10月3日(土)から25日(日)に京都・ロームシアター京都や京都芸術センター、京都芸術劇場 春秋座などで開催される『KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2026』の全プログラムが発表された。
同イベントは、多様な⼈々と舞台芸術の出会いと対話を生み出すフェスティバル。今回のキーワードは「ポケットに石ころ」。分断や紛争が時代を象徴するものとなり、他者と物語を共有することが急速に困難になりつつある今、人類にとって最も古いメディアであり抵抗の象徴でもある石ころをポケットに入れ、他者の記憶や物語を観客と共有する場としての舞台芸術祭を改めて思考するという。

フェスティバルは主に3つのプログラムで構成される。世界各地から先鋭的なアーティストを迎える上演プログラム「Shows」、関西地域をアーティストの視点で探究するリサーチプログラム「Kansai Studies」、実験的表現と社会課題を対話やワークショップでつなぐエクスチェンジプログラム「Super Knowledge for the Future [SKF]」の3つだ。
上演プログラム「Shows」には、遠藤薫、ミトゥ・セン、梅田哲也+追手門学院高校演劇部、ティアゴ・ロドリゲス、ホー・ルイアン、アリス・リポル/Cia. RECなど、ダンス、演劇、音楽、美術といったジャンルを越境する国内外のアーティストが参加。また、「Asian Playwright Project」として、神里雄大や上田久美子らが参加するリーディング公演も行われる。

Courtesy of Singapore International Film Festival.

「Kansai Studies」は、演劇ユニット・kondabaの石原菜々子と金子仁司がリサーチャーとなり、フィールドワークを通して身近な地域が内包する文化や風土に光を当て、これからの芸術表現の「原石」としていくリサーチプログラム。フィールドワークの様子はnoteにて随時公開中。また、活動報告としての展示が京都芸術センターにて開催される。さらに、エクスチェンジプログラム「SKF」では、プレイベントとなる対話企画やティアゴ・ロドリゲス、ホー・ルイアンによるアーティストトークや、ワークショップなどが予定されている。

