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NEWS EVENT SPECIAL SERIES

虎ノ門ヒルズに期間限定オープン「MUUUSE」レポート 新感覚の没入型展示

2024.11.13

#MUSIC

ちょっと覗くだけで何かと心が躍る、虎ノ門ヒルズ。その「TOKYO NODE」内に、感性を刺激してやまない新スポットが期間限定で誕生している。その名も「MUUUSE(ミューズ)」。芸術の女神の名前をいただくこの特別な場所は、TOKYO NODEとラジオ局のJ-WAVEが共同で開催するミュージックのミュージアムだ。本記事は、今までにないかたちで音楽と出会える没入型音楽体験ミュージアム『MUUUSE: MUSIC MUSEUM~音に触れる、光を聞く。身体が反射する。~』の見どころと楽しみどころをお伝えする潜入レポである。

映画館の6倍の立体音響

「MUUUSE」は大きく3つの展示エリアに分かれていて、それぞれが「過去」「現在」「未来」を表している。

会場風景:スクリーンの大きさが伝わるだろうか。

エントランスをくぐるとそこはまず、「過去」のエリアだ。過去といっても2、3年前じゃない。太古からの「自然の音」の記憶として、氷の粒の音、葉っぱのざわめく音や火のはぜる音etc……が壮大なスケールのムービーとなって繰り広げられる。さすが音楽のミュージアムだけあって、音の臨場感がすごい! この空間では32.2チャンネルという超規模の立体音響が組まれているそう。一般的な映画館が5.1チャンネルなので、単純に考えるとその6倍以上である。

火の粉が降ってくる!

プラネタリウムのような天球型のスクリーンの根元にはビーズクッションが設置されており、寝そべって鑑賞すれば極楽だ。降り注ぐ自然の音を全身に受けていると、冒頭なのにもうめちゃめちゃリラックスしている自分にびっくりである。

ビッグバンから始まり、火、土、風、水をイメージしたシーンが続いていく

展示室の真ん中にある球体に手をかざすと、光が集まり、シーンごとに異なったエフェクトが発生する。例えば幻想的な花が咲いたり、踊る精霊が現れたり……やがてそれは背景の大画面にも反映されて、音と映像の一部になる。自分の手のひらから生まれたモノが空間全体に広がっていくのを見ていると、ちょっと快感。気分は完全に、天地創造中の神である。

家電でワッショイ!

展示室1と2の間には、現代アート感漂う謎の山車(だし)のようなものが飾られている。この山車自体が発電機になっており、そのエネルギーを使って不要な電化製品を楽器として演奏する、というエレクトロニコス・ファンタスティコス!のプロジェクトらしい。近くで見てみると、扇風機やバーコードスキャナー、道路の信号機などの姿が確認できた。

エレクトロニコス・ファンタスティコス!『発電磁山車(はつでんじだし)』
エレクトロニコス・ファンタスティコス!(通称:ニコス)は、アーティスト / ミュージシャンの和田永が中心となり、あらゆる人々を巻き込みながら、役割を終えた電化製品を新たな「電磁楽器」へと蘇生させ、徐々にオーケストラを形づくっていくプロジェクト。

実際に楽器として使うとどんな感じになるのか気になる人は、ぜひスクリーンの映像も併せてチェックを。驚くほどちゃんと祭囃子になっていて、遠目に行列を見かけても家電だとは気づかないかもしれない。阿波踊りなどで見かける半月型の「おけさ笠」がソーラーパネルでできているのには笑った。

また、ここでは同時に、電化製品を使った祭りのアイデアも募集している。記入用「妄想シート」にアイデアを書いてボックスに提出すれば、いつか自分のアイデアも実現して鳴り響く……かもしれない。

13Kで体験する音楽の臨場感

会場風景

「現在」のエリアでは、幅約24mの超ワイドなスクリーンが待ち受けている。下がった照明や観客のシルエットも相まって、ライブ会場のような雰囲気である。ここでは6組のアーティストの特別な映像が上映される。ライブ映像の新構成バージョンや、MVのオリジナルバージョン、完全新作の映像など様々だが、いずれもここでしか観られない「初出し映像」だという。

THE YELLOW MONKEY“SPARK”

いや正直言って、そのアーティストのファンにとっては大興奮だろうけど、あまりよく知らない歌の映像を大画面で見てもなあ……と思ってました。ごめんなさい。

取材時はちょうどTHE YELLOW MONKEYのライブ映像が始まるところだったが、その第一音が鳴った瞬間に、全身鳥肌! である。画面中のステージとピッタリ合わせて会場の照明が変化するので、画面の向こう側とこちら側の区別がつかなくなってくる。まるでその場に居合わせているかのような没入感に、興奮を止められなかった。隣に立っていた女性がライブのようにノリノリで体を揺らして聴き入っているのも、なんだか楽しい。皆で同じ曲を聴くって、やっぱりとても楽しいことなのだと思う。

YOASOBI“舞台に立って”

