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くるりのオリジナルメンバーが語る新作。「やりたいのは自分たちを現在地に置くこと」

2023.10.7

#MUSIC

『有吉の壁』『君たちはどう生きるか』と共通する『感覚は道標』の「不親切さ」

ー今の話の文脈で言うと、やはり“朝顔”も象徴的な曲だと思っていて。“ばらの花”のオマージュ的な側面があるので、だからこそ注意深くやる必要があるというか、ある種のチャレンジでもあったのかなと。

岸田:そうですね。まあリリックは全然違うタイプですし、メロディーの構成もちょっと違うんですけど、あの曲の要素を技としては使ってるから、それもあってちょっと苦労はしました。“ばらの花”はあまりによくできすぎている曲のひとつでもあるし、あるいはつくりが雑な曲でもあるから、丁寧にやることと、名曲を目指さないということはなんとなく考えて……「名曲を目指さない」と言うと「名曲にならなかった」みたいやけど、そういうわけではなくて、自分の中にある助平心みたいなのは一旦取り払って、リアルな方向性を目指したと言いますか。

“ばらの花”ってある意味誰が書いたかわからないような曲で、ファンタジー中のファンタジーやと思うんです。素朴やし、リアル風な風合いですけど、でもちょっとよくできすぎてる話でもあるから、“朝顔”は歌詞にしてももうちょっと人がつくった感じがする曲がいいかなって。

くるり“ばらの花” のミュージックビデオ

佐藤:自分は“朝顔”に対して“ばらの花”のオマージュみたいな意識は全然ないんですよ。演奏するときに臨む気持ちも全然違うし、コード進行が似てても、テンポや内容が全然違ったらオマージュとは全く思わないから。一個話が戻りますけど、“In Your Life“も映画を見て初めて腑に落ちたというか、そんな感覚もあって。だからどの曲にしても、「これがあるからこれがある」みたいに考えることは多分なかったと思います。

岸田:“朝顔”と“ばらの花”の音楽的な構造で言うと、まあまあ似たテンポではありますけど、同じ具材で同じ組み立て方をしてみましたっていうものにすぎないと思うんですよね。「18世紀の頃に使われてた意匠を使ってみました」みたいな、ファッションとかにおける、モチーフのアイデアでしかない。

もっと本質の部分を完コピしたら復元作業になりますけど、“ばらの花”はまだ生きてるわけで、模造品をつくっても仕方がない。むしろ同じ部品を使うのなら、目指すところとしては真逆をつくらないといけないし、あるいは別の角度からそれを見たものをつくらないといけないっていうのはあったと思います。

ー実際に完成した“朝顔”は当然“ばらの花”とは別物で、過去と接続しながらも、やはり重要なのは自分たちを現在地に置くことだというのを、“朝顔”という曲が表しているようにも思います。

岸田:今回のアルバムって、実はかなり不親切な作品やなと思っていて。今までくるりがやってたやり方としては、とにかくたくさんのマテリアルを立体的に組み込んだり、フラッシュアイデアの中で出てきた名前がついてないけど光ってるものを中心に組み立ててきたけど、今回そういうものとは全然違って。例えば、『有吉の壁』で芸人が電車に乗って、2秒で大喜利を考えないと電車に乗れない、みたいなのあるじゃないですか。そこにはコスプレ用の道具がいっぱい与えられてます。状況としては、わりとその状況に近いですよね。

ー緻密に練られたものではなく、瞬発力の勝負というか。

岸田:その状況だからこそ瞬発力が出るし、その分集中力が必要だし、もしかしたらその芸人の面白さが一番出る瞬間かもしれない。そうなったときに、やっぱり言わない、説明しないことが当たり前で、「ここからは想像です」っていうところの面白さって、芸人さんにとってすごく大事なことだと思うんです。全部テロップが出て、「こうでこうで、だから面白い」みたいなお笑いの逆にあるもの。ああいうのはその人がどれだけ面白さについて飢えているかどうかが大事だと僕は思うんですよ。

岸田:それは『有吉の壁』じゃなくてもそうで、例えば『君たちはどう生きるか』とかも、あれは主体的に、その人が自分の考え方とか自分の人生、自分の正義というものをそこに投影して、しっかり考えないと理解できない構造になっている。僕は今作はそっち寄りだと思うんです。受け手になってしまうと、何かよくわからない。もしかしたらこれは聴き手を試してるようなところもあるのかもしれない。

ーいまのお話は間違いなくこの作品の本質的な部分で、だからこそ『感覚は道標』というタイトルがついてる気もするし、もうちょっと言えば、今回参加した森さんがプレイヤーとして感覚的なタイプだということも大きく関係しているように思います。

岸田:うん、それはあるかもしれない。

ーそういう意味でもこのアルバムはやっぱり現在の3人じゃないと生まれなかったアルバムなのかなって。

岸田:もっくんは厳しい父親風でもある人で、そういうもっくんの……大物感って言うんですかね。それも作品に落とし込まれてるのかもしれないですね。

ー森さん、シンプルに今回一番気に入ってる曲を挙げてもらえますか?

森:本当に全曲素晴らしいと思ってるんですけど……今回一番最初に3人でやった曲が“世界はこのまま変わらない”で、トリクソンっていうドラム(ドイツのメーカーによるビンテージドラム)でツインドラムを入れたときにすごく感動して。あそこでひとつ、今回のレコーディングの道筋が見えたような感じがあったので、そういう意味ですごく好きです。でも本当に、全曲好きなんですけどね。

『くるりのえいが』

2023年10月13日(金)より全国劇場3週間限定公開&デジタル配信開始
出演 くるり 岸田繁 佐藤征史 森信行
音楽 くるり
主題歌 くるり「In Your Life」
オリジナルスコア 岸田繁
監督 佐渡岳利
プロデューサー 飯田雅裕
配給 KADOKAWA
企画 朝日新聞社
宣伝 ミラクルヴォイス
©️2023「くるりのえいが」Film Partners
オフィシャルサイト:qurulinoeiga.jp
公式 Twitter:@qurulinoeiga

京都音楽博覧会2023 in 梅小路公園

公演日:2023年10月8日(日)9日(祝月) 開場10:00 / 開演:12:00
会場:京都梅小路公園 芝生広場(〒600-8835 京都府京都市下京区観喜寺町56−3)
出演者:
DAY1:マカロニえんぴつ/中村佳穂/羊文学/ハナレグミ/槇原敬之/くるり
DAY2:Saucy Dog/坂本真綾/sumika/角野隼斗/Tigran Hamasyan “StandArt”/秦 基博/くるり
問い合わせ:キョードーインフォメーション TEL:0570-200-888 (平日・土曜 11:00〜18:00)
オフィシャルサイト:https://kyotoonpaku.net/2023/

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