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崎山蒼志と北村蕗。互いにリスペクトする同い年の2人、初対面で意気投合するまで

2026.5.8

#MUSIC

北村蕗と崎山蒼志。現在23歳、同学年のふたりは己の感性に導かれるがままソロアーティストとしてのキャリアを自由に推し進めている。北村は山形でピアノを、崎山は静岡でギターをそれぞれ弾きこなし、若手SSWとして耳目を集めてきた。さらに拠点を東京に移してからエレクトロニカに傾倒し、身体性にフォーカスした楽曲やライブを意識するなど、根底ではどこかシンクロしているような印象さえ受ける。

今回は北村が5月9日(土)に恵比寿LIQUIDROOMで開催するフリーワンマンライブ『Don’t MIDI me』に合わせて、本人たっての希望で崎山との対談を実施。この日が初対面だったふたりは、崎山の最新作である『good life, good people』の話題から生活と歌の距離感やルーツに紐づいた記憶など、お互いの良き理解者として議論を深めていった。共通点もあれば相違点もある、そんな丁寧かつ朗らかな会話を覗き見してほしい。

同い年で意識すること8年間。お互いの印象

─今回の対談は、北村さんが5月にLIQUIDROOMで開催するワンマンライブにあわせて、「対談してみたい方はいらっしゃいますか?」と伺ったところ、崎山さんの名前が挙がったことがきっかけで実現したんです。

北村:そうなんです、お願いします……。

崎山:こちらこそ、とても嬉しいです……。

北村:私は山形にいる頃から崎山さんを認識していたんですけど、3年前にInstagramでフォローしていただいて。それが印象的だったんですけど、なんだかんだ今日が初対面なんです。

崎山:その時は「梅井美咲さんがヤバい」っていうのを今のバンドメンバーの冨樫マコトくん(Ba)とか高橋直希くん(Dr)から聞いて、流れで知ったんだと思います。あと下北沢のバーに行った時に話題に挙がっていて、それで調べてハマったんです。ピアノの前で歌っている動画を見ながら「どういう人なんだろう?」って気になっていました。

─まだ正式な音源が発表されていない時期だったんですね。

崎山:そうです。その後に梅井さんとの“amaranthus”がリリースされた当時にライターのimdkmさんが絶賛していて、僕もめっちゃハマりました。バスの中でずっと聴いていました。有機的な風景が広がるというか……こういうのやってみたいなって。それに、歌がうますぎる。

北村:えー、嬉しい(笑)。ありがとうございます。

─北村さんが崎山さんを最初に知ったきっかけは何ですか?

北村:最初にABEMAの番組で崎山さんが世に出てきた時に「同い年だ!」ってビックリして(笑)。自分もライブハウスで弾き語りの活動を始めていて、山形に同世代で趣味の合うアーティストがあまりいない中で、崎山さんの存在をインターネットを通じて知ったんです。

北村蕗(きたむら ふき)
2023年3月に初の配信シングル“amaranthus feat. 梅井美咲”をリリースし、7月に『FUJI ROCK FES’ 23』の「ROOKIE A GO-GO」に出演。ダンスミュージック、ジャズ、フォーク、エレクトロニカなど、様々なジャンルを横断するサウンドで注目を集める。2024年7月には、2年連続となる『FUJI ROCK FESTIVAL’24』への出演を果たす。2025年3月には『SXSW 2025』に出演。11月26日に1stアルバム『Spira1oop』をリリース。12月6日には代官山UNITにてワンマンライブ『vivid:Y』を開催。冨田ラボのメンバーとしての活動に加え、Tomgggとのコラボレーション、梅井美咲とのユニット「°pbdb」、kuyurimi名義でDJ活動するなど、多面的なプロジェクトを並行して展開している。

─作品もコンスタントに追っていたんですか?

北村:そうです。“五月雨”はやっぱり好きですし、最近だとKabanaguさんとの“覚えていたのに”をアイルランドで聴いたのを覚えています(笑)。

崎山:そんな……カッコいい(笑)。

エレクトロニカへの影響と、それぞれの作品への影響

─北村さんは、崎山さん最新作の『good life, good people』を聴いてみていかがでしたか?

北村:今回、これまでのディスコグラフィを遡って聴く中で、崎山さんってアルバムの中でやりたいことのリストを作って、それにチェックマークをつけていくタイプなんじゃないかなって思ったんです。最近リリースされた『good life, good people』もそうで、今までのアルバムがあるからこそ作れた音がたくさん入っているような気がしました。

崎山:確かに、そうかもしれません。とにかくやりたいことがたくさんあって、その時のテンションでやってみるっていう作り方なんですよ。聴いてるものをプレイリストにして、それをやるっていうか。『good life, good people』では三上寛さんとか森田童子さんとかの1970年代のフォークだったり、その前に聴いていたPAS TASTAとかlilbesh ramkoさんとかの影響もあるんじゃないかなって思います。あとは岡村靖幸さんとか、ダンスミュージックっぽい要素も強いしハイパーな音楽だなって気づいてからハマりました。

