グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。
3月12日は、小学館マンガワン編集部の千代田修平さんが登場。漫画編集者という仕事についてや、学生時代に没頭していた演劇への愛、注目しているインディーズバンドなどについて伺いました。
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漫画編集者になるに至ったルーツとは
Celeina(MC):千代田修平さんは1993 年生まれ。東京大学を卒業し、2017 年に小学館に入社。ビッグコミックスピリッツ編集部を経て、2020 年からマンガワン編集部に在籍。『チ。―地球の運動について―』『日本三國』『ようこそ!FACT(東京 S 区第二支部)へ』などを担当されています。現在漫画編集のお仕事をされているということで、ルーツを伺っていきたいなと思うんですけれども、ご両親の影響で小さい頃から漫画やゲームがお好きだったんですよね。
千代田:そうですね。
Celeina:どんな作品が印象に残っていますか?
千代田:幼少期にシンガポールに住んでいたんですけど、当時の日本の漫画というのはあんまり読めてなくて、両親が日本から持ってきていた漫画を読んでいました。ちょっと前のジャンプ、それこそ鳥山先生の『ドラゴンボール』とか、あと『るろうに剣心』『みどりのマキバオー』『スラムダンク』といった1990年代のジャンプを、一桁歳ぐらいの時はひたすら読んでいましたね。
タカノ(MC):千代田さんよりも世代がちょっと上になりますね。
千代田:僕は多分リアタイだと『NARUTO -ナルト- 』『BLEACH』『ONE PIECE』の世代なんですけど、その1つ上の世代のジャンプ漫画をもっぱら読んでいました。
タカノ:その頃から漫画に関わる仕事がしたいみたいな思いはあったんですか?
千代田:いや、さすがにその頃は漫画編集者という仕事が存在していることすら全然分かってなかったです。なんなら漫画家という存在がいることも意識できてなかったというか。
タカノ:いつ頃から漫画の世界に興味を持ち始めたんでしょうか?
千代田:僕は留年して大学5年生までいたんですけど、本当に最後の就活のタイミングで漫画編集者に興味を持ち始めました。そのくらい意識するのは遅かったですね。
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大学時代に熱中した演劇が漫画編集者を志すきっかけに
Celeina:大学時代は演劇に熱中されていたんだとか。
千代田:大学の5年間は演劇をめちゃめちゃやっていましたね。
Celeina:出る側ですか?
千代田:はい。最初は役者として始めたんですけど、途中で都度僕がいいなと思う人を集めて上演する、プロデュース劇団と呼ばれる小さい劇団を始めました。そこで脚本や演出も途中からやっていました。
タカノ:どんな内容の演劇だったんですか?
千代田:いわゆる小劇場演劇と呼ばれる、下北沢でやっているようなものを想像していただけるといいかもしれません。一番大きい規模でやった作品は、若者5、6人組の物語です。いたずら動画みたいなものをニコニコ動画にアップして、世間を驚かせてやろうという気持ちで始まったものが過激になっていって、それがテロリズムまで発展してしまうというお話でした。今思うと何か分かりづらいなとも思いますが、伝えたいことを込めながらやっていました。
タカノ:編集者よりも、作家寄りな感じもしますね。
Celeina:そのまま演劇の世界に入ろうとは思わなかったんですか?
千代田:一瞬考えました。ただ単純に、自分がずっと好きで物語を書き続けるということがあまりうまく想像できなかったのと、演劇の世界において、僕よりもずっと面白い作品を書かれる方が沢山いたので、僕は多分作家じゃないんだろうなと思いましたね。ただ、プロデュースするということ自体はすごく面白かったので、裏方というか、プロデューサーや編集のような仕事に就きたいなと思って、今の仕事をしています。
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漫画編集者の仕事は、漫画家と共に面白い作品を作って売ること
タカノ:改めてですが、漫画編集者とは具体的にどんな仕事をされているんですか?
