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現代美術家の菅野歩美は、リサーチをもとに独自の渋谷をゲームの世界で表現した

2024.12.26

#ART

グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。

11月6日は、ゲームライター・タナカハルカさんからの紹介で、現代美術家の菅野歩美さんが登場。制作の軸である「オルタナティヴなフォークロア」とはどういうものかについてや、作品の作り方などを伺いました。

「オルタナティヴなフォークロア」を映像インスタレーションで表現

Celeina(MC):菅野さんは現代美術家で、どんな土地にも存在する、その土地にまつわる物語や伝説、怪談といった「フォークロア」が、なぜ人々によって紡がれてきたのか、その背後にある歴史や個人の感情を想像することで生まれる「オルタナティヴなフォークロア」を映像インスタレーションで表現されています。

美大に進学された際は油絵を専攻されていて、その後こういったインスタレーションの形でも表現するようになっていったんですよね。まず、菅野さんが作られているのはどんな作品なのか、そして現在の作風に至った経緯や、「オルタナティヴなフォークロア」という言葉の意味を教えていただきたいです。

菅野:簡単に言ってしまえば、「オルタナティブな」というのは「あり得るかもしれないもう1つの」という意味で、「フォークロア」は「土地の物語」という意味になります。この言葉も造語なので、どんどん流動的に意味が変わっていて、現在においては「フォークロア」という言葉は、ネットミームとか、そういった人々の間で共有されている知識とか、広がっていったり伝承されていったりするもの全般を指す言葉でもあります。

渋谷の歴史や土地柄から着想を得た『明日のハロウィン都市』

タカノ(MC):なるほど。ご説明ありがとうございます。ちなみに、『明日のハロウィン都市』という作品が色々な賞を取られているんですよね。

菅野:そうですね。 去年作った作品なんですが、渋谷のハロウィンをテーマにした作品なんです。あり得るかもしれないもう1つの渋谷の形をゲームの世界で構築して、それを映像にしました。

タカノ:今実際に見ています。

Celeina:こちらの作品は、2024年に第29回学生CGコンテストでNEW CHITOSE GENIUS賞、学生対象アワードのCAF賞2023で最優秀賞を受賞されています。

Photo by Naohiro Ogawa

タカノ:「おそらく渋谷だったであろう」都市が映像内に映っていて、ゲームをプレイしているみたいな感覚になるんですけれども、水浸しになっているんですかね? ちょっとディストピア感のある悪夢の中をさまよっているゲームのようですね。

Celeina:フューチャー感も感じられますよね。

タカノ:これはどういうことなんでしょうか?

菅野:私自身が、渋谷という街に違和感を感じていて。というのも、渋谷は、ごちゃごちゃしたカルチャーがあるけれども、今もなお再開発でどんどんオーガナイズされていて、そういった意味で水と油みたいな街だなと思っているんです。そんな中で、渋谷で毎年盛り上がるハロウィンって、死者のお祭り、つまりゴーストのお祭りじゃないですか。

Celeina:歴史的にはそうですね。

菅野:でも今の渋谷というのは、そういったゴーストみたいな存在が住めない場所に変わっているなと思っています。渋谷の歴史を紐解いていくと、もともとは沼地だったのが、植物とかがどんどん排除されて、今のような住みやすい綺麗な街になっているんです。なので、ゲームの中ではもう1回古代っぽい雰囲気に戻して、街を水浸しにしてみたり、ゴーストみたいなものたちがウヨウヨ自由に歩き回る映像を作りました。植物ももうボーボーに生えちゃって、コントロールできないような世界になっています。

タカノさんが「ディストピアみたいだ」とおっしゃられたと思うんですけど、ディストピアっぽくもありつつ、ごちゃごちゃとしていて楽しげな雰囲気にもしています。丸山翔哉さんに音楽を作っていただいたんですが、「未来の渋谷ハロウィンで流れている音楽」をイメージして、明るい音楽をつけてもらいました。

Celeina:なるほど。つまり渋谷の歴史や、土地柄を知るところから作品を作る際の着想を得たのでしょうか。

菅野:そうですね。

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