ブルーエゴナクの舞台『変身』が1月17日(金)から19日(日)まで、東京・森下スタジオ C スタジオで上演される。
穴迫信一を中心に北九州を活動拠点とした劇団として、2012年に結成されたブルーエゴナク。現在は、北九州、京都、東京の3都市を拠点に、普遍的かつ革新的な演劇作品の創作をコンセプトに活動している。
フランツ・カフカの同名小説を舞台化した同作は、2024年6月に岩手県宮古市の高校鑑賞事業として制作され、初演された。同公演の構成 / 演出は穴迫が務め、出演者には小関鈴音、望月綾乃(ロロ)、青木裕基が名を連ねている。
また同作は、3月7日(金)から9日(日)まで、福岡・北九州のJ:COM 北九州芸術劇場 小劇場でも上演される。
カフカのドライな文体に、自身の作品の特徴のひとつである「エモーショナルを過剰に扇動しないニュートラルな視点」との高い親和性を感じたのが本作を選んだ理由のひとつです。一方で、ドライさの中に苛烈なほど残酷な現実をありありとしたリアリティをもって書き込むのがカフカの手つきであり、本公演ではその効力と必然にも導かれることになりそうです。『変身』は不条理文学と呼ばれていますが不条理なのは-人間が虫になる-というその一点のみであり、それ以外のすべては至極現実的に描かれていきます。登場人物だれひとりとって不可解な言動はありません。陥るべくして陥る。しかし、そこに異様さがあります。その現実の在り方のひとつとして、家族たちはその巨大な虫に兄の人格は当然残っていないものと考えているが、実際はグレーゴルにはちゃんと意識がある、という認識のズレが描かれます。そのズレは双方の「怯え」によって生まれ、やがて家族が抱える他者への畏怖、排除性、暴力性を浮き彫りにします。本公演では大きな改変を加えずクラシックな上演を目指しながら、ザムザが“甲虫になる”のではなく“甲虫として扱われる”という視点から、極めて現実的な進行の中で誰しもが決して他人事ではない「異質なものへの怯え」を描きます。
穴迫信一