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NEWS EVENT SPECIAL SERIES

10歳で単身渡英、18歳でフジロック出演。Suzu Toyamaが語る、これまでとその音楽

2026.7.29

Suzu Toyama『Spin』

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「『自由だね』って言われると、寂しいなって思います」と、Suzu Toyamaが口にしたとき、ドキッとした。「『Suzu Toyamaって子は、めっちゃ自由に音楽を作っているな」と言われたりするでしょう?」というぼくの質問から、会話が少し進んでいったところだった。そのとき、彼女の弾き語る美しくて直感的でしなやかで、だからこそ壊れやすくもある歌の奥に、ちょっと触れた気がした。

Suzu Toyamaの名前を初めて聞いたのはいつだったか。広島のSTEREO RECORDSの店主・神鳥孝昭さんからアルバム『Swim』(2024年)を教わった時点で、すでに配信が始まっていたから、発売されてほどなくだったのかと思う。ミュージシャン、トウヤマタケオの娘さんだということ。英語で歌えるのは10代でイギリスのユニークな学校に単身渡った留学経験があるから。実家のある尾道で暮らしていて、まだ20歳になるかならないか。若いけど人生の情報量は多い。彼女の歌は静かだけど、音像の中では才能がどくどくと脈打っていた。『フジロック(FUJI ROCK FESTIVAL ’24)』にも出演が決まっていたという事実にも何となく納得してしまった。

2025年、彼女は東京に拠点を移した。現在は、高円寺のHoiPoiなどでスタッフとして働きつつ、自分の音楽を作り続けている。2026年5月にリリースされた2年ぶりの最新アルバム『Spin』では、初めてゲストミュージシャンも迎えている。彼女がたどってきた人生と新しい環境の両方から生まれた音楽が、渦を描くように表現されていると感じた。

今回が彼女にとって初インタビューだとのこと。これまでの人生のこと、今暮らしている新しい環境のこと、音楽を作り始めた頃のこと、メイ・シモネスのフロントアクトを務めて感じた英語と日本語で歌う違いなど、とても率直に話してくれた。

10歳での単身渡英とホームシック。サマーヒル・スクールでの挫折

─Suzuさんのバイオグラフィーで、誰しも気になるのは、10歳で、単身でのイギリス留学を決めたところですよね。それ以前のことって覚えてます?

Suzu:生まれてから7歳くらいまでは大阪にいたんですけど、コアな記憶としてあるのは、当時暮らしていた2階建ての縦長な家にいたことかな。私は生まれたときにアトピーがあって、体がいろんなものにすぐ反応するタイプだったから、小学校でもずっと私はお弁当だったんです。そういうのもあって、外では結構気を使う感じ。でも、学校から帰ってきたら、逆にはっちゃけてました。

父(ミュージシャンのトウヤマタケオ)のつながりで家には音楽関係の人が泊まりに来るし、私もライブを観に行ったりしてたから、自由な大人たちといるのは楽しかった。同世代とはどうしゃべったらいいのかわかんない、みたいな感じだった気がする。大阪から広島の尾道に引っ越して、小4で1年くらいフリースクール的な学校に通ったけど、そこもやめて。家にずっといて何もしてなかった時期にイギリスの学校、サマーヒルスクール(※)のことを知って。

※サマーヒルスクール:イギリス・サフォーク州のレイストンという小さな町にあり、4〜18歳の子供たちが共同生活を送る、授業への参加や生活ルールを子供自身が決定する独自の教育方針で知られる世界で最も古いフリースクールのひとつ。

─どういうきっかけで?

Suzu:そこを卒業した女の子が、私が暮らしていた尾道に引っ越してきて、話を聞いたんですよ。最初は「まさか、そんな遠いところに行くわけない」と思ってました。でも、その学校についての本を読んだりして、現実味が湧いてきたんです。その子も10歳で行ったし、私もそのとき10歳だった。だから「行きたい」って両親に言った、らしい? あんまりよく覚えてないけど(笑)。そしたら、お母さんも昔イギリスに行きたかったけど反対されたことがあったらしく。だから、私には行かせたいと思ったんじゃないですか。

─とはいえ、たった1人で?

