという同作。メガヒットを記録した前作『Gloria』(2023年)から一転、わずか数人の仲間たちと部屋で楽器を鳴らしながら作り上げたという本作の制作秘話から、思わず笑ってしまう意外なタイトルの裏話まで、揺るぎない「誠実さ」を胸に新たな山を登り始めたサム・スミスの現在地に迫る。

「好きな音楽を恥じる必要はない」。ポップスへの偏見に抗い、貫き通した「愛」と「誠実さ」

―2年前、デビューアルバム『In the Lonely Hour』の10周年記念盤のリリースしましたね。当時を振り返ってみて、改めてどんな想いでしたか?

サム・スミス:あのアルバムのおかげで人生が一変したわけで、1stアルバムとしては本当にぶっとんだ結果になったなと、改めて思いました(笑)。

あと、当時の作品と改めて向き合ってみたことで、いずれ迎える2ndアルバム『The Thrill of It All』(2017年)の10周年記念盤の制作が、今からすでに楽しみになっています。

過去の作品を聴き返して「ああ、ここはもっと違うやり方があったかも」とか「ここはあまり上手くできていないな」と感じることがあったとしても、あの10周年記念盤のリリースを通して、そういった部分も含めて楽しめるようになったんですよね。自分自身と自分の作った音楽にすごく誇りを持っているので。

―これまで、アルバムごとに多様なサウンドを取り入れ、アーティストとしての様々な側面を見せながら変化し続けてきましたが、逆に「ずっと変わっていない」と感じるのはどんなところでしょうか?

サム・スミス:私にとって揺るがないのは、「愛」だと思っています。私は「愛」を何よりも大切にしている人間ですし、常に「愛」にまつわる曲を書いてきました。もうひとつは「誠実さ」ですね。自分自身に対して嘘をつかず、常にありのままでいるということです。

音楽の世界には本当に色んなジャンルがありますが、私が学んだのは、自分が好きな音楽ジャンルとは別のジャンルの音楽に優劣をつけようとする風潮があるということ。私たちのようなポップアーティストも、他の界隈の人たちから常にジャッジされているような感覚があるんですよね。ここ3〜4年ほどは、そういう空気の中で、自分が聴いて育った音楽や自分を夢中にさせた音楽が何だったのか思い出して、それを「恥じる必要はない」と自分に言い聞かせていました。

そうやって周囲の風潮に対して自分の気持ちを何度も確かめながら、「愛」と「誠実さ」を持つこと、大好きなポップミュージックにこだわり続けてこられたということをうれしく思っています。

表現の模索からの解放。大がかりなショーを経て辿り着いた、起伏のあるロマンティックな音像

―前作『Gloria』でのあなたは、完全に解放されて力強く自信を持った姿を提示しましたね。今作へと向かうにあたって、あのアルバムはどんな意味を持っていますか?

サム・スミス:私にとって『Gloria』は、アーティスト人生における「クレッシェンド」のようなアルバムです。

20代の頃は決まったスタイルのポップソングを作ることに専念してきましたが、『Love Goes』(2020年)から『Gloria』(2023年)にかけての期間は、“Unholy”のような楽曲を書くために、ずっと表現の模索を続けていたんだと思います。そこに到達することが、当時の私が一番目指していた場所でした。

“Unholy”がリリースされて、人々があの曲を受け止めてくれた時は、何かから自分を解き放ったみたいで。アーティストとして登りたいと思っていた山の頂を、ついに手にしたという手応えを得ました。

だから新作では、自分の魂をピュアに保ったまま、また新たな山に登っています。

―『Gloria』のツアーでは、フェス向けの特別なステージやレジデンシー公演など、ライブパフォーマーとして様々な実験をしていましたよね。その経験は、今作に何か影響を与えましたか?

サム・スミス:少しはあるのかもしれません。ただ、『Hazel Eyes』は余計な装飾を削ぎ落として作り上げたけれど、それとは対照的に『In the Lonely Hour』(2014年)と『The Thrill of It All』(2017年)といった初期のツアーは、非常に演劇的なライブだったと思います。

『Gloria』のツアーでも、演劇的な衣装やダンサーを迎えたし、今後も演劇的な要素は私のパフォーマンスに欠かせないものだと思います。それはもう私の一部ですし(笑)。

