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『ロイヤルホテル』監督と考えるハラスメントの実状。「No」と言えるようになるには

2024.7.26

#MOVIE

#me too問題の中心人物であったアメリカの映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインを思わせるハラスメント問題を切実に提起した映画『アシスタント』。同作はキティ・グリーン監督の劇映画デビュー作ながら、一躍脚光を浴びた。

キティ・グリーン監督はドキュメンタリー映画出身というキャリアを活かして、実際にあった「ある問題」のリサーチを重ねてから物語を撮り、議論されるべき話題を机上に上げる。7月26日(金)に公開となる映画『ロイヤルホテル』は、オーストラリアに実在するパブで起こったハラスメントが題材。パブで働くバックパッカー2人が、集う客から不快な言動を受ける様が、非常にリアリスティックな女性目線で描かれるフェミニズムムービーだ。誰も助けてくれない息苦しい状況が続くなかで起こる、挑発的なラスト。「議論が巻き起こってほしい」と語った監督は、どのような思いで本作を製作したのか話を聞いた。

「ハラスメントかもしれないよね?」という状況について話し合えれば、事態を防げるかもしれない

─前作『アシスタント』は、映画会社に勤める新人アシスタントの一日を通して、ハラスメントや性的虐待を蔓延させているシステム構造を描いていました。新作『ロイヤルホテル』でも、閉鎖的な男性社会の中で、ハラスメント被害を受けまくったふたりの女性を描いていて、国境を越えた世界の話とは思えないほど身近に感じました。

キティ:ありがとうございます。どこにでもある酒場を舞台にしながらも、女性視点で描いたことで、広範囲な議論を交わすことができる作品になったと思います。

キティ・グリーン(Kitty Green)
1984 年、オーストラリア・メルボルン出身の映画監督、脚本家。2013年、ウクライナのフェミニズム抗議団体「FEMEN」に焦点を当てたドキュメンタリー『Ukraine Is Not a Brothel(原題)』でデビュー。第 70 回ヴェネチア国際映画祭のほか、世界 50 以上の映画祭で上映された。2015 年、短編ドキュメンタリー『The Face of Ukraine: Casting Oksana Baiul(原題)』では、第 31 回サンダンス映画祭で短編映画審査賞を受賞。2017 年、Netflix オリジナルのドキュメンタリー作品『ジョンベネ殺害事件の謎』を手掛け、第 7 回 AACTA 賞にて最優秀長編ドキュメンタリー賞を受賞。職場におけるハラスメント問題を題材にした『アシスタント』(19)で初の劇映画作品を作り上げた。『ロイヤルホテル』は第 71回サン・セバスティアン国際映画祭で最優作品賞にノミネート。

─前作に続いて本作も「ハラスメント」をテーマにされたのは、どうしてなのでしょうか?

キティ:共通して興味があるのは、ハラスメントが最終的には性的暴力につながってしまう過程です。まだ、それ自体は性的暴力ではないけれど、不快な感情を抱いたり、最悪レイプや暴力につながってしまったりする危険性をはらんでいる行動が中にはありますよね。

─度が過ぎる言動を見かけたことはあります。

キティ:ハラスメントが起きてしまう手前の、もう少し早い段階で声を挙げることができていたら本人が傷つく前に事態を防げていたかもしれない、と思うことが多々あります。話す余地もなく裁くのではなく、「ハラスメントかもしれないよね?」という状況について、みんなで話すことが、もっとひどくなる状況を阻止する方法の一つではないかと思い、再び描きました。

─それぞれが、ハラスメントについて知識があるだけでなく、もっと互いに会話されるべきではないかということでしょうか?

キティ:私は、そういう会話をすべきだと思いますし、議論をする上でフィクション映画はいいフックになります。たとえば、フィクション映画だとクローズアップカメラを使って、その人物の行動や目線など、ある部分をクローズアップして映し出すことができます。そうすると、意に反する行動が相手にどれだけ安全ではない心象を与えるのか、客観的によくわかると思うんです。

─スクリーンを通して、相手がどう思っているのか客観視できる。

キティ:そうです。私は映画監督として、そういうツールを持っていることを自覚しています。ある行動が相手にどういう感情を抱かせるのか、カメラで映し出すことで、それぞれが映画を通じて考えたことを議論できることが、私にとっての理想です。

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