Suzu:学校はロンドンではなく、サフォーク州という田舎にあって、全寮制なんです。学校というより、村。校内には私も含めて英語がわからない人もいたし、いろんなアクセントが飛び交ってました。

Suzu Toyama(スズ トウヤマ)
2006年生まれ。表現者。10歳から8年間イギリスに単身留学。2020年、コロナ禍をきっかけにはじめてギターに触り、曲作りをはじめる。
音楽にとどまらず自作自演の身体表現、アート映像をYouTubeにて公開。2022年、セルフプロデュースアルバム『16 sixteen』と『black hole』をBandcampに発表。2023年、宅録アルバム『sun』、2024年アルバム『swim』を発表。2024年、『FUJI ROCK FESTIVAL』出演。2026年1月、Mei Semones来日公演のオープニングアクトを務める。2月、尾道にてレコーディングを敢行し、最新アルバム『Spin』を5月に発表。

─サマーヒルでの印象や、ショックとかは?

Suzu:最初は晴れやかな気持ちでした。でも、すぐにホームシックになって、最初の1年でいったん帰国したんです。今思えば「こういうふうに振る舞えばいい、それが自分」みたいな前提が、サマーヒルに行った瞬間に全部崩れたんですよね。

生まれた大阪や尾道では面白い大人たちに囲まれていて、何やっても褒められるし、愛されてる子どもだったんです。でもサマーヒルにはいろんな国の、いろんな家庭環境の子どもたちがいるし、今までの大人に囲まれてた状況じゃない。自分のコントロール外の要素が増え出して、いろんなことがわからない不安もあって、全然はっちゃけられなくなった。そこから摂食障害になり始めて、それが悪化して帰国しました。そこから1年くらいは暗黒でした(笑)。

Suzu Toyama

─一度はリタイヤで帰国していたとは。すくすくとイギリスで育まれたわけじゃなかったんですね。

Suzu:1年経って、12歳でまたイギリスに戻りました。

─学校に戻るきっかけは?

Suzu:ブランク中に、イギリスに家族旅行したんです。そのとき学校にも行ったら、みんな「Suzu、帰ってこないの?」みたいなノリで話しかけてきた。それが驚きでした。それまでの私の人生では、地元や学校の友だちとのつながりがあまりなく、ある場所を去ったらそれで最後というイメージだったから、自分が去った場所にまた帰れるのは、すごく変な感じでした。お母さんには「戻りたい!」って私から言いました。そのときに初めて「自分で選んだ」って感覚になったと思う。自分で決めたから、あとは楽しむしかないな、となりました。

─サマーヒルは世界中の子どもたちが集まる学校だと思うんですが、普通の学校のように、何かを学んだり、成し遂げたりするカリキュラムはあるんですか?

Suzu:授業はちゃんとあります。でも、出ても出なくてもいい。カリキュラムは、いろんな授業を見て回って「これやりたい」と思ったものを自分で決めていく。先生やスタッフと一緒に暮らしてる状態が日常だから、そこでコミュニティを作るのが第一なんです。一緒に暮らす中での学びが多い。

─英語の上達は?

Suzu:まったくしゃべれずに行ったけど、EAL(English as an Additional Language)という仕組みがあるんですよ。英語が母国語ではない人々が、英語を話せるようになるための学習支援。私たちみたいな人はそこに最初は入って、ゲームとか遊んだりしながら覚えていくんです。「わかってきた!」みたいな感覚が芽生えたのは、なんとなく覚えてる。

コロナ禍のホテル隔離から始まった音楽制作。SoundCloudの宅録音源が注目されるまで

─音楽はいつSuzuさんの中に登場するんですか?

