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ドラマ『団地のふたり』が描く「喪失と共に生きること」

2026.9.8

#MOVIE

©NHK
©NHK

ドラマ『団地のふたり』(NHK総合)が2年ぶりに放送されている。

2024年のNHK BSでの初放送時にも話題となり、NHK総合での放送が熱望されていた本作は、続編『また団地のふたり』(双葉社)も発売されている藤野千代の人気小説『団地のふたり』(双葉社)を原作に、『Dr.コトー診療所』(フジテレビ系)などの吉田紀子が脚本を手掛けている。

演出は『ひらやすみ』(NHK総合)メイン演出の松本佳奈が手掛け、フードスタイリングを担当しているのが映画『かもめ食堂』や『しあわせは食べて寝て待て』(NHK総合)などの飯島奈美というのも、ドラマ好きには間違いない布陣に。

小泉今日子×小林聡美のW主演も話題の本作について、ドラマ・映画とジャンルを横断して執筆するライター藤原奈緒がレビューする。

※本記事にはドラマの内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。

団地に住む50代の幼なじみ2人の暮らし

語り継がれる名作ドラマ『すいか』を思い出す小泉今日子と小林聡美の共演©NHK
語り継がれる名作ドラマ『すいか』を思い出す小泉今日子と小林聡美の共演©NHK

2024年9月からNHK BSにて放送されていたドラマ『団地のふたり』が、7月14日からNHK総合の「ドラマ10」枠として放送中だ。W主演は、小泉今日子と小林聡美。ほぼ同世代の2人の共演には、木皿泉脚本による2003年の名作ドラマ『すいか』(日本テレビ系)を思い出さずにはいられない人も多いのではないか。

主人公は、団地に住む50代の幼なじみ2人——ノエチこと太田野枝(小泉今日子)となっちゃんこと桜井奈津子(小林聡美)。結婚したり、好きな人と暮らしたり、片や准教授目前の優秀な研究者、片や売れっ子イラストレーターとして順調だった時期があったりと「若い頃はいろいろあった」2人は、今は団地に戻り、互いの家を行き来する日々を送っている。子どもの頃から大人になっても続く友情は奇跡だ。未婚か既婚か、子どもがいるかいないかなど、ライフスタイルの変化に伴い、次第に疎遠になっていくのが世の常というもの。そんな中、保育園の頃から50代になった今までずっと変わらず、共にごはんを食べ、時に喫茶店でホットケーキを食べ、ベランダをお喋りのための素敵空間に変え、時に歌い踊り、「日々へこんだ心をぷーぷー膨らませ」ながら愉快に暮らしている2人の姿を、第4回における森山(ムロツヨシ)ではないが、憧れの眼差しで見つめずにはいられない。

美味しそうなごはんと日常の機微を感じさせるひとひねり

野枝(小泉今日子)と奈津子(小林聡美)が食べるごはんは美味しそう©NHK
野枝(小泉今日子)と奈津子(小林聡美)が食べるごはんは美味しそう©NHK

大学の非常勤講師をしている野枝はバスに乗って往復4時間かけて大学に行く。帰りは「ほとんど毎日」奈津子の家に行き、奈津子の作った晩ごはんを食べる。この晩ごはんがたまらなく美味しそうだ。フリーのイラストレーターである奈津子の得意料理は、団地を離れ一人暮らしをしていた時代に、自由業仲間に喜ばれていた「坊さんめし」である。土鍋ごはんに、取り寄せた野菜の美味しさをそのまま活かした野菜焼きと手軽に作った野菜炒めを添える。フリマアプリの収入でお財布が潤った時は、ちょっと贅沢なお取り寄せグルメを満喫したり、暑い日はかき氷機を買って特製抹茶シロップとあんこで絶品宇治金時を作ってみたりする。

