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ごはんだけじゃない。ドラマ『孤独のグルメ』は土地、店、人の魅力を映し出す

2026.6.19

#MOVIE

©テレビ東京
©テレビ東京

連続ドラマとしては2022年10月に放送されたSeason10以来、約3年半ぶりとなった『孤独のグルメ Season11』(テレ東系)がひとまずの最終話を迎える。

主人公・井之頭五郎(松重豊)が1人で幸せそうに食事をする。このシンプルなドラマは、日本のみならず海外でも人気を博し、「孤食」を「独りで食べる飯」ではなく、「独りで自由気ままに食を楽しむ至福の時間」と再定義し、食文化の概念まで変えてしまった。

最近では、大晦日スペシャルが毎年の恒例となっていた本作だが、毎週、新しい街や店に出会える幸福感は連続ドラマならでは。Season1から約14年を経た今回も、上飯田町や蓮田市、横芝光町など、よく知られた街でも観光地でもない絶妙な土地との出会いが待っていた。

そんな『孤独のグルメ』Season11について、ドラマ・映画とジャンルを横断して執筆するライター藤原奈緒がレビューする。

※本記事にはドラマの内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。

世界からも愛されるグルメドキュメンタリードラマの金字塔

井之頭五郎(松重豊)が連続ドラマに帰って来た©テレビ東京
井之頭五郎(松重豊)が連続ドラマに帰って来た©テレビ東京

『孤独のグルメ』Season11がいよいよ最終話である。久住昌之原作・谷口ジロー作画の同名コミック(扶桑社)を原作としたドラマも、2012年のスタートからなんと14年。2025年には主演を務め続ける松重豊が自ら監督・脚本も手がけた『劇映画  孤独のグルメ』が公開された。韓国でドラマ賞を獲得するなど、日本だけでなく世界からも愛されるグルメドキュメンタリードラマの金字塔は、シーズンを経るごとに、ますます進化を重ねている。本稿では、14年間、一貫したスタイルを磨き続けてきた『孤独のグルメ』の魅力を探ってみたい。

今回もワクワクさせられる、井之頭五郎の「大人の“食”の大冒険」

五郎の「大人の“食”の大冒険」を生み出したバス待ち©テレビ東京
五郎の「大人の“食”の大冒険」を生み出したバス待ち©テレビ東京

第5話「神奈川県横浜市上飯田町のブンティットヌングとチャージョー」の終盤、ベトナム料理店「タン ハー」で「思わぬ海外旅行気分」を味わい、満足して店を出た井之頭五郎(松重豊)は、腕時計を見てからバス停へと向かう。バスに乗った彼が、うつらうつら居眠りをするところでドラマは終わる。それがなんとも心に残った。

この回で五郎は元々、ビニールハウスで野菜を育てる親子(苅田裕介、小木茂光)との商談を終えた後、バスに乗ってそのまま帰るつもりだった。しかし、バス停で目当てのバスの到着が1時間後であると判明し、待ちきれず付近の店を探し、辿りついたのがこの店だった。バスを待つ1時間という、限られた時間の中で行われる「大人の“食”の大冒険」の充実を、これほどまで魅力的に表現したものが他にあるだろうか。『孤独のグルメ』はいつも、五郎が食べる美味しそうなご飯とともに(今回もベトナム料理が実に美味しそうだった!)、未知の土地での「1人外食」のワクワクを私たちにありありと伝えてくれる。

「ブンティットヌング」を食べる五郎©テレビ東京
「ブンティットヌング」を食べる五郎©テレビ東京

五郎は、異国情緒溢れる店の雰囲気込みで、「ブンティットヌング」(ベトナム風和え麺)など初めて尽くしの味を楽しむ。そして、店のママ(内田慈)と談笑する、常連なのだろうベトナム語を話す人々の日常を想像して店を後にする。その果てに、遊び疲れたようにバスで眠るのだ。なんと幸せなことだろうと感動すると共に、視聴者もまた、その「冒険」をやってみたくて仕方なくなる。現実に多くの「孤独のグルメ」を生み出す力も、このドラマは持ち合わせている。

仕事パート=街の紹介パートのリアリティ

会社員・伊藤美紀(福地桃子)に作品を案内してもらう五郎©テレビ東京
会社員・伊藤美紀(福地桃子)に作品を案内してもらう五郎©テレビ東京

つまり『孤独のグルメ』は、「食」のドラマであると同時に、「旅」のドラマなのだ。視聴者は本作を通して、五郎が訪れる、知らない街の、地元の人々に愛される店と出会える。輸入雑貨商を営む五郎が、商品を届けに行ったり、仕入れに行ったりする先での出来事を描いた「仕事パート」とも言える本作の導入部分は、五郎の「腹が減る」までのお約束というだけではなく、街の紹介パートにもなっている。

例えば、団地の中にある共同アトリエで木彫アートをしている会社員・伊藤美紀(福地桃子)に作品を案内してもらうところから始まる第9話「茨城県取手市のレバステーキ定食」は、その導入だけで「アートのまち」としても知られる取手市のユニークさを伝えている。第2話「東京都港区西麻布のタンドリーチキンとマトン・マサラ」では、商談相手である電気店の主人・和賀義和(金田明夫)の人情味溢れる「街のでんきやさん」ぶりや、仕事を終えて帰ろうとする五郎が目にする、街の人々が集い談笑している姿を通して、スノッブなイメージがつきまとう西麻布に、普通の人たちのリアルな日々の暮らしがあることを映し出す。

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