Suzu:言ってしまえば生まれたときから、なんですよね。親が音楽をやっているから。自分の音楽として作ったのは、15歳くらいが最初。コロナ禍で帰国したとき、ホテルで2週間隔離で缶詰になっていたら、お母さんがギターを送ってきてくれたんです。それを弾いて、歌って、曲を書き始めたかな。ギターの弾き方なんて知らなかったけど、1音ずつポローン、ポローンポローンって鳴らして。あ、いいじゃん、って思ったらその指の形を書くか、覚えるかして。

─誰かに習うとかじゃなく。

Suzu:ギターを学ぶことには興味がなくて、音に触れたかっただけ。最初はドディー(Dodie)ってイギリス人アーティストの映像を見て、自分でもできそうって思ったんです。彼女もギターを1音ずつ弾く感じだし、歌も結構ささやき声だった。でも、私は自分では「歌は、ないな」と最初は思ってたんですよ。家では歌ってたけど、それはあくまで家の中でのSuzuで、人に聴かせるというよりギャグ。「面白いSuzu」の表現として歌ってたんです。本気で、感情と向き合って歌うのは、多分、まだ恥ずかしかった。自分の声と自分の心がつながるようになったのは、最近やっとかな。

─最初にできた曲は誰かに聴かせたりした?

Suzu:Instagramにあげてた(笑)。友だちが「いいね!」くれたり。あとは、お母さんが「いいね、好き」みたいに言ってくれたのは大きいかな。影でずっと私を推してくれてる。

─その頃は何を歌おうとしてました?

Suzu:「何か」というより、自分からこんな歌が出てくるんだって感じ。それをただ体験していた。私が一番最初に書いた曲“Blue Socks”は、サマーヒルにいたときを思い返しながら書いてたんだけど、なぜできたのか今も不思議。言葉がどこから来るのか、どことつながって曲を作ってるのかは今でもわからない。わかったら私の曲作りは終わっちゃうかもしれない(笑)。

羊文学・塩塚モエカからのメッセージ。ロンドンでの孤独と葛藤から生まれた音楽

─今、サブスクリプションサービスにある一番古いアルバムは『Sun』(2023年)ですよね。

Suzu:アルバムは、それより前に2枚あるんですよ。Bandcampにある『16 Sixteen』(2021年)が16歳の誕生日に出した最初のアルバムです。あれは、サマーヒルの1人部屋でパソコンで録ったんですけど……思い出した! その頃好きな人がいて、音で思いを届ける気持ちになってたのかもしれない(笑)。

パソコンのGarageBandとか多重録音で作ってた頃の音源もSoundCloudにありますよ。そういう音源をまとめたのが、Bandcampにある2枚目のアルバム『Black Hole』(2022年)。それを出したくらいの時期に、広島でSTEREO RECORDSというレコード店をやっている神鳥(孝昭)さんが連絡をくれたんです。「レコード作りませんか?」って。

─めちゃ早い時期での注目!

Suzu:「もっと知りたいから聴かせて」って感じでしたね。私も『Black Hole』についてその時点での自分なりの解釈を説明して、耳を傾けてくれてましたね。私がイギリスにいるとは神鳥さんは知らなかったけど、実家が尾道だってことにはすごく驚いてて、「帰国したタイミングで会いましょう!」となりました。でも、まだよくわかってなかったですね。「何なんだ、この人?」って思ってたかも(笑)。

─理解者が現れたとはいえ、突然だから戸惑いますよね。

Suzu:うれしかったんですけどね。そういう話でいうと、もうひとつあります。私のお兄ちゃんが羊文学のファンで、(塩塚)モエカちゃんに私のSoundCloudの曲をDMしたんですよ。そしたらモエカちゃんから返事が来たんです。「普段は返信しないんだけど、とても素晴らしかったので」って書いてあって、彼女のストーリーズに私の曲“Bicycle”を載せてくれた。だから、SoundCloudではあの曲だけ再生回数がすごいんですよ。そのときに初めて「え? なんだろ? 私、音楽やっていけんのかな?」って思えた。

─でも、その時点ではまだイギリスにいたんですよね?

Suzu:そう。日本に戻るとは思ってなかった。逆に、日本で起きたことを遠目に見れたから、あんまり怖くなかったんだと思う。ちゃんと音楽に向き合ったのは、2024年に日本に帰ってきてから。それまでは、違うことをやりたいと思ってた。親が音楽をやってるし、音楽は親のもの。私は私のものを見つけたいと思ってた。でも、サマーヒルを卒業して、ロンドンの大学でアートのコースを取ってたけど、全然楽しくなくて。結局、自分に素直になって日本に帰ってきたんです。

─サマーヒルとの違いがつらかった?

