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あなたにとってのBialystocks

Bialystocksの日本語詞は「ヤバい、全部が」 小林私が綴る、音での初対面

2024.12.2

Bialystocks『Songs for the Cryptids』

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甫木元空と菊池剛からなるバンドBialystocks(ビアリストックス)の3rdアルバム『Songs for the Cryptids』のリリースに際した短期連載。Bialystocksの音楽に心を盗まれた3人に、本人に向けた手紙を綴ってもらった。

1人目は、シンガーソングライターの小林私。小林は2024年7月に自身の楽曲“スパゲティ”でBialystocksの菊池剛をアレンジャーに迎えるなど、共に作品を作る音楽仲間であり、大ファン。そんな小林が語る、Bialystocksに心を射止められた馴れ初め話をこっそりと覗いてみよう。

小林私(こばやし わたし)
1999年1月18日、東京都あきる野市生まれのシンガーソングライター。多摩美術大学在学時に音楽活動を本格的に開始。自身のYouTubeチャンネルでオリジナル曲やカバー曲を配信し注目を集め、チャンネル登録者数は現在16万人を超えている。2023年4月からキングレコード内のレーベル・HEROIC LINEの所属となり、同年6月にメジャー第1弾となる3rdアルバム『象形に裁つ』をリリース。2024年8月にはアニメタイアップ曲を含む4thアルバム『中点を臨む』を発表した。

「天に近い場所からの眼差し」で描かれた日本語詞との出会い

舗道のはしに押し込められた落葉も見慣れたこの頃、いかがお過ごしでしょうか。

誰それとの出会いを思い返すのは案外難しいものですが、我々の出会いは幸運にも調べれば出てきます。

2022年8月24日大阪。

互いの顔を見ることはまさしく出会いですが、こと音楽家との出会いは耳であったりするものです。行きしなの新幹線で1stアルバム『ビアリストックス』を聴いたのが出会いでした。

なかでも“I Don’t Have a Pen”。

ヤバい、全部が。

俺、日本語詞そのものがめちゃくちゃ好きで、現代文だけやたら得意な卑怯者の目をしたクラスメイトが皆さんの学校にもいたと思うんですけど、申し遅れました、その成れの果てです。

冒頭から凄い。

<今どこらへんを飛んでいるのか>

誰しもの歌詞を鑑賞するとき、当然1行目の1言目が一番分からない状態にあるわけで、そんな矢先にこの歌詞。作者と鑑賞者の間で明確な道標を示すのでなく、共に靄のなかに入る構造なのだ。

<雲の切れ間から見える看板は今にも飛びそうで>

じゃあ今俺達ってどこにいるの!? 看板が目に入る眼差しを考えるときに「雲」はまず出てこない。奇抜じゃないのに変、取り合わせとして完璧。

鳥みたいな視点なんだよな。飛行機からはためく名前までは分からない、地面からでは雲の切れ間には見えない。例えば山だとか、或いは神だとか、天に近い場所からの眼差しがここにあるわけです。

<いくら横にスライドさせても景色は変わらない>

ヤベー。ここまでは霊峰を思わせるような空気感から打って変わってデジタルが醸し出される。

車窓からの景色をトリミングして眺めてもこの感想にはならない気がしていて、大いなるものが地球を地球儀みたく回して遊び飽きたくらいのスケール感、もしくは超ミクロに風景を捉えたのか。少なくともヒトがヒトのなかで得られる視点とは異なるわけです。

そこからの<貴様は何事もなかったかのような夕暮れだけ残して>。

痺れる~。「貴様」が聴こえてきたときにドキッとする~。この突然吐き捨てるようなニュアンスが、俗っぽく例えるなら魔王の悪行に対する勇者、自然だとか、少なからず尋常でないものに相対している空気が作られています。

「どういう度量衡で生きてたらこのイメージが描けるんだ」

文字数が足らなすぎるんで割愛しつつ。

一番好きなのは1番から2番の眼差しの展開です。全部の行凄い。<水には記憶が~>とかヤバい。

展開だけに話を絞ると、<体に潜む水>が<川に記憶をはきだし たれながし 海深く深く沈んでく>その記憶をすくいあげた<クジラがピュッと 潮吹くムードに 空は虹をかけるのかな?>

すっご。

1番で語られた主観、その内側にある水が川から海に流れて沈む。俺は渓流育ちなんで川といえば上から下に流れるもんです。

天(あるいは山)、川、海とどんどん位置が下へと向かっていくと。それをクジラが掬って潮となり虹になる。上から下に向かう眼差しが一気にまた上に戻るんです。

なにより「ムード」が凄すぎる。吹かれた潮が太陽光にプリズムで、とかじゃあない。「ムード」に「空は」です。空に自由意志があって、ファンタジックなのに絵本的ではない。どういう度量衡で生きてたらこのイメージが描けるんだ。

……封筒に便箋を入れるイメージと言付かっていたのですが、そうなっていますか?

ぷっくりしたキラキラのシールが貼ってあると想定してもらえればこの上なく助かります。

続きを書くには余白もなさそうです。

この手紙が届く頃は一層厳しい寒さになっているでしょうか。

生意気ながら、お体にお気をつけて、ますますのご活躍をお祈り申し上げます。

小林私

Bialystocks『Songs for the Cryptids』ジャケット(各社音楽サービスで聴く)

Bialystocks『Songs for the Cryptids』

2024年10月2日(水)発売
■[CD+Blu-ray] PCCA-06324 / 5,500円(税込)
■[CD ONLY] PCCA-06325/ 3,300円(税込)

<CD>(全10曲)
1.空も飛べない
2.Kids
3.近頃
4.憧れの人生
5.虹
6.聞かせて
7.Mirror
8.頬杖
9.幸せのまわり道
10.Branches

<Blu-ray>
Bialystocks 2nd Tour 2023 – EX THEATER ROPPONGI
1.Nevermore
2.コーラ・バナナ・ミュージック
3.花束
4.またたき
5.Emptyman
6.Over Now
7.ただで太った人生
8.差し色
9.朝靄
10.All Too Soon
11.灯台
12.フーテン
13.あくびのカーブ
14.Winter
15.Thank You
16.頬杖
17.I Don’t Have a Pen
18.Branches
19.Upon You
20.光のあと
21.日々の手触り
22.雨宿り

小林私『中点を臨む』

発売日:2024年8月16日発売
品番:NKCD-10510
価格:
通常盤 3,300円(税込)

<収録曲>
1.空に標結う
2.私小林(produced by Mega Shinnosuke)
3.秋晴れ
4.落日
5.冷たい酸素
6.スパゲティ
7.加速
8.鱗角

配信リンク:https://kobawatashi.lnk.to/ChutenwoNozomu

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