千代田:簡単に言うと2つだけしか仕事がなくて、面白い漫画を漫画家さんと一緒に作るということと、その漫画を沢山売るということです。
面白い作品を漫画家さんと作るというのは、例えば「このキャラクターにはこいつと一緒にこういうことをやらせましょう」とか、「このキャラクターは、このタイミングで死んでしまってもいいんじゃないですか」とか、意外に物語の内容まで立ち入って作家さんと打ち合わせをします。おそらく皆さんが思っている以上に、物語自体も一緒に作り上げていくことができるんです。そうやって作られた面白い漫画をどう売るか、具体的には宣伝やフェア、デザインといったところまで考えます。作品の面白さのクオリティと売れ行きのクオリティの、どちらの責任も取るという立場の職業になります。
Celeina:その2つの立場を基本的に1人でやられるんですか?
千代田:そうですね。出版社内に宣伝部とか販売部とか、クロスメディアやアニメライツみたいな色々なエキスパートの部署があるので、その方々と一緒に組んで、先導するような立ち位置で売っていくという形です。
Celeina:めちゃめちゃ大事な役割ですね。
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漫画家・魚豊とは趣味の合う友達のような感覚で知り合った
タカノ:『チ。―地球の運動について―』や『ようこそ!FACT(東京 S 区第二支部)へ』は僕も全部読んでいて、面白くて最高なんですが、この2つも魚豊先生と千代田さんが相談しながら作っていったんでしょうか?
千代田:魚豊先生の場合は、ご自身の中に物語の骨格みたいなものがかなりしっかりとあったので、僕は「ここをこうした方が」とか「方向性変えた方が」というレベルではほとんど話していないです。各話の細かいところや、テーマについての雑談みたいなものの相手になったというぐらいなので、本当に魚豊先生の才能のおかげだなと思っています。打ち合わせを毎週重ねて、作り上げていった作品です。
タカノ:最初の出会いからビジネスパートナーのようになるまでの間に、友達みたいな期間があったんですよね?
千代田:魚豊先生は前作の『ひゃくえむ。』という漫画を講談社さんで描かれていたんですが、それがめちゃくちゃ面白くて。TwitterのDMを開放されていたので、一緒にやりたいですと連絡しました。半年ぐらい経ってからお会いした時には、まだ漫画の影も形もないみたいな状態だったんですが、好きなバンドの話になった時に、魚豊先生がamazarashiが好きだという情報を知って、僕もめちゃくちゃ好きですというお話しをしたりしました。
あと4〜5年くらい前なんですが、お互いPK Shampooというバンドが好きだという話で盛り上がりました。今でこそPK Shampooはめっちゃきているバンドなんですけど、当時はまだ聴いている人が少なかったので、「PK Shampooを知っている人に初めて出会いました。今度一緒にライブ行きましょうよ」みたいな感じで。最初は音楽とかも趣味が合う友達みたいな感じで知り合ったし、2回目に会った時はHave a Nice Day!のライブに一緒に行って、そのライブ終わりに近所の寿司屋で僕が朝まで当時の恋愛事情をひたすら話していました。
Celeina:もうお友達じゃないですか!
千代田:本当に初手でいきなり6時間ぐらい貴重な頭脳をお借りして、恋愛相談をしていました(笑)。かなり友達に近い感覚で知り合った作家さんでしたね。
タカノ:感性が合うとかって、1つの作品を作るパートナーとしてめちゃくちゃ大事なことですからね。
千代田:そうですね。やっぱり感性がずれていると、その価値観のすり合わせにすごい時間がかかったりします。これはかっこいいよね、いやそうですよね、みたいな感じで、スルスルと進んでいったのはすごくラッキーだったなと思います。
タカノ:先ほど音楽の話もちょっと出ましたけれども、1曲千代田さんに選曲していただいたので、曲紹介をお願いしていいでしょうか。
千代田:PK Shampooの”学生街全能幻想”という曲をお願いします。