6月5日(金)に公開される映画『シラート』のオリヴィエ・ラシェ監督が、ゲームクリエイター・小島秀夫監督と対談した。
同作は、スペイン出身のラシェが監督と脚本、映画監督 / 脚本家 / 映画プロデューサーのペドロ・アルモドバルが製作を務める映画。⽗・ルイスと息⼦・エステバンが、砂漠で⾏われるレイブパーティに参加したまま失踪した娘を探す物語である。

今回の対談は、第38回東京国際映画祭に来日したラシェ監督が、同作を鑑賞した小島からのラブコールによりスタジオを訪問する形で実現したもの。小島は同作について「とんでもない映画でした。」「今年観た映画の中でも、間違いなくトップクラス」、「映像も音響も圧倒的で、特に没入感がすごい。観ている最中、何度も『これはすごいな……』と唸ってしまいました」と、興奮冷めやらぬ様子でラシェ監督に語った。
さらに小島は、ラシェ監督の前作『ファイアー・ウィル・カム(Fire Will Come)』にも言及。「大自然と人間の関係を描きながら、どこか幻想的で、それでいて現実の痛みがある」と作品世界を称賛し、出演者の多くが実際にその土地で暮らす人々であることを知ると、「演技というより、本当にそこに“生きている”感じがする」と、その圧倒的なリアリティに驚きを見せた。
これに対しラシェ監督は「私は人が好きなんです」「映画制作を通して時間をかけ、少しずつ関係を築いていく。撮影というより、一つの家族を作る感覚に近いかもしれません」と、自身の映画づくりへの思いを明かしている。

また、小島監督が『シラート』について、「普通の映画の構造からどんどん外れていく」と指摘。「最初は娘を探す物語として始まるのに、途中から全く別の旅になっていく」と、同作の魅力のひとつ“予測不能なストーリーテリング“に言及すると、ラシェ監督は、「人生って、そういうものだと思うんです。突然、全てが変わってしまう」と語り、「結果やマーケットを気にして、最初から“安全なもの”を作ってしまったら、新しい映画は生まれません」と断言。すると小島監督も、「アルゴリズムからは絶対に生まれない映画ですよね」と深く共感を示す。
加えて、小島監督は同作を「単なるロードムービーではなく、非常に精神的な旅の映画」と表現し、「外側の障害を越えるだけではなく、内面の変化を描いている」と分析。ラシェ監督も「まさに『英雄の旅』ですね。ただし、敵を倒すためではなく、自分自身の感覚や喪失と向き合うための旅です」と答えた。
最後に小島監督は、「観終わった後、ものすごい感情が残る。10年後、20年後にも語られる映画になると思います」と締めくくった。ラシェ監督は感謝を述べながら、「そうなれば嬉しいです」と笑顔を見せ、熱気に包まれた対談は幕を閉じた。
なお同対談の全文は、同作の劇場パンフレットに収録される予定だ。

映画『シラート』
6/5(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラスト有楽町、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほかにてロードショー
監督:オリベル・ラシェ『ファイアー・ウィル・カム』
製作総指揮:エステル・ガルシア 製作:ペドロ・アルモドバル 脚本:オリベル・ラシェ、サンティアゴ・フィジョル
撮影監督:マウロ・エルセ 編集:クリストバル・フェルナンデス 美術:ライア・アテカ
音楽:カンディング・レイ(デヴィッド・ルテリエ)
出演:セルジ・ロペス『パンズ・ラビリンス』、ブルーノ・ヌニェス・アルホナほか
2025年/スペイン・フランス合作/スペイン語・フランス語・英語・アラビア語/115分/ビスタ/カラー/5.1ch/PG-12/日本語字幕: 杉田洋子 / 原題:Sirāt
/後援:セルバンテス文化センター、スペイン大使館 / 配給:トランスフォーマー
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■ストーリー
砂漠で行われるレイブパーティに参加したまま失踪した娘を探すため、父ルイスと息子エステバンは、モロッコの山岳地帯から砂漠の奥深くへと車を走らせる。行き着いたのは、現実と幻覚が混濁するような野外レイブのカオス。耳をつんざく重低音、赤い照明の海、沈黙を貫く父親の背中。だがそこにはすでに娘の姿はなく、父と息子は、レイブの参加者グループを追って、娘が向かったと思われる次のレイブ会場を目指すことになるが……。