でも、『Gloria』は大がかりでカオスな感じで、『Hazel Eyes』はよりロマンティックなアルバムといったように、アルバムごとに異なる温度感は必要ですね。

―本当に素晴らしいアルバムが誕生しましたね。あなたのこれまでのキャリアは、今作を作るための準備期間だったのではないかとすら感じます。

サム・スミス:確かにそうですね。どのアルバムにも、そこに辿り着くまでの準備期間はあったのですが。

『In the Lonely Hour』のようなバラード主体のアルバムでスタートを切った私にとって、『Gloria』のようなポップな形で自分を表現するのは大きな挑戦だったので、今回の『Hazel Eyes』についても同じような「挑戦」という感覚があります。

私は以前から、一貫性を持った世界観のあるアルバムを作りたいと思っていました。田舎町の出身なので、小さな村で育ち、自然の中で音楽を聴くことが多く、そんな風に自然体でいられるアルバムを作りたかったんですよね。

例えば、スサンネ・ビア監督の映画『プラクティカル・マジック/魔女たちの秘密』(2026年)のサウンドトラックがまさにそうです。『Hazel Eyes』もあの作品と同じような起伏を持ったアルバムになっているので、ぜひ聴いてみてほしいですね。

ラブソングを書けなかった20代を経て、いま歌い上げるリアルな愛

―今作の制作開始時はどんな心境だったのでしょうか?

サム・スミス:今回のアルバムを通して、私はアーティストとしてとても大きな変化を経験しました。

これまでのアルバムは、様々なソングライターやプロデューサーと色んな場所で作ってきたんです。でも今回は、『In the Lonely Hour』でも共作した親友のサイモン・アルドレッドと、ふたりきりで曲作りを始めて。そこから少しずつ他のコラボレーターにも参加してもらいましたが、それでも全部で5、6人という少人数でした。

そんな親密な環境のおかげで、私は今回初めて、制作の最初から最後まで楽曲の世界観の中にどっぷりと浸かり続けることができました。これらの曲を聴いていると安心します。「遠く離れた田舎にある川岸に座っている」みたいな。ヘッドホンで聴いているとそういう世界に連れて行ってくれるんです。

AIやテクノロジーが取り巻く中で、友人たちと部屋に集まり楽器を叩いて曲作りを続ける。そうやってピュアでリアルな時間を重ねた末に、自分自身の生々しい感情をそのまま歌にするというのは、まさに音楽の本質に触れるような、素晴らしい体験でしたね。今作は私自身にとって、すごく心安らぐ場所になりました。

―今作はあなたとパートナーとの関係を、時系列で描いていますよね。当初からそういうアルバムを目指していたんですか?

サム・スミス:自然とそうなっていきましたね。そもそも、恋愛関係は自分たちだけのものにしておきたいという葛藤もありました。

でも、彼自身や、彼からの愛、そして彼と過ごした時間にどうしても影響を受けてしまって。自分の最も暗い瞬間も、最も幸せな瞬間も聴き手と分かち合いたいけど、どこまで曲にして聴かせるのか、という線引きをする必要もあったり。

『Hazel Eyes』はパートナーへのラブレターであると共に、音楽そのものへのラブレターでもあるのかもしれません。

―1曲目の“Everlasting Love”の歌詞である、<sad night walker>は、パートナーと出会う前のあなたですか?

サム・スミス:その通りです。この曲は特に思い入れがあって、アルバムのために一番最初に書き始めました。

前半はパートナーと出会う前に書いたのですが、後半は、パートナーとの出会いから3年が経ってから書いたので、声も時間が経って変化していることが分かるはずです。

前半では、誰かとの出会いの前夜を描いていて、出会いを経て美しい音楽が湧き上がり、ホーンの音がハッピーな未来へと連れていってくれる。そして後半では、一夜限りの関係が永遠の愛へと変化を遂げるんです。

―失恋の苦しみを長年歌ってきた末に、こうしたラブソングを歌うのはどんな感覚ですか?

サム・スミス:あまりにも無垢過ぎたんです。でも今、私がパートナーに抱く愛は信じられないほどリアルで。

幸せな愛であっても、そこには切ない感情が含まれていると思うんですよね。愛を手に入れるまでに辛いことを克服しなければならなかったかもしれないし、その愛が脆くて、いつの日か失われてしまうのではないかと恐れているのかもしれないし。

だから、“My Guy”みたいに「彼は自分のもの」と歌うハッピーな曲であっても、聴いていると哀しい気持ちになるんです。この「あまりにも美しいもの」が、もしかしたらなくなってしまうのかもしれないと思うと、怖くて仕方なくて。

https://youtu.be/K0G7jODNtEo

今作は、制作中に人生で最も多くの涙を流した気がします。でも、だからこそ、こうしたラブソングのアルバムを作るのを、今の年齢になるまで待って良かったなと思っています。今なら、愛が持つ「深み」をちゃんと歌にできますからね。