崎山蒼志(さきやま そうし)
2002年生まれ静岡県浜松市出身のシンガーソングライター。2018年5月インターネット番組の出演をきっかけに注目を集め、翌年の夏には高校生にして大型フェスに多数出演。その後、人気TVアニメのエンディングテーマなど話題作を手がける中、2023年にリリースした“燈”は国内外で人気を博し、ストリーミング総再生数は1億回再生を突破!2026年4月15日には2年8か月ぶりのフルアルバム「good life, good people」をリリース。原口沙輔ら同世代のアーティストとの共作も話題を呼んでいる。現在、雑誌『ギター・マガジン』では「崎山蒼志の未知との遭遇」を連載中。独自の言語表現で文芸界からも注目を浴びている。

北村:私もその時々に聴いている音楽から影響されるタイプなんです。最近はダンスミュージックモードというか、ここ数年はエレクトロニカにハマっていて。

崎山:ですよね。ライブ映像でもエレクトロニカのセットというか、Floating Pointsとかからの影響も直に感じて……「ヤバ!」みたいな(笑)。ただ感嘆するだけです。

北村:いえいえ……。2025年のYouTube Music Weekendで崎山さんのライブ映像を見た時に、リズムマシンとギターでライブをしていたのがすごくカッコよくて。私もリズムマシンはよく使うんですけども、ギターのカッティングとテクノのループの相性の良さに崎山さんのライブから気付かされたんですよね。こんなことできるんだって、感動したんです。

崎山:意外と最近聴いているものは被ってるかもしれませんね。個人的には、北村さんのコード感が好きなんです。

北村:私も崎山さんの使うコードは気になっています。コードについては、崎山さんと私は違う思考回路なんじゃないかなって思うんです。崎山さんの楽曲は転調も多いし、声のレンジが広いから色んなところに移っていく印象で。私はメロディーの繋がりからコードを当てはめて、歌ってみた時の感触とかエモさに合わせて考えることが多いんですよね。

崎山:あぁ、なるほど。その違いが北村さんの生き物っぽい流れを生んでいる気がしていて、だから僕は憧れるんだと思います。

北村:それと、『good life, good people』ではハードなエレクトロニカからの影響が大きいような気がしていて。ギザギザして尖った音が多い印象なんですけど、私は丸い音を好みがちで。

─趣味が近いようで、細部では違う点もあると。

崎山:確かに。『good life, good people』は(原口)沙輔くんからの影響も大きかったんです。あと、ヒップホップのインダストリアルなビートがずっと好きで。クリッピングとかJPEGMAFIAとかに衝撃を受けて、不自然でバツバツしたちょっと痛い音が好きだったりするんです。

北村:あぁ、そうなんですね。私も新しいアルバム(『Spira1oop』)のリファレンスとしてTyler, The Creatorを聴いていたんですけど、結構バツバツしてるなって。

崎山:かなりバツバツですよね。僕もTyler, The Creatorからヒップホップにハマったんですよ。

上京前後の変化。生活を歌うことへの怖さと距離

─おふたりとも、同じようなタイミングで弾き語りではないスタイルへと傾倒していったような印象があります。ヒップホップやエレクトロニカを聴き始めたのはいつ頃ですか?

崎山:んー、3〜4年前とかですかね? 最初は自分がやる音楽とは全く別のものとして聴いていたんです、JPEGMAFIAの“Jesus Forgive Me, I Am a Thot”に衝撃を受けて。

北村:私もそのくらいの時期ですね、DTMを5年前に始めてから徐々に聴く音楽が変わっていったような気がします。

─北村さんは山形から、崎山さんは静岡から、それぞれ上京を経験しています。今から3〜4年前はちょうどそのタイミングですよね。

北村:崎山さんはいつから一人暮らしをしていたんですか?

崎山:僕は18歳とかですね、なので「まん防」(まん延防止等重点措置)のタイミングで大変だったんです。「なんで東京に出てきたんだろう?」って家で考えてましたね。だけどその後ライブハウスに行ったり友達と会うようになって、自分で買うものを考えて生活をする中で、今はちょっとずつ日常が歌詞に反映されるようになってきたんじゃないかと。

北村:わかります、『good life, good people』は生活感があるなって。「野菜とか、買うよな〜」って共感するというか(笑)。

崎山:4年くらい時間が経って、生活に馴染んできたからこそ歌詞に表れるようになったんだと思います。

北村:私は21歳で上京してきたんですけど、まだ音楽と生活が切り離されているような気がするんですよね。多分これから繋がるんじゃないかなって。

崎山:世界が切り離されたまま作っている人もいっぱいいますからね。僕は結果的に生活が近くなっただけで。例えば映画の『ナミビアの砂漠』を観て、「こんなに生活圏をハードに描いていいんだ」って感動したりして。そういう憧れから曲を作るんですよ。

北村:めっちゃいいですね、自分と真逆のものに憧れるのがすごい。『good life, good people』はプライベートな歌詞じゃないですか。逆に私は空想上のイメージとか、あとは子音や母音を意識したメロディー重視の歌になりがちなんです。

崎山:北村さんの曲は歌詞とメロディーの淀みがないというか、スルスルと導かれる感覚ですよね。

北村:そう、だからタイプが違うとは思うんですけど……まだ自分が本当に思ってることを出すのが怖かったり、自分をちょっと守りたい気持ちがあるどこかにあって。自分の生活と曲が繋がっていることは怖くないんですか?