最近では、団地ドラマ『しあわせは食べて寝て待て』や平屋ドラマ『ひらやすみ』においても、主人公たちが作って食べるごはんの数々が、単に美味しそうなだけでなく、自分でも実践できそうな身近な食材と調理法でできていることに心が沸き立ったが、本作ではもうひとひねり加えられている。それは、各回の終わりに映される奈津子手描きの「今週のお買い物」と「今週の売上」。「家庭用かき氷機1,150円」や「<まつ>のホットケーキ 割引券使用」、「やえしろのフルーツサンド ノエチのおごり」など、単に奈津子の暮らしぶりを可視化する家計簿としての役割を持つだけでなく、割引券がもたらした小さな喜びや、疲れた日に「マーフィーの法則」を打ち破った野枝の差し入れがもたらした多幸感の実感が滲む。そこからは日常の機微を感じさせ、しみじみと共感せずにはいられなくなる。

団地で「喪失と共に生きること」

野枝と奈津子も幼少期の喪失と共に生きる©NHK
野枝と奈津子も幼少期の喪失と共に生きる©NHK

ドラマ『団地のふたり』のテーマは「喪失と共に生きること」ではないか。第1・2回で印象的だったのは、野枝と奈津子が、小学生の頃に小児がんで亡くなったもう1人の幼なじみ「空ちゃん」をまるで昨日のことのように覚えていることだった。第1回では、移転が決まった保育園を前に、そこが野枝と奈津子の2人が出会った場所であることを話すと共に、「空ちゃんもいた」ことを話す。第2回では、父・賢一(塚本高史)と共に団地に引っ越してきた小学生・春菜(大井怜緒)を見て、その様子に空ちゃん(英茉 / 山田詩子)の面影を重ねる。

終盤、2人は春菜を夕ごはんに誘い、野枝は「たまーに、3人で食べられたらうれしいな」と言い、奈津子は「そう、子どもの時みたいに」と言う。そこに「空ちゃんと3人、一緒だった頃みたいに、ね」という野枝のモノローグが重なる。それは、彼女たちならではの「喪失」との向き合い方と言えるだろう。また、春菜にとっては、そうやって2人に大切な仲間として扱われることで、彼女たちは敬うべき年上の女性たちから、特別で身近な存在に変わり、見知らぬ団地は徐々に春菜自身の居場所へと変わっていく。そんな素敵な喪失と出会いを描いたのが第1・2回だった。

「記憶」「恋人」そして「過去」の喪失

春日部(仲村トオル)の母・恵子(島かおり)は記憶を失っていく©NHK
春日部(仲村トオル)の母・恵子(島かおり)は記憶を失っていく©NHK

さらに、第3回は「記憶」の喪失の話だった。「団地に住んでいた頃の記憶だけははっきりしているのに、息子のことは思い出せない」という野枝の初恋の人・春日部(仲村トオル)の母・恵子(島かおり)を通して、認知症によって記憶を失っていく人と、その人と向き合う人たちの切ない思いを描いた。そして、第4回で描いたのは「恋人」の喪失。団地で同棲していた恋人を失った森山(ムロツヨシ)が主人公だった。住民たちのおせっかいを通して、彼もまた、団地を自分の居場所にして、孤独と共に生きる方法を模索していく。

森山(ムロツヨシ)は団地で同棲していた恋人を失った©NHK
森山(ムロツヨシ)は団地で同棲していた恋人を失った©NHK

一方、全10回の折り返し地点である第5回は、団地の夏祭りという、「ハレとケ」の「ハレ」の日を描いた回だ。強いて言うなら、第5回における「喪失」は、団地そのものの今と昔だ。野枝と奈津子がまだ幼かった頃、にぎやかだった過去の団地には戻れない。でも、元ヤン風若夫婦・沙耶香(田辺桃子)と翔太(前田旺志郎)が新たな住民に加わり、一騒動を起こしたり、春菜とコンビニのアルバイト店員“ユンくん”こと尹賢友(ソンモ)が、カラオケ大会の野枝と奈津子のチームに加わったりと、新しい住民の存在や出会いが団地に新鮮な風を吹き込んでくれている。団地のところどころで新たな出会いが生まれている。

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