―「幸せな状態だと、良い曲は書けない」と言う人もいますよね。

サム・スミス:確かにそういう面もあるとは思いますが、私はすごく感情的な人間なので、幸せの絶頂であってもどこかに微かな哀しみや疑い、怖れ、あるいはうしろめたさのようなものを抱いていて。幸せになったからといって「良い曲」が書けない、という心配はありませんでした。むしろ幸せになった方がいいと思います。

でも以前は、恋をすることが怖かった。『In the Lonely Hour』と題された1stアルバムが大ヒットしたわけですからね(笑)。

今なら悲しい曲も、より深く表現できると思っています。

90年代映画の音楽からの影響と、新作のサウンドを導いた「川辺から海」の情景

―今回はゴスペルやブルースに加えて、アメリカーナやケルト音楽、インディーロックなどこれまでになかったサウンドもありますが、制作中にどんな音楽を聴いていたんですか?

サム・スミス:サイモンがジョニー・キャッシュの大ファンで、私に教えてくれたこともあり、このアルバムを作っていた時はジョニーをかなり聴いていました。それからタミー・ウィネットも。アメリカに移り住んだことに興奮してしまって、カントリーミュージックを掘り下げていたんです。

もちろん若い頃に聴いていた音楽からもとても影響を受けています。『プラクティカル・マジック/魔女たちの秘密』のサントラには先程触れましたが、スティーヴィー・ニックスも。The La’sの『The La’s』(1990年)収録“There She Goes”をはじめ、1990年代のロマンティックコメディー映画に使われていた曲から受けたインスピレーションは大きいですね。

https://youtu.be/CZXLLMbJdZ4

他にも、ローラ・マーリングからレジーナ・スペクターまで、やはり若い頃に親しんでいたフォークミュージックや、コリーン・ベイリー・レイのようなソウルミュージックなど、色んな音楽に刺激を受けました。特に、ブルースはたくさん聴いて育ちましたね。

―アルバムを聴いていると「遠く離れた田舎にある川岸に座っている」ような感覚になるとおっしゃっていましたが、「川」のイメージについて教えてください。

サム・スミス:最初に“To Be Free”と“Everlasting Love”という2曲ができたのですが、制作中、心の中に「川辺」というひとつの景色が浮かび上がってきました。それが音作りにおける明確な道標ですね。

https://youtu.be/xSJy3LvWGkw

最初に固めたイメージとサウンドの世界観をキープする。参加してくれたメンバーやアルバムの音が、「川辺の景色」というテーマからブレないようにしていたんです。穏やかなフィーリングを保つために、私はサイモンとスタジオに入るたび、いつも心の中で「川辺の景色」を振り返っていました。

でも制作が進むにつれて、今度はその川の流れを下っていくようにサウンドが広がって、最終的には「海」に辿り着きました。後から作った“Moondance”や“Hold On”には、愛する人と一緒に広い場所へ辿り着く情景が描かれていて。この2曲に入っているエレクトロニックな音は、まさに大海原のイメージを音楽的に表現したものなんですよね。

この「海」というイメージは、私が次のアルバムで目指したい方向性でもあります。ありふれた言い方に聞こえるかもしれませんが、「海」に辿り着くまで本当に長い道のりでしたね(笑)。

「恋なんてできないと思っていた」。クィアの少年に宛てた『Hazel Eyes』という愛の声明

―『Hazel Eyes』をアルバムタイトルに選んだ理由を教えて下さい。

サム・スミス:音源の制作中はテーマに没入しすぎていて、客観的にアルバムのタイトルを考えられる状態じゃなかったんですよね。

でも、今回のようなアルバムの制作にはとても時間をかけたので、その結果、曲を書いた頃よりも客観的にアルバムを見ることができるようになりました。改めて完成した音源を聴いてみたら、そこにあったのは「世界一ロマンティックなアルバム」で。ひたすら彼のこと、私のこと、そして愛が私に何をもたらしたのかが歌われていたんですよね。

だから、彼の瞳の色である『Hazel Eyes』をタイトルにしようと思いました。それに“Hazel Eyes”は私自身すごくお気に入りの曲で、タイトルに相応しいと思っていて。時代を問わないタイムレスな響きがあるし、ラブレターみたいな親密さも感じられるので、正しい選択だったと確信しています。

……と言いたいところなんですが、本当は彼の瞳の色はブラウンだったんですよね(笑)。私、ずっとヘーゼルだと思い込んでいて、ヘーゼルが本来どんな色なのか、つい最近知りました。でも、私にとってヘーゼルは「ヘーゼルナッツの色」で、彼の瞳はヘーゼルナッツの色なので。

―『Hazel Eyes』から聴き手にどんなことを感じて欲しいですか?