崎山:前はもっと曖昧なイメージとして曲に入れてました。でも、強さは徐々に減っているかもしれません。元々何でも喋っちゃうタイプっていうか(笑)。自分を見せすぎちゃうんです。だから最近は創作と関係ないところでは、むしろストッパーをかけるようにしています。なんか危ないというか、すぐに懐を見せてしまうような気がしていて。

北村:あー、なるほど。私は別に何かを隠しているわけではないのに、どこかでブレーキがかかっているような感覚があります。人の話を聞くのがすごく好きなんですけど、本来はある程度自己開示をしたうえで相手の話を聞くほうがフェアだと思うんですよね。でもそのことに対する怖さがあって、だからこそ小賢しい質問ばっかり考えるようになるというか(笑)。

音楽もそうなんです、自分の気持ちとは遠いところにあるというか。やりたいこと自体は溢れているんですけど、それがどういう方向に向かうのかわからないんですよね。

それぞれの意外な音楽的ルーツ

崎山:北村さんはアイデアで溢れてますよね、曲によっては弦楽っぽいのもやっていたりしますし。それこそ色んなジャンルが好きなイメージなんですけど、ルーツって何ですか?

北村:矢野顕子さんです。中学生の時に弾き語りをやっていて、「こういう人になりたいな」って思って、そこから矢野さんが影響を受けたジャズとかも聴くようになりました。童謡をジャズのアレンジでやってたりしていて。

崎山:ヤバっ。

北村:童謡って素朴なイメージだと思うんですけど、素朴ゆえに色々な味付けができるというか。ただ、ジャズについては勉強するんじゃなくて、コード感とかメロディーとかを自分の中で蓄積して育てていきました。崎山さんは何を聴いていたんですか?

崎山:母親がビジュアル系バンドの大ファンで、9歳くらいまではビジュアル系ばっかり聴いていたんです。ギターを触ったきっかけもそうで、最初はギターという物体への憧れがすごかったんですよね。あと、架空のジャケットを描いてアルバムを妄想する……みたいな。

北村:あ、それに合わせて曲を作って。

崎山:いや、作らないんです。「どんな音楽なんだろうな〜」って考えるんです。

北村:へー。私も小学校の時に曲のタイトルだけ決めて……。

崎山:あれ、近いことやってる(笑)。

北村:(笑)。曲のタイトルだけ決めて、そのタイトルと歌詞のどっちが先なんだろうって考えてました。

崎山:深いテーマ。僕はタイトルと、あとはDVDとかの特典も考えてました(笑)。

─すごい妄想力(笑)。おふたりとも、子どもの頃から作品を作ることへの憧れはあったんですね。

北村:枠組みから先に考えてやりたいタイプなのかもしれません。例えば、いつかオーケストラと一緒に楽曲を作ってみたいんです。

崎山:めちゃめちゃ合いそう。

北村:いや、ただの妄想です(笑)。そういうガワへの憧れで近づいていくことが多いんですよね。今回のアルバムでカルテットへの曲を書いたのも憧れからですし、その好奇心から作品が出来ることも多いんです。

崎山:絶対良いと思います、観てみたい。

北村:Floating Pointsがオーケストラと一緒にやっていたじゃないですか。あと、Jeff Millsもリズムマシンとオーケストラを組み合わせたライブをしていて。憧れるんですよね。

─上京の前後から、おふたりはコラボレーションを通して積極的に近い世代のアーティストとコミュニケーションを取っていますよね。

北村:色んなタイプの人と東京で会って、そこで「自分ってこういう人間なんだな」っていうのに気づくことが多いんです。でもサウンドを通した上でのコミュニケーションって、最近会ってない人でも進めることはできるというか。音楽がゴールの時はコミュニケーションに悩まないんですよね、そのほうがスムーズだなって最近は思います。

崎山:ちょっと分かりますね。沙輔くんとセッションしている時もそういう感じです。

─音楽でコミュニケーションする方が上手くいくというか。ここで対談するよりもセッションする方が……。

北村:確かに!

崎山:ヤバい(笑)。めっちゃ上手くいくかも。誰かと一緒に歌詞を書いたことってあります?

北村:作詞に関してはないですね。梅井(美咲)ちゃんと°pbdb(キューピーキューディー)の曲を今作っているんですけど、2人が思っていることを話した様子をボイスメモに録って、そこから作ろうとしたんですよね。ただ、私が恥ずかしくて聞き返せていない(笑)。作詞ってどこかパーソナルな作業だと思うので、ちょっと難しいですよね。

https://open.spotify.com/intl-ja/album/36jFRsOgfu9axfNyKFyYHV?si=p0EvqGfuTv609cKCL6NXOA

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