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コロナ禍が開け、再び人間関係の煩わしさの中へ
新型コロナウイルスの扱いが5類感染症となってから、1年以上が過ぎた。過度の感染症対策が必要なくなり、かつてのような普通の生活に戻ってきている。その感を強く抱かせられるのは、人と人が距離を縮め、密接に交流することの復活であろう。街はインバウンド客を中心に人で溢れている。会社はリモートワークを減らして、再び社員を出社させている。それに伴い朝夕は満員電車となり、飲み会が復活した企業もあるだろう。非接触生活からの解放は、人を孤独から救う。だがそれは裏を返せば、再び複雑な人間関係の中で生きねばならないということでもある。人が寄り集まってできる家庭、会社、社会には、集団を円滑に運営するためにルールが設けられる。そこには、何のためにあるのか分からないが、いつの間にかそうなっている規則や習慣も含まれる。人間は属する集団の数だけ煩わしいルールに拘束され、そこから大小様々なストレスを日々受けて生きている。
そのことはつまり、規則や習慣を背景にして自身へと介入してくる他者への不満に帰着する。ルールを作るのが人間である以上、時に解決し難い困難な問題は、人間関係がもたらすと言っても良い。コロナ禍が明けたことで、改めてそのことを痛感した人も多いのではないだろうか。2024年に10周年を迎えたウンゲツィーファの新作『8hのメビウス』は、メビウスの輪のように出口がなく、ウロボロスの輪のように自分の尾っぽを噛むような日常生活での困難さを、ヒリつく痛みと笑いの両面で描く作品だった。