FRISKが新たなチャレンジを始める社会人や学生たちを応援するプロジェクト「#あの頃のジブンに届けたいコトバ」とラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコラボレーションコーナー「FRISK DEAR ME」。
3日目に登場したのは、日本のフォークロックバンドROTH BART BARONの三船雅也さん。2023年より東京とドイツ・ベルリンの二拠点で活動する三船さんに、不登校だった高校時代や不安でもがいていた20代前半を振り返りながら書いた自分への手紙をもとに、今の自分につながっていることや音楽をつくる意義などについて伺いました。
※NiEWでは、番組では放送されなかった内容も含めて記事化しています
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不登校だった高校時代は一番濃厚だった
タカノ(MC):手紙のタイトルの「なんでもない君」というのは、何歳頃のご自分なんですか?
三船:音楽をやり始めて、音楽にどんどん引っ張られるようになったときが大学を出た23~24歳ぐらいだったと思うんですけど、すごく不安になりながら演奏していて。10代後半から20代前半まで、漠然と先に広がる何かを掴もうと、すごくもがいていたので、そのときの自分に言葉を書くならどうだろうと考えながら、手紙を書いてみました。
Celeina(MC):手紙の冒頭、読ませていただきます。
なんでもない君へ
やあ元気かい?君は相変わらずこの世界でたった1人で戦って、理不尽に振り回され、未知の何かに怯え、それでもまだ何かを諦めずひと握りの希望をその手に生きていることだろう。その君のあきらめない意固地で透き通った心のおかげで今の僕がある。それに本当に感謝しています。
手紙の序文。三船雅也(ROTH BART BARON)直筆の手紙全文は4月11日(木)から下北沢BONUS TRACKで開催されるFRISK『あの頃のジブンに届けたいコトバ展』で展示される(詳細はこちら)
Celeina:「なんでもない君」という状態の三船さんがすごい不安の中にいるというか。漠然としたものに怯える感覚って、私も同じ年齢ぐらいのときに感じていたので、共感することがたくさんありました。三船さん、高校時代にあまり学校に行かれなかった時期があったと伺っているんですが。
三船:最初の8ヶ月ぐらいで辞めちゃって。不登校児というか。今でいう鬱病なんだと思うんですけど、電車に乗れなくなったり、頑張って途中まで行くんですけど難しくて帰ってきちゃったり。音楽や映画をレンタル屋さんで借りて、ずっと家でインプットだけしていた時期が2年ぐらいありましたね。
タカノ:その頃の日々は、今のご自分に繋がっていますか?
三船:繋がってますね。みんなが高校で勉強している中、自分の興味あることをあれだけインプットできた時間って、今思うと、一番濃厚だったと思うし。スポンジのように色々なことを吸収していたから、自分の中では人生の中で大きいインプットのシーズンだったなと、今は思いますけどね。
タカノ:そして、「今の僕にあって、君にないものは”勇気”だけだ」とありますけれども、一歩を踏み出したのはいつ頃だったんですか?
ただ、今の僕にあって、君にないものは”勇気”だけだ。ただ目を閉じて息を深く吸って、そして飛び込むんだ。広い世界はずっと前から君を待っている。僕らはその世界の秘密を、音楽の魔法を、生きている間に少しでも解き明かさなくちゃいけないんだ。
三船雅也(ROTH BART BARON)の手紙抜粋(「#あの頃のジブンに届けたいコトバ」presented by FRISK より)
三船:明確に「よし、今だ」というシフトがあったかというと、そうじゃなくて。自分が音楽を作り始めて、1桁の人たちの前で演奏していたのが、みんなが助けてくれたり励ましてくれたり、だんだんその輪が大きくなっていったときに、みんなで踏み出せるようになった感じがして。その積み重ねが今の自分を作ってくれたと今は思いますけど、当時はわからなかったです。自分が良いなと思う曲を書けたことも一歩だと思うし、音楽を通して特別な人と会えたことも一歩だと思うし。そういうのは本当に小さい積み重ねだった気がします。確実な一歩というより、小さいのがいっぱいあって、巨大な一歩になった感じがしますね。
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みんなが「良い」と言うものより、自分だけしか知らないものを発見するのが好き
Celeina:お手紙の冒頭で、私たちを取り巻く環境での騒音みたいなことに触れていらっしゃるじゃないですか。そこから、自分の幸せにフォーカスすることも大事なんだよと言ってくれている気がして。その視点の転換は、いつ頃からされるようになったんですか? 昔からずっとそう思われたんですか?
