『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノが監督し、ゼンデイヤが主演をつとめた映画『チャレンジャーズ』が、6月7日(金)より公開となる。
トレント・レズナー&アッティカス・ロスがスコアを手がけた大音量のエレクトロニックミュージックと、カエターノ・ヴェローゾが歌うある楽曲が印象的な本作を、音楽ディレクター / 評論家の柴崎祐二が論じる。「その選曲が、映画をつくる」第14回。
※本記事には映画本編の内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。
INDEX
テニスプレイヤーたちの三角関係の物語
ルカ・グァダニーノは、ある少年によるひと夏の情熱的な愛を描いた『君の名前で僕を呼んで』(2018年)や、「人喰い」の若者たちを主人公に据えた前作『ボーンズ アンド オール』(2023年)をはじめ、これまで一貫して様々な人間の抑えようない熱情のほとばしりに肉薄し、それを鮮烈な映像美とともにえぐり出してきた。今作『チャレンジャーズ』でもそうした主題を深く掘り下げているが、そのシャープさ、躍動感という面から言えば、おそらく過去作中で最も充実した成果をものにしている。
映画は、ゼンデイヤ演じる若き天才テニスプレイヤーのタシ・ダンカンと、彼女に恋焦がれる二人の男性プレーヤー=パトリック・ズワイグ(ジョシュ・オコナー)、アート・ドナルドソン(マイク・フェイスト)が約13年間に渡って繰り広げる三角関係を中心に展開する。
パトリックとアートは少年時代からの親友で、性格は正反対ながらもテニスへの情熱を元に固い絆で結ばれていた。ある日、そんな彼らの前に最高に「ホットな女性」が現れる。それが、学生テニスの世界で他を圧する強さを見せつける若きプレイヤー、タシだった。二人は即座にタシに魅了されるが、彼女は、翌日の試合で勝者となった方に自らの連絡先を教えるという賭けを提案する。結果はパトリックがアートを下し、パトリックとタシは恋人関係となる。
歴戦の覇者として将来を嘱望されるタシだが、パトリックとの破局的な喧嘩の直後に臨んだ試合で悲劇が起きる。アートが観戦する中、選手生命を断たざるをえない大怪我を追った彼女は、一旦は悲嘆にくれながらも、新たな人生を力強く模索していく。
数年後、アートと久々に再開した彼女は、一線から退いてコーチとしてのキャリアを歩みはじめていた。長年タシへの恋心を抱き続けていたアートは、彼女にパートナーになってほしいと申し出る。
それから更に数年後。一見すると幸福そうな家庭を築き、テニスの世界でも大成功を収めたようにみえるアートとタシ。かたやパトリックは放蕩生活を送り、選手としてのランキングも下げる一方であった。しかし、運命の悪戯によって三人はあるマッチの場で再び邂逅する。果たして、パトリックはアートとタシに一矢報いることができるのだろうか。それとも……。