Suzu:(ロンドンには)自分が所属できるコミュニティーもないし、どこにも居場所がなかった。私は10歳で親と離れて、同世代の子たちと暮らしてきたけど、大学の同級生たちはまだ親と実家で生活したりしていて。必死さが違うわけです。自分はロンドンでやっていくんだっていう意地があったから、日本に帰ることは負けだって気持ちもあったんですよ。パブでやっているオープンマイク(客がステージに上がって飛び入りで歌う)に参加して、自分に合うコミュニティーを探そうとしたりもしてたけど、まだその頃は自分が音楽で放ってるものも本物じゃないし、めちゃ頑張ってる感が空回りしてましたね。それで限界が来て、帰ってきました。

─それは作品で言うと、どの時期?

Suzu:『SUN』ですね。あれはロンドンでホームステイしていた家で録音しました。

─その頃の自分の葛藤が、アルバムにも出ていると思います?

Suzu:うん。常に葛藤してるんですけどね。『Spin』でも葛藤はありました。でも、『SUN』は、ちょっとかっこつけてますよね(笑)。やっぱりロンドンに触れたから。私が持ってるものを音楽で証明しなきゃっていう焦りもあった。SoundCloudやBandcampで発表してた頃はもっと純粋だったと思います。逆に今の私は考えすぎて、ああいうふうにはできないから、すごく嫉妬しちゃう音です。

https://open.spotify.com/album/38v6sPMtKxeNYANlbd39kl?si=GsCgjKhET2ytaVxwYFSPXw

─その『SUN』を経て、日本に帰ることを決意して作ったのが『swim』(2024年)?

Suzu:ロンドンと日本の架け橋くらいの時期に作った曲を、帰ってきてすぐにお父さんに録音してもらったのが『swim』です。文字通り「泳ぐ」というか、そのとき私が思ってたのは、海が思ったよりデカくて、自分が溺れちゃった、みたいなことだった気がする。

https://open.spotify.com/album/4lHEtHGt79utQFn5XauGUP?si=dJLtmoeKSJGoV2L3SA_ufQ

─トウヤマタケオさんとレコーディングしたのは、このときが初めてですよね。

Suzu:父が録音してくれたので、音はきれいになりましたね。『SUN』まではパソコンで録ってたし。あとは、聴いてる人がいることを意識し始めたかもしれない。曲を作ることに重みを感じ始めたかな? たとえば、昔はギターのどこを押さえて曲を作ってるか、自分で記録してなかったんですよ。ライブで再現するという想定がなかったから、何にも覚えてない。だから自分でも弾けない曲がある。

「自由でいいよね」って言ってくれるっていうことは、その人も自由になりたいと思ってるんだから」

─そして、いよいよ上京。これはどういう決断だったんですか?

Suzu:1人暮らしをしてみたい、という気持ちがあったんです。広島や大阪も候補には考えました。東京はど真ん中すぎると思って。それこそ、音楽は自分のものじゃないと思ってたのと似てる感覚で、ど真ん中すぎる存在に対して素直になれてなかった。

尾道に戻ってから3か月くらい何もしてない時期に、お母さんに「1人暮らししたら?」って言われて、ネットで家を探し始めました。それは私が10歳でイギリスに行きたくなった感覚と似ていたかも。東京でライブする機会があったとき、実際に物件を見て、すぐ決めました! 私がそこで暮らしてる姿を想像できたのが決断のポイントだった。

─初めての1人暮らしは、音楽にも影響を与えました?

