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トム・ヒドルストンがインタビューで明かす死生観。絶望の時代になぜ希望を語るのか

2026.5.8

#MOVIE

もしや、世界の終わりはすぐそこまで来ているのではないか。日々緊迫する世界情勢、いつまでも終わらないどころか混迷を極める戦争と紛争、現実社会に飽き足らずオンラインでも対立を深める人々――。

映画『サンキュー、チャック』(原題:The Life of Chuck)は、稀代のストーリーテラーたちが、そんな時代に贈ってくれた「希望のしるし」と言えるのかもしれない。

未曾有の自然災害が地球を襲い、あらゆる通信手段が絶たれ、いよいよ人類最後の瞬間が迫るなか、街頭やテレビ、ラジオに謎の広告が突然現れた。

「チャールズ・クランツに感謝します。素晴らしい39年間に、ありがとう、チャック」

カメラに向かって微笑む男・チャックとは何者なのか、そして感謝の意味とは? 大スケールの「終末劇」が、登場人物たちのささやかな会話を通して解き明かされた先には、思いがけず優しいサプライズが待っている。

タイトルロールのチャック役は、『アベンジャーズ』シリーズのロキ役などで知られるトム・ヒドルストン。本作の脚本を一読し、「僕が長年信じてきたことや、俳優になった理由を表現しているような映画だ」と出演を快諾したという。

脚本への深い洞察に裏打ちされた、確かな演技力で知られる名優が、映画に込められたメッセージと役づくりのアプローチを語ってくれた。

※本記事には映画の内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。

謎めいた物語に「宇宙」が広がる

原作は『IT / イット』シリーズで知られる巨匠スティーヴン・キング。ホラーの巨匠として知られるが、原作小説『チャックの数奇な人生(The Life of Chuck)』は『ショーシャンクの空に』(1994年)や『グリーンマイル』(1999年)などにも通じる優しく切ない一編だ。

監督は『ドクター・スリープ』(2019年)などでキング作品の映画化を手がけてきたマイク・フラナガン。2020年、コロナ禍の「本当に世界が終わりそうな感覚があった」さなかに原作を読んで心をつかまれ、「あの時代にふさわしく、現在や20年後にも必要な物語」だと確信して映画化を決めたという。

―脚本を読み、チャックという人物をどう演じようと考えましたか?

ヒドルストン:まずは何よりも、スティーヴン・キングとマイク・フラナガンが伝えようとしている、深い洞察に満ちたメッセージを理解したいと思いました。

人の魂には、それぞれの宇宙が広がっていて、そこには現実の絆もあれば、心の中にだけある大切な繋がりも息づいています。愛する人たちとの分かち合った記憶、好きな音楽や文学、芸術……そして、そこには希望や夢だけじゃなく、喪失感や痛みもしっかりと刻み込まれているんです。

チャックは、僕たちと何も変わらない、平凡な人生を送るごく普通の男です。でも、だからこそ彼もまたかけがえのない唯一無二の人間です。人生の広がり、複雑さなど、僕たち「一人ひとり」の生そのものを映し出しているような気がします。どんな人生も尊くて、儚い。だからこそ、愛する人たちと味わう喜びも、苦い経験も、そのすべてを同じように等しく祝福すること。それこそが、この映画のメッセージではないかと受け止めています。

トム・ヒドルストン(Tom Hiddleston)
1981 年、イギリス、ロンドン生まれ。『マイティ・ソー』の主人公ソーの弟ロキ役で爆発的な人気を獲得、ロキとして『アベンジャーズ』シリーズでも活躍する。ロキを主人公とした TV シリーズ「ロキ」では、製作総指揮も務める。2026 年末に公開予定の最新作『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』にも出演する。その他の主な出演作は、スティーヴン・スピルバーグ監督の『戦火の馬』、『ミッドナイト・イン・パリ』、ジム・ジャームッシュ監督の『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』、ギレルモ・デル・トロ監督の『クリムゾン・ピーク』、『アイ・ソー・ザ・ライト』、『ハイ・ライズ』、ゴールデン・グローブ賞を受賞し、エミー賞にノミネートされた「ナイト・マネジャー」、『キングコング:髑髏島の巨神』など。

劇中では、ヒドルストンを含む4人の俳優が「チャック」という存在を演じている。ヒドルストンが演じるのはその中年期で、フラナガン監督が「最も重要なシーンのひとつ」と呼ぶダンスシーンを演じるため、撮影前から6週間におよぶ特訓を積んだ。

―チャックを演じるうえで、もっとも大切にしていたことは?

ヒドルストン:僕が演じたチャックは、グレーのスーツにネクタイを締めた、いかにもおとなしそうな風貌の会計士です。ところが、会議に向かう途中、ストリートで演奏しているドラマーの前を通りかかると、突然ブリーフケースを置き、衝動に身を任せて踊り出してしまう。

それは誰かに言われたり、強制されるようなものではなく、心の底から湧き上がる純粋な喜びの表現なんです。だからこそ、この映画における自分の最大の役割は「踊ること」だと、最初から確信していました。

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