Original Loveは2026年にメジャーデビュー35周年を迎える。11月にはキャリア初となる日本武道館での公演を控えるなか、突如意外なコラボレーション作品がリリースされた。それが韓国のインディーバンド、CADEJO(カデホ)とのコラボ作『From a South Island』だ。
CADEJOはソウルを拠点に活動する3人組。ジャズやソウル、ファンク、ダブをしなやかに横断するそのグルーヴが近年日本でも注目を集めている。Original LoveとCADEJOは2024年に韓国・済州島で開催された『Stepping Stone Festival』に出演。互いのパフォーマンスに衝撃を受け、今回のコラボレーションに至ったのだという。
理想とするグルーヴを追い求めてきた両者は、なぜ世代や国籍を超えて意気投合することができたのだろうか。両者を結びつけているものとは何なのだろうか。5月22日(金)には韓国有数のジャズフェスティバル『Seoul Jazz Festival』にOriginal Love & CADEJOとして出演することになっており、4月12日にはDiner OPPA-LA(神奈川県藤沢市)で行われたCADEJOのライブに田島貴男が特別出演した。田島とCADEJOのイ・テフンの対話は、凄まじい盛り上がりとなったその日のライブのことから始まった。
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左から:キム・ジェホ(ベース)、イ・テフン(ギター / ボーカル)、田島貴男、キム・ダビン(ドラム)
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「韓国にはシティポップ専門のレコードバーがいくつもあって、Original Loveがかかっています」(テフン)
─Diner OPPA-LAでのライブ、私も伺ったのですが、本当に素晴らしかったです。あの日のライブ、田島さんはいかがでしたか?
田島:いやー、楽しかった! 僕は参加した4曲で汗びっしょりになりましたし、CADEJOのライブも楽しませていただきました。あと、『From a South Island』の曲を初めてライブの場でやれたのも嬉しかったね。やっとできた、と。
─会場の盛り上がりも凄かったですよね。
田島:そうそう。自分でもあんなに熱くなるとは思わなかったね。
─テフンさんいかがですか。
テフン:CADEJOとしても集中力高いライブをできたと思います。何よりも田島さんが出てくれたことがいまだに信じられないんですよ。
田島:いやいや! これからいっぱい出るんだから(笑)。

─ところで、田島さんが初めて韓国を訪れたのはいつごろになるんでしょうか。
田島:ずいぶん前に旅行でソウルに行ったことがあるんですけど、ライブで行ったのはCADEJOと出会った2024年の『Stepping Stone Festival』が初めてだったんですよ。そこで韓国のいろんなバンドを観て、なかでもCADEJOのライブに驚いてしまって。こういうクールな音楽をやってるバンドが韓国にいるんだとびっくりしました。
─それまで韓国のインディーシーンの音楽はあまり意識して聴いていなかった?
田島:そうですね。ただ、有名なバンドは知ってました。HYUKOHとかSilica Gelとか。Say Sue Meも東京でライブを観ましたね。あと、テフンに教えてもらったシンガーソングライター、誰だっけ?
テフン:キム・サウォルですか?
田島:そうそう、キム・サウォル。彼女のアルバムも大好きでした。
─ここ数年、韓国ではOriginal Loveの”接吻”がリバイバルヒットしているそうですね。1990年代から韓国で活動されているDJ / ギタリストの長谷川陽平さんに聞いたところ、DJで”接吻”をかけると大合唱になるそうです。
田島:マジですか? DJで?
─そうみたいですね。そういう話ってご存知でした?
田島:いやー、知らなかったですね。ただ、『Stepping Stone Festival』で”接吻”をやったときも確かに合唱になったし、他の曲もみんな歌ってくれたんですよ。しかも日本語で。非常に驚きましたね。なんで俺の曲を知ってるの? って。
テフン:韓国にはシティポップ専門のレコードバーがいくつもあって、僕もよく呑みに行くんですけど、確かにそういう店ではOriginal Loveがかかっていますね。それぐらいみんなOriginal Loveのことを意識しているんだと思いますよ。
─田島さんはInstagramに『Stepping Stone Festival』のライブ動画をアップされていましたが、すごい盛り上がりでしたよね。
田島:あのときのライブは「ひとりソウルショウ」という弾き語りのスタイルでやったんですけど、お客さんがドーンと盛り上がってくれてね。ああいったスタイルでライブをやると思っていなかったのかもしれない。
テフン:僕も驚きましたよ。ギター1本なのにジェイムス・ブラウンみたいだし(笑)。
田島:ひとりジェイムス・ブラウンみたいなショウだったよね(笑)。”接吻”がリバイバルヒットしていたという背景もあったのかもしれないけど、『Stepping Stone Festival』で観てくれたお客さんについては、あくまでも僕のパフォーマンスを観て盛り上がってくれたんだと思いますね。
─テフンさんは田島さんのライブを観てどう思いました?
テフン:わっ、本物だ! と思いました(笑)。
田島:(笑)。
テフン:ソウルやブルースを演奏する人はソウルにもよくいますが、あれほどまでに圧倒的なライブを、しかもたったひとりでやるライブは初めて観ました。しかも、あれだけのエネルギーで、完成度の高い音楽を演奏していることに本当に驚きました。少なくとも僕はそんなライブをほとんど観たことがなかった。ちょっと信じられないようなライブでした。