Suzu:超楽しい! 人生で一番楽しいです(笑)。好きな喫茶店とか、友だちとか、自分の好きなものに囲まれてるから。イギリスでは親の存在も強かったんです。ホームシックになったのも、離れているからこそ親を意識して寂しくなったので。

今は東京で私、本当に「0歳」って感じ。「私の人生始まったぞ!」って思ってる。(バイト先の)HoiPoi(※)で出会った人たちって、「マジで私のままでいいんだ」って思わせてくれる人ばっかりだから、めっちゃ強い。もうひとつのバイト先はもっと落ち着いた感じだけど、それがHoiPoiとのバランスではちょうどいい。私にとってちょうどいいものを今はコントロールできてる状態だし、自分でそれを選べてる。それが安心感になってると思う。

※HoiPoi:東京都杉並区高円寺にある、コンビニのような外観をしたユニークなコミュニティー・立ち飲みスペース。イベントや展示会、さまざまな交流の場として活用されている。2026年8月にクローズが決定している

─それって、自分にとっての「自由」ってこと?

Suzu:今は「自由じゃなくてもいいや」って思えるくらい自由。「いったんやってみよう」っていう軽さは東京に出てからできたかな。

─「Suzu Toyamaって子は、めっちゃ自由に音楽を作っているな」と言われたりするでしょう?

Suzu:うん、「自由でいいね」って言われます(笑)。

─でも実際は何が自由なのか、どこが自分の居場所なのかをずっと考えてきた歴史でもある。

Suzu:「自由だね」って言われると、寂しいなって思います。「私とあなたは違う」って境界線を引かれる感じ。イギリスにいるときとは違う意味で今は自由だとは思うけど、「自分はそんなに自由じゃないよ」とも、いつも思います。自由を探してるけど、自由っていうより今に集中できてるって状態なんじゃないのかな。「居場所」ってキーワードも、東京では一番デカかったかも。未来の不安とか、過去を悔やんだり、そういうことに自分は囚われてるなと思うけど、東京に来て出会った友だちとか、最近デュオを始めた子(柳瀬瑛美)もそうだけど、みんなも自由になりたいという気持ちは伝わってくるし、そういう意味では私1人じゃないんだなって東京にきて思ったんです。

https://youtu.be/2AWuOpqDhGM?si=0Frdfov7NAncz9KJ

Suzu:「私もあなたも自由になれるよ」とは常に思いたいかも。「自由でいいよね」って言ってくれるっていうことは、その人も自由になりたいと思ってるんだから、私が「なれるよ」って言ってることが結果的にその人にも伝わってるのかもしれない。それに、みんな違うところでそれぞれ自由だし、お互いに違う自由の違うあり方を見せ合ってる感覚がある。同じくらい自由じゃないし、同じくらい自由だなと思います。

英語と日本語の狭間にある孤独。最新作『Spin』で開かれた新しい扉

─最新作『Spin』を聴いていて、日本語の曲が増えたからというのもあるけど、Suzuさんが感じていることが見えやすく、伝わりやすくなったなと思うんです。日本語と英語では言ってることは同じ? 少し違う?

Suzu:「いつも同じこと言ってるな、自分」とは思うけど(笑)。たどり着いちゃうところがいつも一緒なんですよ。だけど、音の響きが違うし、声の使い方が変わる感じだから、内容は変わらないけど、そこに入れるものは違う。最近も曲を作ったときに、日本語か英語か迷ったんです。入口として英語の蛇口を開けたら英語が流れてくるし、日本語の蛇口を開けたら日本語が流れてくる。今はどっちもできるようになってしまって、そこは全然自由じゃないってところはある(笑)

─え? 選べるのに自由じゃない? それは興味深い感じ方ですね。

Suzu:だって、どっちかに決まってた方が、そこに集中して思いを注げるから。どっちにも流せるということは、どっちにも流せない、だったりする。あと、私が日本語で書くときは、聴いてきた日本語の音楽がフィッシュマンズとかで例が少ないから、その中でも好きな言葉の扱い方みたいなのは影響してると思う。私の数少ないボキャブラリーの中から出してるから、実体験から生まれたというより記憶の中から出てきたという感じ。英語の方が実体験を話すように書ける感覚はあるのかもしれない。

https://youtu.be/gNaCR8CHZ-o?si=DovhxgaI6qWRWdia

─今年の1月にメイ・シモネスと一緒にライブ(2026年1月27日、広島クラブクアトロ)したでしょう? 彼女も英語と日本語が曲の中に一緒にある。

Suzu:私が勝手に分析してたのは、彼女の英語と日本語の混ざり合う密度は、私より濃い。彼女にとって英語と日本語は「家」と「友だち」くらいの近い循環じゃないですか。それに比べたら、私は英語は「イギリスの生活」、日本語は「日本の生活」で完全に分かれてるから、そこをつなぐのは私自身しかいない。どちらかのスイッチが入っちゃったら、そっちにしかいられない。そこはメイさんとは結構違うなと思ってました。

