キャラクタービジネス業界を描いたポジティブラブコメディ『君の好きは無敵』(TBS系)が話題だ。
TBS系火曜夜10時からのドラマ枠「火曜ドラマ」の最新作は、松本若菜が『西園寺さんは家事をしない』以来の主演となり、2026年の顔と言ってもいいM!LK佐野勇斗とタッグを組んでいる。
脚本は『西園寺さんは家事をしない』の宮本武史による完全オリジナルストーリーで、株式会社サンリオが取材協力に入っている本作について、文筆家・折田侑駿がレビューする。
※本記事にはドラマの内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。
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ちぐはぐな男女コンビが「好き」を生み出すお仕事ドラマ

寝ても覚めても夢中になれるものがあるのは、いいことだ。「好き」の対象さえあれば、つらいことがあっても頑張れる。人によってこの対象はさまざまで、アウトドアや音楽などの趣味もあれば、アイドルやキャラクターなどの存在だったりもする。「推し活文化」が隆盛を極めているいま、特に後者に日々を支えられている人は少なくないだろう。
そんな私たちの「好き」が、どのようにして生まれているのか。その裏側を描くドラマが、現在放送中の火曜ドラマ『君の好きは無敵』である。
本作は、キャラクタービジネス業界を舞台にしたラブコメディだ。元は凄腕のコンサルタントだったキャリア女性・草壁杏奈(松本若菜)と、変人偏屈な訳ありのキャラクターデザイナー・瀬尾深月(佐野勇斗)がひょんなことから出会い、共に「最強にかわいいキャラクター」を生み出そうと、群雄割拠の業界で狼煙を上げることとなった。まだまだ珍しい「お仕事」にフォーカスした、ちぐはぐな男女のバディものである。
2人は同じ目的に向かって二人三脚で歩み始めたが、仕事一筋だった草壁はもともと「好き」がよく分からない人間であり、対する瀬尾は「かわいい」への想いは誰にも負けないものの、何かと不器用なキャラクター。衝突やすれ違いを繰り返し、物語の折り返し地点に立った第5話に、ようやく信頼しあう関係性となったところだ。

本作が放送されている「火曜ドラマ」では、こうしたちぐはぐな男女のバディものがいくつも世に放たれてきた。今回と同じく松本若菜が主演を務め、2024年のちょうどこの時期に放送された『西園寺さんは家事をしない』も松本と松村北斗がタッグを組んだし、2025年の話題作『じゃあ、あんたが作ってみろよ』も記憶に新しい。この2作でも、一見、いびつに思える組み合わせの男女が自分たちなりに手を取り合うことで、それぞれが自らの人生に向き合っていく様を描いてきた。
『君の好きは無敵』もこうした系譜に連なる作品だ。しかし、確かな違いも感じる。では、これまでと何が違うのか。それは推し活文化が身近になった現代の私たちにこそ、多くの気づきがある作品だということではないか。
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キャラクタービジネスのシビアな現実をポップに描く

そう、本作は勉強になるドラマなのだ。というのも、ハローキティやマイメロディなど、世界的人気キャラクターを生み出したあの株式会社サンリオが取材協力に入り、「好き」の誕生の背景を、物語をとおしてかなり赤裸々に伝えてくれているのだ。
人々に広く長く愛されるキャラクターは、当然ながら一朝一夕で生まれるものではない。「かわいい」は作れるが、それが人気を獲得し、売れるかはまた別の話。それがいかに困難で、途方もない道のりか、ここまでの物語の展開で明らかになってきた。
瀬尾の「かわいい」にかける想いは強く、キャラクターを生み出す才能もある。しかし「好き」を誕生させるには、そのキャラクターが社会に受容されなければならない。そこで腕を振るうのが、超大手の経営コンサル会社の第一線でバリバリ活躍した経験を持つ草壁の存在。私たちが愛するさまざまなキャラクターの誕生の背景にも、こうした才能の掛け算があったのだろう。

人々が何を求め、必要としているか。そこに作り手たちは何を差し出せるか。需要と供給のバランスに意識を向けながら、キャラクターが身を置く世界観も含めて構築していかなければならない。いくら作り手からの猛烈な「好き」があっても、それが受け手のニーズに合っていなければ成立しない。言い換えれば、需要と供給さえ合えば、そこにビジネスチャンスがあるということだ。
高い人気を持つキャラクターの背景には、徹底した分析があり、さまざまな思惑が交錯している。そして、私たちの無邪気な「好き」も、そうしたものの上に成り立っている。本作はかなりハイテンションでポップなテイストだが、キャラクタービジネスにおけるシビアな現実を丹念に描き重ねている点が、挑戦的で革新的だといえるだろう。