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「非常に変態的なギターだと思いますね。テフンはストレンジギタリストです(笑)」(田島)
─田島さんはCADEJOのライブを観て、具体的にはどのような部分に驚いたのでしょうか。
田島:どう説明したらいいんだろうな……ファンキーで洗練されているし、ソウルフルでエネルギッシュでね。とにかくクールですよ。そういう音楽、日本でもあまり聴いたことがない。
音楽的にもいろいろなものから影響を受けていますよね。サイケデリックミュージックでもあり、ジャズに影響されている部分もある。昔のThe Metersみたいにファンキーなところもあるし、今のネオソウルみたいなムードもある。それを3人でやってることにも驚きましたね。メンバー3人とも技術があるし、テフンのギターにもオリジナリティーがある。あまり聴いたことがないギターだと思いました。
─ギターのプレイに特徴がある?
田島:そうですね。一緒に演奏してみて、なおさらそう感じました。ジャズのアンサンブルに影響されてるんだろうけど、変わったコードばかり使ってるんですよ。非常に変態的なギターだと思いますね。テフンはストレンジギタリストです(笑)。
─テフンさん自身はコードに対してはどのような意識を持っているんですか。
テフン:決まった形のコードの握り方を何とかして避けたいんですよ。それで変な握り方になってしまうんです。
田島:そうそう、ものすごく変な押さえ方をするんですよね。ジャズギタリストがやる握り方とかコードの使い方に近いのかもしれない。ロックやソウルのギタリストはあまりやらないですね。
テフン:そうかもしれないですね。実際、ジャズのギタリストからは影響を受けてますし。同じことを繰り返したくないんです。あと、メロディーのための演奏をすることを踏まえると、コードの使い方もちょっと変わってくるんですよね。
田島:あのギターはちゃんとコピーしようと思ったら大変なことになりますよ。すごく難しいんです、CADEJOの曲は。

─CADEJOのグルーヴについてはいかがですか。田島さんもまた、Original Loveの活動を通じて理想とするグルーヴを探求してきたと思うんですが。
田島:「理想とするグルーヴを探求してきた」という感じではないんじゃないかな。アメリカのブラックミュージックの世界ではジェイムス・ブラウンやスライ・ストーン、ジョージ・クリントンが、1990年代にはディアンジェロが新たなリズムのアプローチを作り出していったわけで、世界中のミュージシャンがグルーヴに対してどうアプローチするべきか考えてきたと思うんですね。グルーヴについて考えてきたのは俺だけじゃないわけで。というか、元々グルーヴは沢山の偉大なミュージシャンたちが色々なルールを作り上げて今も続いているわけで、僕もそれにほんのちょっとは参加しているのかもしれないけれど、今も勉強中というかね。
─なるほど。
田島:ただ、CADEJOのアプローチはやっぱりおもしろいし、3人のリズムは非常に素晴らしいと思います。一緒にセッションしてみて感じたんだけど、日本人のリズム感とも違うなと思いますね。あえて言うと、イギリス人のグルーヴに近い。オーガニックというか。
─そこはおもしろいポイントですね。具体的に言うと、どのようなところがイギリス的なんでしょうか。
田島:うーん、何だろうね? イギリスの音楽のある種のマニアックな部分と似てる感じがするんだよな。ちょっとヨーロピアンで、スタイリッシュな感覚があるというか。CADEJOにかぎらず、韓国の音楽にもそういう感覚を感じるものがあるし、デザインもイギリスっぽい感じがする。
─テフンさんは今の話を聞いて、どう思われました?
テフン:僕は正反対のことを考えていました。日本の音楽のほうが繊細で、イギリスとかヨーロッパに近いんじゃないかと。韓国のほうが荒っぽい気がするんですよね。
─おもしろいですね。お互いのほうに洗練されたものを感じるという。
田島:そうだね。あとさ、テフンたちと話すようになってからわかったんだけど、好きな音楽が結構似てるんですよ。音楽の話をすると、ツーカーで合っちゃう。ソウルミュージックとかジャズ、それも新しいジャズも含めてね。テフンはジョン・マクラフリンやThe Meters、アル・グリーンが好きだったり。
そんなふうにツーカーでできるミュージシャン、日本でもそんなに多くないんですけど、テフンたちとは話が早い。そこは今回作品を作るうえでも非常にやりやすかったですね。CADEJOの中に入って演奏するのは本当に気持ちいいんです。I feel goodです!