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映画『ブルーピリオド』レビュー 眞栄田郷敦ら若手俳優が演じる「狂気的」な努力

2024.8.9

#MOVIE

山口つばさによる『マンガ大賞2020』受賞の同名漫画を原作とする実写映画『ブルーピリオド』が8月9日(金)より公開中。同作の「この夏いちばん熱い映画」という公式の触れ込みは伊達ではない。美術をテーマにしながらも万人におすすめできる「王道スポ根映画」であり、甘さなんてない「青春の戦い」を描いた傑作だった。

空虚な日常を過ごしていた少年が、藝大受験を志す物語

主人公の高校生・矢口八虎は、同級生たちと渋谷の街を出歩きサッカーの試合を見て騒ぐ日々を送っていたが、美術の授業の課題「私の好きな風景」で悩んだ末に「明け方の青い渋谷」を描いたことをきっかけに、美術に興味を持ち、のめりこんでいく。

そして、彼は「日本一受験倍率が高い学科」「東京大学よりも受かるのが難しい」とさえいわれる、東京藝術大学の絵画科の受験に挑む。現役生の倍率はなんと約200倍、受かるのは毎年5人ほどで、三浪、四浪は当たり前。しかも、自身の家の経済状況を考えると私立大学受験は厳しいため、彼は志望校を藝大に絞るしかなかった。

初めこそ八虎はソツなく器用に日々を過ごしている様が「いけすかない」、または「リア充」な印象さえ持つキャラクターだが、その内面では「空虚さ」を抱えている。そんな彼が、美術についてはズブの素人だったのにも関わらず、狭き門という言葉でも足りない超難関な受験に挑むというギャップが面白く、それこそが「王道スポ根もの」である理由だ。絵画を学ぶ過程での「知らない世界を覗き見る」感覚、現実にもあるとてつもなく厳しい受験の課題、クセの強いキャラクターの掛け合いそれぞれもエンターテイメントになっていた。

しかも八虎は、予告編でも聞けるように「俺はやっぱり天才にはなれない。だったら天才と見分けがつかなくなるまでやるしかない」「俺の絵で、全員殺す」とまで考えるようになる。努力と情熱がもはや「狂気」にさえ変わる様は危ういが、その狂気さえも「武器」にして、青春の全てをかけて挑む様は、大きな感動を呼ぶはずだ。

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