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「変わり続けること自体は良しとしていい」(手島)
─お話を伺っていると、アーティストとして常に変化に挑戦し続けることが、結構重要だなと感じました。

手島:「アイデンティティは一貫していなければならない」と思われがちですけど、心理学的にはそんなことはないです。環境も年齢も聴いている音楽も変わるし、結婚したりしなかったり、病気をしたりする中で、実際には自分を作り直して生きていくので、同じ人でも15歳と30歳の時では一貫している部分もあるけれど、どんどん変わっていっている。The Rolling Stonesだって、変わらないように見えて結構変わっています。自分の一貫している部分を自覚することは一つ大切なことですが、その一方で変わり続けること自体はむしろ良しとしていいのかなと思います。
ただ、変わる時はいつも良いことばかりではなく、落ちたり上がったりしながら成長するものです。荒谷さんの音楽を聴いていると、光と闇など相対するものの境目みたいな表現がたくさん出てきますよね。その間をなんとなくゆらゆらしているような、境界が滲んでいる感じをすごく受けます。それに少し近いかもしれない。どこかしら一貫しているんだけれども、揺れてOKというか、揺れながらバランスをとっていくというか。
荒谷:僕の軸にある表現はそこです。揺らぎこそが安定な気がしていて。矛盾してますけど。

手島:まさに心理学的にもそうで、一貫しているけど揺らいでるって感じなんですよね。持って生まれた特性は変わらなくても、人間としては揺れながら進んでいくものという感じかなと思います。
荒谷:おっしゃる通り、自分の10代や20代を振り返ると、別人のように思う瞬間があります。あー、人って変わるものなんだなと思うんですけど、半面大事にしたいものは変わらないなって思います。自分の心が「ときめくか、ときめかないか」という判断基準だけは一貫しているんです。音楽を始めたこともそうですし、今音楽をやっていることもそうです。心が動いている方に行きたいというのは、死ぬまで続く指針としてあります。
─そのアーティストとしてのあり方を身につけたのはいつ頃ですか?
荒谷:音楽を始めたいと思った小6くらいからです。「やりたいことをやる人生」と決めていました。だからバンドからソロになったのも、自分としては一貫した選び方です。理由は後付けで色々ありますけど、本能とか衝動に近いですね。
─先ほど揺らぎこそが安定ということが表現の軸だとおっしゃっていましたが、どうしてそう思われたんですか?

荒谷:絶望と希望、良いことと悪いことはコインの裏表のように全部一緒だと思ったのがきっかけです。一つの事象をどう取るかは自分の都合でしかない。そう考えたほうが自分は楽に幸せに生きられるなと。高校卒業後に1年間バンクーバーに行った時に感じたことが軸になっています。
揺れるのをただ、眺める。悲しみも喜びも、どっちもあっていい。ただそこにあるだけ。極端な話でいうと、生きたいと思うのと同様に、死にたいと思ってもいいんじゃない? と。死にたいと思えるのは、生きたいという思いもあるからだと思うんです。そこを否定するのも違うと思って。
手島:死にたいと口にする人も揺れているんですよね。死ぬということを話題にしないことで逆に深刻になることもあるので、話ができるほうが良かったりもします。

荒谷:机の上に感情を出せる方が、感情に飲み込まれてしまうよりいいかもしれません。まあ、飲み込まれてもいいとも思いますけど。俯瞰しつつもその渦中にちゃんといる、という感覚こそが「生きている」ということだと感じます。
手島:悟りを開くんじゃなくて、悩み苦しんで楽しんで、生き切るということですね。