2022年11月、下北沢「鈴なり横丁」の一角にオープンした「tonlist」。こじんまりとしたカフェの佇まいでありながら、その音響と選曲は本格的と評判だ。
音楽評論家・柳樂光隆が、その魅力を紐解く。連載「グッド・ミュージックに出会う場所」、第4回。
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薄暗い小劇場の横丁に輝く、ホットドッグのネオン
この店もSNSにたまたま流れてきて見つけた記憶がある。店内の雰囲気が素敵だったのと、なにより選んでいるレコードが良かったのでグーグルマップに保存しておいた。ホットドッグが売りだというのも目を引いた理由だったかもしれない。
初めて店に伺ってすぐに気に入ってからはもう何度も足を運んでいる。今では下北沢に行くと、とりあえず寄る場所になっているし、海外から来たミュージシャンの友達を連れて行ったこともある。ディスクユニオンに寄った後だったり、たいてい中途半端な時間に行くので、コーヒーとホットドッグの手軽さもちょうどいいのだ。
tonlistは、ディスクユニオンの入り口からも見える鈴なり横丁を入ってすぐのところにある。鈴なり横丁はアンダーグラウンド / サブカルチャー感も漂う激渋いスペースだが、その入り口脇に唐突に現れるこじんまりとしたカフェは違和感があるくらいに明るくてさわやかだ。
店主の宇野雄哉さん曰く、ここはもともと劇場の事務所だった空間で、事務所が移転してからは倉庫として使われていたそう。カフェをオープンするための物件を探していた時に、たまたま知り合いだったザ・スズナリの関係者からこのスペースの存在を聞き、借りることにしたのだとか。「もともと飲食店だった場所ではないので、ゼロどころかマイナスの状態から工事をして、今の状態にしたんです」と聞いて、その特別な立地や内装にも納得がいった。