サム・スミス:私自身が「逃避」していた世界に、聴き手のみなさんも「逃避」してもらえたらと願っています。そしてそれを実感してもらいたい。アルバムに入っている楽曲たちの「シンプルさ」に身を任せて欲しいですね。

このアルバムは、スローで、落ち着いていて、洗練されていて。私が思うに、今の世界で鳴っている音楽とは異なるスピードで流れていますが、そのスピードに馴染んで欲しいです。

あとは、これらの曲を書いていた時に抱いていた気持ちを、ほんの僅かでも感じてもらえたら、それ以上に望むことはありません。

―あなたはアルバムを<May your heart be open, let no one change your mind>という言葉で締め括っていますね。

サム・スミス:前作の『Gloria』は自己愛と、その自分を受け入れることに関するアルバムだったと思うのですが、今回の『Hazel Eyes』の制作中に他者を愛することを通じて、その自己愛をようやく完全に受容できたように感じているんです。

そして、最後から1つ前の曲“Hold On”はクィアである若い頃の自分に向かって歌っています。「自分は恋に落ちることはできないのだと思っていた」と。自分みたいな人間が恋をしているところを見たことがなかった。愛や恋愛関係とは縁がないのかもしれないと感じていて、当時は落ち込んでいました。“Hold On”はそんな少年に宛てた曲なんです。

最後の曲“To Be Free”は、自分以外の人たちに宛てた声明ですね。愛と誠実さをもって生きて、自分を素直に表現し、自分が恐れているものと向き合えば、いい人生が送れるのだ、という。

サム・スミス コメント

このアルバムは、私にとって本当に特別な作品です。私はこのアルバムを、すごく親しくて大切な少人数の友人たちと一緒に、3 年以上かけて作ってきました。

これまでのアルバムとはまったく違う形で制作した作品なんです。
ずっと個人的なものになっていて、このレコードを作る過程を通して、自分自身アーティストとしてより深まることができたと感じています。
プロデューサーとして関わったこともそうですし、この作品の始まりから終わりまで寄り添いながら、あらゆる場面で自分を追い込み続けました。だから本当に誇りに思っています。

そして、このアルバムを表現するなら とにかく “ ものすごくロマンチック ” な作品です。

このアルバムは、“ 誰かと恋に落ちる前夜 ” から始まり、現在へと続いていきます。
今一緒にいるパートナーとの、最初の 2〜3 年間の関係を描いた作品なんです。

このレコードを作る中で、本当にたくさんの人生の教訓を学びました。
そしてそのすべてを、この音楽に記録しています。
とてもドラマチックで、すごく心をさらけ出していて、ロマンチック。
制作中は周りを気にせず、ただ純粋に自分の心から生まれるものだけを作ろうとしました。

だから、その気持ちが皆さんに伝わったら嬉しいですし、楽しんでもらえたら嬉しいです。
うん、それだけ!

サム・スミス『Hazel Eyes』

サム・スミス『Hazel Eyes』(読み:ヘイゼル・アイズ)
2026.8.21 release

Track List
1 Everlasting Love
2 Hazel Eyes
3 Moondance (feat. Feist)
4 My Guy MUSIC AWARDS JAPAN 2026 歌唱曲
5 When He’s Gone
6 Thief
7 Love Is A Stillness
8 Sugar Rush
9 Oh Mother (feat. The TwoCity Chorus “Choir”)
10 Constant Companion
11 Hold On
12 To Be Free

配信URL : https://umj.lnk.to/SS_HE

【商品情報】
自身 5 枚目となるアルバム『Hazel Eyes』(読み:ヘイゼル・アイズ)は、心の弱さや揺れ、アーティストとして自由でいること、自分自身と向き合うことを描いた作品。タイトルは婚約者の目の色が由来。
全 12 曲からなるアルバムの多くはニューヨークで制作され、サムはインディー・ポップを代表するアーティストのファイストや、ヨーコ・オノ、ダミアン・ライスらとの仕事でも知られるマルチ・インストゥルメンタリスト/作曲家のシャザード・イズマイリーなど、少数精鋭のコラボレーターたちと作品を作り上げた。バロック・ポップ、ブリティッシュ・フォーク、アウトロー・カントリー、レフトフィールド R&B など、幅広いジャンルの要素を取り込みながらも、中心にあるのはサムの圧倒的な歌声と、心の奥までさらけ出すようなストーリーテリング。『Hazel Eyes』は、サムの声と言葉がこれまで以上にまっすぐ届く、深くロマンティックな作品となっている。

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