こちらはNHKスポーツテーマ2024として知られるYOASOBI“舞台に立って”の、MV特別バージョン。元の公式MVではクライマックスで色々なスポーツが一瞬ずつ映るところがあるのだが、ここでは各競技のノーカットバージョンが一斉に24mの画面を埋め尽くす、という胸熱演出を見ることができる。これを見ると、ラストの歌詞の<今までのどの瞬間も無駄じゃなかったと思えた>の心への響き方が全然違う。ちょっとくらいウルっとしても、それでもなお画像は精細である。13Kなので。

nævis(ナイビス)“Done”右手の木は画面を突き出しているように見える

SMエンタテインメントからデビューしたばかりのバーチャルアイドルnævis(ナイビス)の映像は、この「MUUUSE」に合わせて制作された完全新作だけあって、こちら側とあちら側の境界線を曖昧にさせるような演出がたっぷり詰め込まれている。なお、バーチャルなのはnævis本人のみで、4人のダンサーはリアルな人間とのこと。見ているうち、人物のリアルとバーチャルの境界線まで曖昧になるのを感じるだろう。

ほかにもTM NETWORK、UVERworld、ピアニストである角野隼斗と、合計6組のアーティストが登場する。すべて通して鑑賞するとおよそ30分ほどの、見応えあるパフォーマンスだった。ここも写真や動画の撮影OKって、かなり太っ腹なのでは?

クルマと音楽の親密な関係性

「Audi Q4 e-tron」

展示室2と3の間ではアウディの実物展示とともに、エンジン音をベースに作曲されたオリジナル曲が流れるインスタレーションが。ちなみに、「MUUUSE」が位置しているのは虎ノ門ヒルズステーションタワーの45階。日没後は後ろのカーテンが開かれ、地上200mから見下ろす東京の夜景が背景になるのだそうな。

AIでオリジナル曲&ジャケット生成に挑戦

さらにアウディのコーナーの横には、新感覚の音楽AI「PixTrax(ピックス・トラックス)」を試せる一角も。QRコードを読み込んで自分の好きな写真をアップロードすると、AIがその解析データからオリジナルの音楽とジャケット画像を生成してくれる、という衝撃のシロモノだ。そ、そんな馬鹿な……というわけで、さっそくやってみた。

筆者写真フォルダより

先週動物園で撮影した可愛いレッサーパンダの写真を、その場でアップロード。生成には数分かかるので、AIに頑張ってもらいつつ、そのまま最後の展示エリアへ進むことにする。

直視できるレーザーに脳が大興奮

会場風景(実際は写真の100倍すごいです)

最後は水曜日のカンパネラの作詞作曲を手がけるケンモチヒデフミと、先ほどの「PixTrax」の技術者である川田十夢のコラボレーションによる「未来」のセクション。真っ暗な展示室に入ると、音楽に合わせて激しく躍動するレーザービームが身体を射抜いてくる。このレーザーは医療用技術を使った次世代の光演出で、目に入っても害が無いのだそう。ここぞとばかりに見つめてみたら、初めて体験する「直視できるレーザー」に脳が大興奮して、酔っ払ったみたいにテンションが上がるのを感じた。

会場風景(実際は写真の100倍すごいです)

気になる音楽は水曜日のカンパネラのようだけど、何かがちょっと違う。AIを駆使して水曜日のカンパネラの音楽をちょっと進化させた、その名も「木曜日のカンパネラ」のオリジナルミュージックである。注意深く聴くと、元の曲とその変化ぶりがわかって面白い。例えば“エジソン”は交流電気方式の発明者として知られている二コラ・テスラの曲に生まれ変わり、歌い出しの<踊る暇があったら発明してえ>は<踊る暇があったら発電してえ>に変化している。ユニークな歌詞で知られる“桃太郎”も、お爺さんサイドから見た全然テイストの違うイイ曲になっているので必聴である。

音と光で高揚し、踊り出す人の姿も。その気持ち、わかる!

レーザーは24本のアームを持つ「ビーム・ツイスター」なるロボットから放たれている。これまで結構いろんなイベントでレーザーの演出を見てきたけれど、もうこれは異次元のすごさである。音と光の幾何学模様に飲み込まれていると、心地よくて一瞬フワ〜っと意識が飛びそうになった。会場を案内してくれたスタッフさんは「写真だと伝わりきらないので、来ていただくしかないですね……」と語ってくれたが、本当にそうだと思う。

過去 / 現在 / 未来とすべての展示を観てきて、確信する。音の波と光の波は、いつだって私たちを非日常へと連れて行ってくれる。そして「MUUUSE」は、それを最大限に増幅してくれる場所なのだ。

画像から楽曲を作るAIを体験、結果は……?

木曜日のカンパネラに夢中になって、すっかり「PixTrax」のことを忘れていた帰り道。「できたかな〜?」とスマホをのぞいて、思わず歓声をあげてしまった。

Screenshot

できてる!

タイトルは「ダンシング・レッド・パンダ」。ああ、さすがにAIはレッサーパンダを完全には認識できなかったか……まあ、赤いパンダでも立派なものか……と思ったら、レッサーパンダは英語で「red panda」だった。完全に掌握されている。そしてメロディはというと、これがカントリー調の男性ボーカルで、ちょっと腹が立つくらいいい曲なのである。音楽がこんなふうにAIで作れるなんて、激しい衝撃を受けた。

そして同時に、展示室で観た「現在」のアーティストたちの、熱量のこもった音や詞、パフォーマンスを思った。なるほどこれは、どっちがすごいとか正しいとかの定規をあてるのはナンセンスかもしれない。多分お互いに全く違う方向に、全力ですごいのだ。私たちの「音楽」にはこれだけ幅広いものが含まれているのだと、改めてその懐深さを感じるのだった。とにもかくにも「PixTrax」、かなり賢い子なので、ぜひ試してみてほしい。

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