A24製作、エレガンス・ブラットン監督『インスペクション ここで生きる』が全国公開中だ。『フルメタル・ジャケット』を彷彿とさせつつ、アイデンティティの多様性を問う本作について解説する。
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A24製作、監督の実体験に基づく物語
A24製作の映画『インスペクション ここで生きる』(以下、『インスペクション』)は、新鋭エレガンス・ブラットン監督の長編劇映画デビュー作だ。監督・脚本を務めたブラットン監督は、16歳からホームレスとして過ごした後、海兵隊に入隊。映像記録係としてキャリアをスタートさせた。本作は監督の実体験を基にしている。
舞台は、イラク戦争が長期化している2005年のアメリカ。ゲイであることを理由に母親から捨てられ、16歳からホームレス生活を強いられてきたフレンチ(ジェレミー・ポープ)は、生き残るために海兵隊に志願した。そこで、人間性を否定するような訓練と差別に直面する。フレンチは、心を折られそうになりながらも理不尽に立ち向かい、徐々に周囲も変化していく。