2025年9月13日(土)から11月30日(日)まで、名古屋市の愛知芸術文化センターなどで開催される国際芸術祭『あいち2025』のテーマや第1弾参加アーティストなどが発表された。
2010年から開催されてきた『あいちトリエンナーレ』を引き継ぎ、2022年に新たな芸術祭としてスタートした『あいち』。2025年は芸術監督をアラブ首長国連邦出身のフール・アル・カシミが務め、愛知芸術文化センター、瀬戸市の愛知県陶磁美術館とまちなかを主な会場として開催することが発表されていた。
『あいち2025』はテーマを「灰と薔薇のあいまに」とし、第1弾参加アーティストとしてダラ・ナセル、小川待子、沖潤子、アドリアン・ビシャル・ロハスの4名を発表。フール・アル・カシミによるコンセプト文も公開されており、テーマがシリア出身の詩人・アドニスの詩集タイトル『A Time Between Ashes and Roses(英題)』から採られたことや芸術祭の解説などが述べられている。
『あいち2025』コンセプト(要約版)
国際芸術祭「あいち2025」は、詩人アドニスの詩集『灰と薔薇の間の時』から出発します。その心情とヴィジョンに共鳴するこの芸術祭は、現在の人間と環境の間の分断を照らし出す国家や領土といった目先の視点からではなく、地質学的な時間軸によって見えてくる未来の展望を提示します。本芸術祭は、極端な終末論と楽観論を中心に据えるのではなく、環境正義*の重なり合う複雑さを扱うことで、自らの責任に向き合い、不正義への加担を自覚するよう促しています。そしてまたこの芸術祭は、破壊と開花のあいまにある陰影のニュアンスや表現、人間と環境の複雑に絡み合った関係を強調します。
世界中から招くアーティストやコレクティブによる作品は、私たちが生きる環境について既に語られている、そしてまだ見ぬ物語を具現化してくれるでしょう。キュレーターの使命とアーティストの作品は、この芸術祭の地域性を掘り下げ、陶磁器や「せともの」の生産に触発された環境の物語を掘り起こします。こうした産業は地域の誇りの源であり、人間と環境の関係の新しく実験的なモデルを模索する本芸術祭の枠組みを支えています。愛知の産業史において、陶磁器生産によって灰のように黒く染まった空は、環境の汚染や破壊よりもむしろ繁栄を意味していました。こうした地場産業や地域遺産は、人間と環境の複雑に絡み合った関係について、ニュアンスに富んだ思考への道を開いてくれるのでしょうか。「灰と薔薇のあいまに」とは、当然視されてきた位置づけやヒエラルキーが解きほぐされるよう、幅を持ち中間にある状態を引き受けること、そのような横断的なあり方なのです。
国際芸術祭「あいち2025」芸術監督
フール・アル・カシミ
*環境正義:出自や所得の多寡にかかわらず公平に安全な環境で暮らす権利を持つこと。
コンセプト全文:https://aichitriennale.jp/outline/theme.html
また、学芸統括や、各分野のキュレーター / キュレトリアル・アドバイザー、『あいち 2025』の事業展開についても同時に発表された。
国際芸術祭「あいち 2025」開催概要
テーマ:A Time Between Ashes and Roses
灰と薔薇のあいまに
芸術監督:Hoor Al Qasimi/フール・アル・カシミ
会期:2025年9月13日(土)~11月30日(日)[79 日間]
主な会場:愛知芸術文化センター/愛知県陶磁美術館/瀬戸市のまちなか
主催:国際芸術祭「あいち」組織委員会
(会長 大林 剛郎(株式会社大林組取締役会長 兼 取締役会議長))
学芸統括:飯田志保子(キュレーター)
キュレーター(現代美術):入澤聖明(愛知県陶磁美術館学芸員)
キュレーター(パフォーミングアーツ):中村茜(パフォーミングアーツ・プロデューサー)
キュレーター(ラーニング):辻琢磨(建築家)
キュレトリアルアドバイザー(現代美術):石倉敏明(人類学者/秋田公立美術大学アーツ&ルーツ専攻准教授)、趙純恵(福岡アジア美術館学芸員)
本文中画像提供元:【国際芸術祭「あいち」組織委員会事務局 】