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『しらぬひ』レビュー ままならなさを描く迫力。新海誠らを輩出したスタジオの最新作

2026.8.21

#MOVIE

新海誠監督作品をはじめ、数々の独創的なタイトルを世に送り出してきたコミックス・ウェーブ・フィルム。その最新作となる『しらぬひ』は、実写映像の分野からアニメーションへと転身した片野坂亮監督による、36分の短篇アニメーション作品だ。あのや花澤香菜が声優をつとめ、主題歌は青葉市子が担当している。

「本作は、決して万人に愛されるタイプのエンターテインメント作品ではない」と語るアニメライター前田久が、本作の異色な魅力を紐解く。

※本記事には映画本編の内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。

新海誠らが所属するコミックス・ウェーブ・フィルムの最新作

コミックス・ウェーブ・フィルムといえば、新海誠監督作品のイメージが強い。アニメ専門誌ではなく、一般向けの媒体に登場するときは、ほとんどがそうした扱いだろう。しかし、同社のフィルモグラフィーを見れば、実際は多様な作品を送り出してきたことがわかる(粟津順監督の『惑星大怪獣ネガドン』『プランゼット』や山本蒼美監督の『この男子、人魚ひろいました。』など)。

創業以来、一貫して若き才能に注目し、その作家性を後押ししながら、いわゆるアートアニメ的なものとは違う、尖ったテイストのオリジナル作品を多数手掛けてきた会社だ。そもそも新海誠監督にしても、2016年の『君の名は。』の大ヒット以降、宮崎駿監督と並ぶ大メジャー作家のような扱いになっているが、もともとは個人制作からスタートし、私的な動機に端を発する内省的な小品を作り上げる映像作家だった。客観的な目で同社を見れば、いわゆる商業アニメの世界に身を置きつつ、そのメインストリームからは適度に距離を保ってきた会社なのだと言えるだろう。

『しらぬひ』はそんなコミックス・ウェーブ・フィルムの最新作だ。36分の劇場用短篇作品で、監督は片野坂亮。1987年生まれ、福岡県出身。成安造形大学の映像クラスを専攻し、在学中から映像制作の現場に参加。大林宣彦監督の薫陶を受け、卒業後は京都を拠点にフリーランスの映像作家として活動。企業のプロモーション映像、テレビCM、実写映画などを制作してきたが、コロナ禍で創作活動に大きな転換を迫られ、アニメーションに活路を見出す。3年間の自主的な訓練を経て短篇を制作し、そこから森りょういち監督との出会いをきっかけに、コミックス・ウェーブ・フィルムで制作進行として商業アニメーションの作り方を学んだ。その経験を活かしつつ、『しらぬひ』でアニメを初監督した。

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