12月18日(金)に公開される映画『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』の予告編とポスタービジュアルが解禁された。
同作は、マーベル・コミックス原作のキャラクターたちが同一の世界観でクロスオーバーする巨大な映画シリーズ「MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)」において、今後の展開を大きく揺るがす重要な一作。予告編によって、MCU版ドクター・ドゥームの人物像が少しずつ見え始めてきた。

ドクター・ドゥームは、1962年の『The Fantastic Four』#5で初登場した、マーベル・コミックスを代表するヴィラン(悪役)。これまで映画化された『ファンタスティック・フォー』シリーズでは天才科学者という側面が強調されてきたが、原作では科学だけでなく魔術にも精通した存在として描かれている。作品によってはヒーローと共闘することもあり、2001年の『The Amazing Spider-Man』#36では、「9.11同時多発テロ」後のニューヨークの変わり果てた姿を見て涙を流していたのも印象的であった。このように、彼は単純な悪役として語ることのできないキャラクターだ。
『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』において彼が魔術を使用することが判明していることや、公開されたポスタービジュアルで母親の肖像画を見つめる姿が描かれていることからも、同作では原作に近い設定が採用される可能性は高そうだ。彼が単純な悪役に収まらない理由は、まさにこの母親の存在にもある。
原作において、彼の母シンシア・フォン・ドゥームは悪魔メフィストとの契約に失敗し、魂を地獄へ奪われた。ドゥームは、そんな母を救うことを人生最大の目的としており、そのためなら世界征服さえ手段として利用するのだ。
母を救うという願いは正義であり、そのために世界を支配しようとする行為は悪でもある。この強烈な矛盾を抱えているからこそ、ドクター・ドゥームとは善悪を1つの価値観では測れないキャラクターなのである。そして、この「正義と悪の曖昧さ」は、現在のMCUそのものが抱えるテーマでもある。
『アベンジャーズ/エンドゲーム』では、ヒーローたちはタイムトラベルによって歴史を書き換え、多くの命を取り戻した。しかし『エターナルズ』では、サノスのスナップ(指パッチンで全宇宙の半分の生命を消し去った事件)は「そうなる運命だった」と語られており、本来あるべき歴史が改変されたとも受け取れる。

さらに『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』では、ザ・ブリップ(全宇宙の半分の生命が消滅した2018年から、ヒーローたちによって復活させられる2023年までの空白の5年間)で残された人々の社会の在り方は大きく変化し、作中の登場人物であるカーリ・モーゲンソウは「あの5年間こそ世界は1つだった」と主張した。救われた命がある一方で、残された人々がその5年間で築き上げた新しい人生や社会の形もまた、突然の復活劇によって崩壊してしまったのである。
加えて、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』ではスパイダーマンとドクター・ストレンジが、『ワンダヴィジョン』や『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』ではワンダの行動が、マルチバース(並行宇宙の境界が崩壊し、別の世界と混ざり合う事態)の危機を招いた。近年のMCUでは、悪役ではなくヒーロー自身の善意が世界を揺るがす構図が繰り返し描かれてきた。しかもその原因となっているのは、スナップで消えた者たちであることが多かった。こうした「ヒーローの正義の積み重ね」が歪みを生み、今作で描かれる宇宙同士の衝突「インカージョン」へとつながっていくのだろう。
予告編では、少なくとも3つの宇宙が互いに接近しており、その1つにはX-MENの世界が存在するとみられる。シャンチーやエレーナら「MCUのメイン宇宙(アース616)のヒーロー」と、ガンビットやミスティークら「別宇宙であるX-MENのキャラクター」が衝突する構図が示唆されているが、それは善悪の戦いではない。互いに自分たちの世界を守ろうとしているだけであり、X-MEN側から見れば、時間改変やマルチバースへの干渉を繰り返してきたアース616こそ、自分たちの宇宙を滅ぼそうとする侵略者にほかならない。
つまり、アース616のヒーローたちは、別の宇宙から見れば「世界を壊した悪」なのだ。だからこそ、ドクター・ドゥームは単なるヴィランではなく、「何を犠牲にしてでも守るべきものがある」という信念を持つ存在として、ヒーローたちに究極の選択を突き付けるのではないだろうか。
『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』で問われるのは、「ドクター・ドゥームは悪なのか」という問いではない。ヒーローたちの正義は本当に正しかったのか。それとも、別の宇宙から見れば彼らこそ世界を滅ぼす「悪」だったのか。ついにその問いへ真正面から向き合おうとしている。
映画『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』
■タイトル:『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』
■公開日:12 月 18 日(金) 日米同時公開
■配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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