前売券は、8月7日(金)12時から販売開始。フリーパスや各種割引チケットも用意されている。また、川崎陽子、塚原悠也によるディレクターズメッセージが公開された。
川崎陽子、塚原悠也 ディレクターズメッセージ
ポケットに石ころ、そして2026年のKYOTO EXPERIMENT
今年のKYOTO EXPERIMENT のキーワードは「ポケットに石ころ」。Showsプログラムの多くには、身体を通して他者の記憶や物語を運び、表現するという舞台芸術の営みそのものに立ち返り、いまを眼差している表現を見出すことができる。劇場が内包する個人と地域の記憶、失明する祖⺟が暗記し心の支えとした詩、検閲を逃れながら記される⼿紙、移⺠とその家族の⼟地との結びつき、身体と詩の交わりからつくられる本とダンス……これらの個人的・集合的記憶と物語は、他者と何かを共有する切実さをもって舞台芸術というメディアにより運ばれ、このKYOTO EXPERIMENTという空間と場で観客に手渡される。
いま世界で起こっていることに目を向けると、格差や分断に覆われ、紛争や戦争のなか、人道危機の状況は続いている。他者と物語を共有することが、いつのまにかとても困難になりつつあるなかで、フェスティバルが物語を運び、共有する場であり得ること、そのものを問いなおすことを、2026年の開催を通してあらためて思考してみたい。そのためのキーワードとして、何かを運ぶためのポケット、そしてそこに、膨大な情報や記憶、時間を内包する、人類にとって最も古いメディアであり、抵抗の象徴でもある石——名もなき小さなものかもしれない、石ころを入れて持ち運ぶことをイメージして、「ポケットに石ころ」を提案したい。経済格差や分断が極端に進む状況のなかでは、極端な政治信条を訴える政治家が支持を集め、わかりやすい経済指標で多くのものごとがはかられていく。文化にもまた、その足音は近づき、というかすでにその足の下に敷かれていて、経済的な尺度で評価される傾向が顕著に強まっていることは、文化芸術活動に従事する多くの人たちが感じているところではないだろうか。日本では、政府が博物館・美術館へ自己収入の数値基準を示したというニュースがあり、博物館・美術館も「稼ぐ」ことが求められているという。また、国立博物館や国立映画アーカイブなど、「国立」の文化施設で相次ぐクラウドファンディングは、国立の文化機関の予算建て付けそのものの課題を露呈している、という議論も巻き起こしながら進んでいる。
かくいうKYOTO EXPERIMENTでも補助金をいただき、活用させてもらってはいるのだが、数年前に設立された文化芸術活動基盤強化基金(クリエイター支援基金)では、日本の文化を「コンテンツ」として海外の「マーケット」へ展開させていく、つまり売り込んでいく動きが加速している。ヨーロッパのキュレーターたちからも、予算削減に関しての自国の文化担当省への嘆願書署名を求める連絡がアジアの我々のところに来るようになり、文化芸術への公的予算の考え方の変化は、世界の変容とも関係し、緊迫した状況を呈していることを感じている。
そのなかでのKYOTO EXPERIMENTの状況は、毎年のこのディレクターズ・メッセージでもお伝えをしてきた。新型コロナウイルス感染症拡大中の時期に京都市の財政悪化に伴い行われた行財政改革において、2022年には、このフェスティバルを主催・運営する京都国際舞台芸術祭実行委員会の負担金のうち、京都市の負担金がコロナ前の2019年度と比べて大幅な減額となった。また、この年はKYOTO EXPERIMENTが例年獲得してきた国際交流を主眼とする文化庁助成金の採択金額が想定をかなり下回る金額となり、これらの事情により、ついに一般の観客の寄付によるクラウドファンディングに活路を見出さざるを得なくなった。2010年に始まったこのフェスティバルにおいて、寄付制度は従来より設けていたものの、クラファンのように期限を切った資金調達キャンペーンを行ったのは、これが初めてだった。
幸いにも多くの方々の応援をいただいて1回目は無事に達成できたものの、それでは次の年、そしてその次はどう運営していくか……と頭を抱えたのち、編み出したのが2023年に始めた寄付によるサポーター会員制度で、これは2026年の現在に至るまで毎年募集し、毎年140名程度の登録と300万円を超えるご寄付をいただいている。サポーターのみなさまのあたたかな支援には、本当に感謝しかない。
こういった寄付による新たな財源獲得の試みも続けながら、さまざまな助成金を活用して現場の運営にも知恵を絞りながらなんとかここまで続けてきた、というのがKYOTO EXPERIMENTの実のところなのだが、補助金や助成金の枠組みにも変化が起こっており、フェスティバルが始まって以来、この15年以上ベースにしてきた予算組みの考え方はいよいよ通用しなくなっている。本年度、2026年の開催はその影響が最も大きく出ているといえるかもしれず、プログラム構成には非常に頭を悩ませた。運営上のさまざまな工夫のうえ、今回参加が実現するアーティストたちは、それぞれに素晴らしい作品を発表してくれることを確信しているし、観客のみなさまとこれらのアーティストの作品との出会いをつくることができるのは、例年に違わず大きな喜びである。
これまで述べてきたような経済的な状況は抱えつつも、なんとかして今年も、エクスペリメンタルで挑戦的な表現をがんがん紹介したり、クリエーションしたりしたいし、今も、これからも、実験的舞台芸術とその土壌の発展のためにKYOTO EXPERIMENTにできることはもっとあるはずである。今年だけでなく、今後に向けても、ポケットにさまざまな表現を含む石ころを入れて、フェスティバルとして歩んでいきたいと、一層気持ちを新たにしている。みなさまの引き続きのご支援を、何卒よろしくお願いしますKYOTO EXPERIMENT 共同アーティスティック・ディレクター
川崎陽子 塚原悠也
『KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2026』