─日本が「記憶」で、イギリスが「現実」という感覚。これからはそれが逆になっていくのかも。

Suzu:それで思うのは、その2つの濃さがあって、どちらとも混じり合わない超孤独な自分がいるということ。そこで常に曲を書いてるかもしれない。結局、どっちでもない。それを感じるときに自分は自由だと思ってるのかも。

─孤独と自由がセットにある。そんな話を聞くと、『Spin』のラスト曲“Nobody Now / だれでもなくなった”なんて結構ズシンときますね。

Suzu:そうなんです。でも違うあり方があるかな、とも最近は思ってる。『Spin』はレコーディングにお父さんや瑛美ちゃんとか、いろんな人が参加してくれてるし、人に対しても社会に対しても、ちょっとひらけたのかなと思ってる。実際、アルバムを一緒に作るにも相手に曲を投げないといけない。投げたものが返ってくる、それをまた投げ返すっていうキャッチボール。それが最初はすごく怖かった。だけど、やっていくうちに信頼関係みたいなものができてきた。そもそも完成した自分のアルバムを聴けたのは、『Spin』が初めてなんですよ。今まで怖くて自分では聴けてなかった。出して「バイバイ!」みたいなタイプだったの。私は、居場所に対してもこれまではそうしてきたから。

https://youtu.be/e3pwpYlQH-M?si=COU3IYDJ42rkffC6

─それは自分の音楽と向かい合ったからできたこと。

Suzu:そう。人間的になったんだと思う(笑)。人生は終わってくれないんだなということがようやくわかった。私、どっかで早く終わらせたいという気持ちがあったんですよ。でも、「自分が焦っても、時間は流れていくし、自分の体も失くなるまでずっと付いてくるんだな。そんなに身軽に飛べないんだな」と思えて、自分の人生が腑に落ちたんです。自分のコントロール外のことは本当にコントロールできないって、ちょっと開き直れたかも。『Spin』が本当に始まりの回転。今、回り始めたところです。「私、本当に赤ちゃんだな」と思ってる。思ったよりも音楽が私を待っててくれてる。

私、こんなに焦って急がなくていい。自分の人生を生きていいんだなという始まりかな、『Spin』は。まだ葛藤はしてる。でも、これを出したことによって今はひらけた感覚がある。音楽はずっと私の中から生まれると思う。

─すでに『Spin』以降の兆しが生まれてる?

Suzu:うん。でも、私はすごい考えちゃう人だから。本来、私が一番自分らしくて楽しいときって、ただ感じてるだけ。思考があんまりないときなんです。それこそ最初のアルバムなんか何の恐怖もなかったし、躊躇もなく出せた。これからそこに戻っていけるのかなという兆しはある。

Suzu Toyama New Album 『Spin』

  1. From The Stars / 星から
  2. In Your Eyes / ひとみ
  3. しらない / Shiranai
  4. よあけ / Dawn
  5. Reason / 理由
  6. Fly / 飛ぶ
  7. ダンス / Dance
  8. How Did I Get Here / どうやってここに
  9. Nobody Now / だれでもなくなった

https://ultravybe.lnk.to/spin

Songwriting, vocal, guitar:Suzu Toyama
Euphonium, chorus, triola, cowbell:Emi Yanase
Bass, conga:Hibiki Yoshihara
Piano, keyboards:Takeo Toyama
Recording, mixing:Shinya Wada
Recorded at Former Toyama Residence in Onomichi
Mastering: Tsubasa Yamazaki at Flugel Mastering
Artwork: adim

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