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野呂佳代、宮藤官九郎が演じるサブキャラクターの魅力
原作の余白を埋める豊かさでは、サブキャラクターの造形にも触れておきたい。
たとえば、野呂佳代が演じた藤野の母親。彼女は劇中ほぼアップで描かれない。引き気味のショット中心で、台詞もごく日常のやりとりがほとんどだ。それでも飾らない雰囲気や眼差しからは娘への愛情と気づかいが滲んでいて、忘れがたい印象を残す。藤野の才能を育てた環境が、母親の存在感によってぐっと厚みを増している。部屋にこもり漫画を描く2人に出してくれる桜餅がまたいい(ちなみに藤野が好きなこのおやつはその後もさりげなくスクリーンに登場し、観客の記憶を刺激することになる)。
藤野と京本が出会うきっかけを作った小学校教師は、宮藤官九郎が演じている。飄々とした佇まい、朴訥とした秋田訛りが微笑ましい。原作ではほんの数コマしか描かれず、その役割は読者の想像に委ねられていた。映画ではそれが短いシーンの中で掘り下げられ、2人を見守る視線がはっきり強調されている。
象徴的なのは、生徒たちが配られた学年新聞を次々と後ろに回していく場面。是枝監督はここに「人に褒めてもらうのは一番嬉しいんだからな」という先生の言葉をさりげなく重ねてみせた。これは原作にはなかった映画オリジナルの工夫。どこか気が抜けたような「クドカン口調」で語られるこの台詞が作品のメッセージの根底に触れている気がして、筆者は胸が熱くなった。
逆のパターンもある。原作ファンの方はきっと、同作では漫画の大事な台詞がいくつか省かれていることに気付くだろう。

ただ、シーン全体の印象はまるで変わらない。言うまでもなく漫画と映画は違う文法を持っている。生身の俳優が演じる場合「口に出さない方がむしろ原作のニュアンスに近づく」というケースも少なくない。そういった繊細な判断においても、同作は多くの漫画原作ものとは一線を画している。