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令和の『攻殻機動隊』は原作の何を受け継ぎ、何を変えたのか? 藤津亮太が解説

2026.9.15

#MOVIE

© 2026 Shirow Masamune/KODANSHA/THE GHOST IN THE SHELL COMMITTEE
© 2026 Shirow Masamune/KODANSHA/THE GHOST IN THE SHELL COMMITTEE

TVアニメ『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』(カンテレ・フジテレビ系)が9月8日(火)の放送で最終話を迎えた。

シリーズ構成・脚本をSF作家の円城塔、キャラクターデザイン・総作画監督を『リトルウィッチアカデミア』(TV版)、『スプリガン』(Netflix版)などの半田修平、音楽を岩崎太整、小西遼、YUKI KANESAKAらが務め、オープニングテーマとエンディングテーマにはそれぞれKing Gnu、MILLENNIUM PARADEが起用されるなど、強力な布陣で制作された2026年版の『攻殻』。

今なお多くのファンに愛されるサイバーパンクSFの金字塔は、今回どのように料理されたのか。過去のシリーズとどのように連なっていて、また、どのように異なっているのか。『富野由悠季論』(筑摩書房、2025年)や『アニメと戦争』(日本評論社、2021年)などの著書で知られるアニメーション評論家・藤津亮太が論じる。

第1世代『攻殻』の「3つのライン」

モコちゃん監督による『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』(2026年)は、歴代のアニメ『攻殻機動隊』の中で最も「ホット」な作品に仕上がっている。

原作漫画『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』は1989年『ヤングマガジン海賊版』5月号で連載が始まった。同作は1991年に単行本化され、1995年の劇場版『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(押井守監督)を皮切りにこれまで複数回アニメ化されている。

2022年に配信された『攻殻機動隊 SAC_2045』シーズン2(神山健治監督・荒牧伸志監督)の最終回で、主人公・草薙素子は「忘れないで。私たちがこの時代に存在していたことを」の言葉を残して去った。これは単なるひとつの作品の締めくくりの言葉にとどまらず、1995年から始まったアニメ『攻殻機動隊』の大きなサークルを閉じるセリフのようでもあった。実際、現在放送中の新アニメシリーズ制作にあたり原作の士郎正宗は、「押井氏版、神山氏版、黄瀬氏版に次ぐ4番目の『攻殻』」「制作関係者が替わった観点からだと第2世代型の1作目と捉えることも可能だろうか」とコメントしている。

士郎の指摘通り「第1世代」のアニメ『攻殻』は大きく3つのラインからなる。

最初のラインは、押井守監督による映画『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』と、その続編『イノセンス』(2004年)。押井は原作漫画で描かれた「電脳」と「義体」という要素にフォーカスし、原作漫画のエピソードを利用しながら「人間の実存と身体性」という主題に迫っていった。

次のラインが神山健治監督がかかわった作品群だ。TVシリーズ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』(2002年)と『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』(2004年)、そして長編『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society』(2006年)。荒牧監督との共同監督作である配信シリーズ『攻殻機動隊 SAC_2045』(2020年)も、直接の続編という建て付けではないが、この系譜に加えてよいだろう。

神山は原作漫画の、事件とその解決を描く「刑事もの」というフォーマットをシリーズを作るための背骨として活用。その上で事件を入口に「テクノロジーによる人間と社会の関係の変化」を描いた。これは広い意味で「正義」をテーマにしたといってもよい。

そして3つ目が素子たちが所属する公安9課結成前夜を描く『攻殻機動隊ARISE』全4話(2013年)と映画『攻殻機動隊 新劇場版』(2015年)のラインである。黄瀬和哉総監督によるこのラインは、押井ライン・神山ラインで固まったメインキャラクターのイメージを前提にしつつ、そこに至る前の未完成な若き日の姿の登場人物たちを描いた。3つのラインの中では、一番新たなキャラクターの魅力を掘り起こそうとしたシリーズといえる。

鮮やかな色使いと、アップの多用による「ホット」さ

ではこの「第1世代」と今回の『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』とはどこが違うのか。そこでキーワードとなるのが冒頭に触れた「ホット」である。

第01話「PROLOGUE + SUPER SPARTAN i」冒頭、ニューロチップのアップと世界観を説明するテロップを見せた後、画面はニューポートシティのビル街を映し出し、そこをヘリコプターが飛んでいく。このカットは、降りしきる雨が夕日で金色に輝いており、ビルも黄土色に染まっている。そしてそこを赤いライトをつけて飛ぶヘリコプター。黄色の中を移動する赤い光の鮮烈な印象や、光る雨とビルの影のコントラストなど、色のイメージが際立っている。また素子は青い髪に赤い目という設計で、しかもその素子が操るAI搭載型思考戦車・フチコマも真っ赤である。このように本作は、異なる色相を大胆に同居させており、非常にカラフルな印象の画面になっている。影付けがシンプルなのも、色の印象が強くなっている一因だろう。この色使いが画面をホットにしている。

© 2026 Shirow Masamune/KODANSHA/THE GHOST IN THE SHELL COMMITTEE

もうひとつはアップの多さだ。原作漫画は4段8コマを基調とした語り口で、背景まできっちり描きこまれており情報量が多い画面が特徴。キャラクターのアップもそこまで多くないし、アップになってもコマそのものが小さかったりする。これに対し本作は、第01話冒頭で公安部の突入準備を「まだか」と待つ荒巻がフレームいっぱいに描かれたように、アップが多い。続く素子の描写も、原作漫画はしゃがみ込んだ彼女の全身を見せているが、本作では彼女のアップで見せている。

アップが多いことに加えて、いわゆる「崩し顔」と呼ばれる、コミカルな表情の顔も本作ではかなりカメラが寄った状態で描かれる。例えば第07話「BYE BYE CLAY」で、メガテクボディ社の社員が「ああ荒巻さん、捕まえてくださったんですね」と素子の肩に頬を擦り寄せるカット。社員のコミカルな仕草に加え、驚いた素子の目もまんまるで、頬もピンクになってかなりコミカルな表情になっている。こうなると原作ではクールに応対していた9課課長・荒巻の「それはワタシの部下で、政府の機材です」といったセリフも、むしろツッコミといった感じの演技になってくる。原作漫画の小さなコマで引きのアングルで描かれた「点景」を、アップを中心にアニメの画面として組み立てようとすると、こういう違いが生まれることになる。

アップとそれで描かれる(崩し顔も含めた)多彩な表情。これもまた作品の雰囲気を「ホット」にしている。

© 2026 Shirow Masamune/KODANSHA/THE GHOST IN THE SHELL COMMITTEE

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