世の中が、もうこの世界は終わりだ、経済的にもダメでこの国はダメな国だと毎日のように言っているでしょう?それは殆ど嘘だ。ただみんなの気を引きたくて調子の良いことを言っているだけなんだ。クラスにも悲しい言葉をいっぱい使ってみんなの気をひきたがる子がいたでしょう?あれを大人になってもやってる寂しい連中が沢山いるんだ。君はそんなものに耳を貸す必要は無い。
三船雅也(ROTH BART BARON)の手紙抜粋(「#あの頃のジブンに届けたいコトバ」presented by FRISK より)
三船:昔からだと思います。世界中の人が「これ良いよね」って言うものより、自分だけしか知らない小さい「何か楽しいよね」ってことを発見することが好きなタイプだったというか。だから、周りで流行っているものとかあまり興味なくて。いつも「こっちの方が面白くない?」って、気づいたらみんなと違う方向に行って、「三船、どこ行った?」みたいな感じ(笑)。そういうキャラだったから、小さいときから、目線はあまり変わってないとは思うんですけど。
明確に俯瞰してそれをやり始めたというよりは、ズレてるなと思ったんですよ。世の中の構造や全体的な流れとかに、良いとされるものの過大評価とか、悪いとされるものの過小評価みたいなものがたくさんあって。そこに合わせて生きていくのは難しいなと思ったときに、そのズレみたいなのを楽しんでみようというか。そのズレを埋めて繋ぐ作業として、音楽とか何かを作るようになってきた感じがしますね。
タカノ:自分の感性を信頼するって、誰にとってもすごい大事なことですよね。僕もお手紙の中で「君は特別だ、君が世界そのもので、この世界から君を守ってくれるのは君しかいない」って一節が大好きで。過去の自分を受容できる人って、他の人にも優しくできるじゃないですか。なので、すごく大事な考え方だなと思いました。多くの人に読んでほしい。
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心を開いて広い世界を見ること
Celeina:三船さんがお手紙の中から一つ、「あの頃のジブン」に伝えたい言葉を選ぶとしたら、どうでしょう。
三船:なんだろう……。「やりたいように自由にやってごらん。ただ心を開くことだけを忘れないで」じゃないですか。シンプルですけど、タイムマシーンがあって、知らないおじさんが来て、言われて嬉しいことって何だろうと思って書いたんで。多分、当時の僕は「うるさいな」って蹴飛ばすんだと思うんですけど(笑)。それぐらいが楽しいかなと思って。
これだけは覚えておいてくれ、”僕は君を絶対に裏切ることはない”。君の未来は僕が良いものにかならず変えてみせるから、君はやりたいように自由にやってごらん。ただ心を開くことだけを忘れないで。そしていつか僕を驚かせてくれ、未来で待っているよ。
三船雅也(ROTH BART BARON)の手紙抜粋(「#あの頃のジブンに届けたいコトバ」presented by FRISK より)
タカノ:実は、未来の三船さんだったんですよね。映画化決定でございます(笑)。
三船:ただ、心を開かないと見えないことがあまりにも多すぎるから。若いときは知らないことにすぐ怯えたりするし、自分が信じるものを根拠なく信じすぎる傾向があるし。それが、若さの楽しさだったりするんですけど。心を開くことだけを常に心の片隅に覚えておくと、いろんなことを素直に受け入れられて、どんどん心が広がっていく。その感覚が自分はすごい好きなので、それかなって今ちょっと思いました。
タカノ:そんな三船さん、時を経て、たくさんの作品を作られてきましたけれども、あの頃のご自分に贈りたい曲はありますか。
三船:これ、すごい難しかったんですけど、この楽曲があったからこそ色々なことが開けて、1曲の力ってすごいんだなと思い知らせてくれた曲だったんで、この曲を選ぼうと思いました。タイトルは“極彩|IGL(S)”です。
タカノ:美しい曲です。本当にあの頃の三船さんにも聴いて欲しいですね。未来の三船さんが、こんな曲を作るんだよって。