会期:2026年10月3日(土)~10月25日(日)
会場:ロームシアター京都、京都芸術センター、京都芸術劇場 春秋座、THEATRE E9 KYOTO、京都市立芸術大学ギャラリー @KCUA、京都府立府民ホール “アルティ”、京都市呉竹文化センター ほか
主催:京都国際舞台芸術祭実行委員会
[京都市、ロームシアター京都(公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団)、京都芸術センター(公益財団法人京都市芸術文化協会)、京都芸術大学 舞台芸術研究センター、THEATRE E9 KYOTO(一般社団法人アーツシード京都)]
一般社団法人KYOTO EXPERIMENT
① Shows(上演プログラム)
参加アーティスト[上演順]
遠藤 薫[展示・パフォーマンス]
ミトゥ・セン[展示・パフォーマンス]
梅田哲也+追手門学院高校演劇部[演劇]
ティアゴ・ロドリゲス[演劇]
カルメン・リー&チュンシン・オー/シアター・デュ・プーレ[パフォーマンス]
ホー・ルイアン[パフォーマンス]
アヒラン・カルナハラン、神里雄大、上田久美子[リーディング]
キム・カンヨン、イ・ミンジン、パク・ミンヒ[パフォーマンス]
アリス・リポル/ Cia. REC[ダンス]
南野詩恵/お寿司[演劇]
小林 颯、倉知朋之介、泉 宗良 /うさぎの喘ギ[パフォーマンス・演劇]
山下 残&ニャー・トゥイェン with プロジェクト・デイ・サン[ダンス]
石原菜々子、金子仁司/ kondaba[演劇]
② Kansai Studies(リサーチプログラム)
石原菜々子、金子仁司/kondaba [展示]
『コンダバ川の地形図』
10.3(土)–10.25(日)10:00–20:00
会場:京都芸術センター ギャラリー南
③ Super Knowledge for the Future[SKF]( エクスチェンジプログラム )
・プレイベント KEX2026 キーワードよもやま夜話
・Future Dictionary
・ティアゴ・ロドリゲス アーティスト・トーク
・ホー・ルイアン アーティスト・トーク
・「TOPOS:まなびあう庭としての芸術大学」共同企画 映画『理大囲城』上映&トーク
・「TOPOS:まなびあう庭としての芸術大学」共同企画 カルメン・リー&チュンシン・オー/シアター・デュ・プーレ ワークショップ成果発表会
・ポケットの中の服飾史 レクチャー
・ケアと(エクスペリメンタルな!)表現のあいだで
・ロックバランシングワークショップ 入門編
・批評プロジェクト 2026
※詳細はプログラムページにて確認可能。
<チケット情報>
2026 年 8 月 7 日 ( 金 ) 12:00 よりチケット発売開始!
<チケット取扱>
・KYOTO EXPERIMENT チケットセンター
オンライン(セブン−イレブン引取または QR 発券)
電話予約| 075-213-0820 (セブン−イレブン引取)
窓口|京都市中京区少将井町 229-2 第 7 長谷ビル 6F
取扱時間|平日 11:00-19:00 (開催期間中は無休)
・ロームシアター京都 チケットカウンター
オンライン(要事前登録・無料)
電話予約| 075-746-3201
窓口|京都市左京区岡崎最勝寺町 13 1F
取扱時間| 10:00-17:00 無休(臨時休館日等により変更の場合あり)
・チケットぴあ
オンライン
※その他、各会場でもプログラムのチケット取扱いあり。(各会場で開催するプログラムのチケットのみ販売)
[京都芸術センター、京都芸術劇場 春秋座、THEATRE E9 KYOTO、京都府立府民ホール “アルティ”]
<フリーパス&各種割引チケット>
※フリーパスおよび各種割引券は KYOTO EXPERIMENT チケットセンターでのみ取扱い/前売のみ/本人のみ有効。
・フリーパス| ¥30,000
・ユース ※・学生フリーパス| ¥15,000
・3 演目券| ¥9,000
・ユース ※・学生 3 演目券| ¥7,500
・Asian Playwright Project セット券| ¥5,500
・パートナーホテル割
※25歳以下
※詳細はチケットページにて確認可能。
※そのほか関連プログラムは公式サイトにて確認可能。