Celeina:それでは最後に、当時の三船さんと同じように進路や人生の岐路に立つ皆さんへのメッセージをお願いできますか。
三船:僕なんかがあれですけど、世界は広いので、広い世界を見てください。今、半径何キロでついつい生きてしまいがちですけど、自分が動くと半径何キロがめっちゃ広がるんで。日本は大きいけど、日本以外の世界も見て、そこから帰ってきたら、絶対に心が豊かになると思います。
Celeina:ベルリンでも活動されてらっしゃる三船さんだからこそのお言葉ですね。ありがとうございました。
「#あの頃のジブンに届けたいコトバ」presented by FRISK
新たな一歩やチャレンジを前向きに踏み出すことを応援するFRISK「#あの頃のジブンに届けたいコトバ」では、11組のアーティストやタレント、クリエイターが「あの頃」の自分に宛てた手紙を執筆。手紙の内容について、CINRA、J-WAVE、me and you、ナタリー、NiEW、QJWebでインタビューやトークをお届け。直筆の手紙全文は4月11日(木)から下北沢BONUS TRACKで開催されるFRISK『あの頃のジブンに届けたいコトバ展』で展示される(詳細はこちら)。
『あの頃のジブンに届けたいコトバ展』
第一線で活躍する11組の「あの頃の自分に届けたいコトバ」。悩みを抱えていたかつての自分に書いた直筆の手紙を展示。この春、新生活を迎えるすべての人へ贈ります。
会場:下北沢・BONUS TRACK GALLERY(東京都世田谷区代田2-36-12)
会期:2024年4月11日(木)〜17日(水)11:00〜20:00(全日程共通)※営業時間は変更になる場合がございます。
参加アーティスト:尾崎世界観(クリープハイプ)、アユニ・D、ぼる塾(田辺智加、酒寄希望、あんり、きりやはるか)、SIRUP、imase、めがね、児玉雨子、TENDRE、長塚健斗(WONK)、Aile The Shota、三船雅也(ROTH BART BARON)
主催:NiEW 後援:FRISK
■アユニ・Dさん、児玉雨子さん×めがねさん登壇のスペシャルトークショーも実施!
展示に加え、本プロジェクトにメッセージを寄せていただいたアユニ・Dさん、児玉雨子さん×めがねさんに登壇いただき、ご自身が何者でもないフレッシャーだった頃を振り返りながら、新生活における悩みや迷いとの向き合い方、気持ちを前向きにする方法などについてコトバを贈るトークショーを開催します。
場所:BONUS TRACK LOUNGE(東京都世田谷区代田2-36-15 BONUS TRACK 中央棟テナント2F)
日時:
「児玉雨子さん×めがねさんトークショー」 4月11日(木)19:30~20:30(19:00開場)
「アユニ・Dさんトークショー」 4月14日(日)14:00~15:00(13:30開場)
会場の席数に限りがございますので、参加をご希望の方は下記リンクよりお申し込みをお願いいたします。抽選の上、当選者のみご連絡を差し上げます(メールにてご連絡を差し上げますので、「@niew.jp」をドメイン指定受信に設定いただくようお願いします)。
→詳細はNiEWの特設ページをご確認ください
三船雅也(みふね まさや)
東京生まれ。音楽家、写真家。2008年にROTH BART BARON を結成。現在は活動の拠点をドイツ・ベルリンと東京の2箇所とし、2023年には2度目の『FUJI ROCK FESTIVAL』にも出演。2021年には、アイナ・ジ・エンドとの2人組アーティスト・A_oによる“BLUE SOULS”がポカリスエットのCMをきっかけに話題に。2022年は、ベルリン国際映画祭でアムネスティ国際映画賞を受賞した映画『マイスモールランド』の劇伴音楽と主題歌を手掛けた。2023年10月に8枚目のアルバム『8』をリリース。2024年の夏、8月4日には LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)にて主催の単独公演「BEAR NIGHT 5」を開催。
https://www.rothbartbaron.com/