2026年6月5日、スーパー歌舞伎『もののけ姫』の製作発表会見が行われ、歌舞伎俳優の市川團子、中村壱太郎、市川中車、スタジオジブリの鈴木敏夫、演出の横内謙介、松竹の山根成之取締役副社長が登壇した。
猪神に呪いをかけられた少年アシタカ / シシ神を團子、山犬に育てられ「もののけ姫」と恐れられる美しい少女サンを壱太郎、猪神一族の最長老である乙事主を中車が演じる。7月3日から8月23日まで東京・新橋演舞場にて上演予定で、初日まで約1カ月と迫ったこの日、それぞれが作品にかける思いを熱く語った。
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大ヒット映画の裏話。「映画で時代劇は流行らない」と、方々から反対された映画
1997年の夏に公開され、それまでの日本映画の興行収入記録を塗り替える社会現象ともなった大ヒット作『もののけ姫』。当時のポスター、少女サンの力強い目と「生きろ。」というメッセージのインパクトは、今も記憶に新しい。2025年にはリマスター版や再上映などを経て今現在214億円まで記録を伸ばしている。原作 / 脚本 / 監督を宮﨑駿が手がけ、人間と自然、人間と神の壮絶な戦いと「共生への願い」が描きこまれた傑作はいまだに多くのファンを獲得し続けている。歌舞伎と大人気アニメとの融合は、夏休みに入った子どもたちの「初歌舞伎体験 / 初もののけ姫体験」にはもちろん、海外からの観光客にもアピールできるだろう。
鈴木:もののけ姫は「映画で時代劇は流行らない」と、いろんな方から反対された映画なんですね。それを一つひとつクリアして完成することができた。またそれが時を経て、歌舞伎の世界で再現できることに感動しています。今回宮﨑(駿)も「時代劇だよ、チャンバラなんだよ。これが歌舞伎になるのはごくごく自然な流れじゃないか」と言っていたことも付け加えてお伝えしておきます。
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1986年に始まった「スーパー歌舞伎」の歴史
ジブリ映画の歌舞伎化というと、新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』(2019年初演)がすでに誕生しており、古典演目と並んでも違和感がないほど、伝統的な型を盛り込んだ「歌舞伎化」が斬新な驚きを与えた。しかし今回は「スーパー歌舞伎」での上演という点に注目したい。
スーパー歌舞伎とは、三代目市川猿之助(二代目市川猿翁)によってつくられた壮大なエンターテインメントだ。コンセプトは「ストーリー(Story)、スピード(Speed)、スペクタクル(Spectacle)」で、宙乗り、早替り、立廻りを多く取り入れ、観客に飽きる間を与えないような畳み掛ける演出を特徴とする。その嚆矢は1986年に初演された伝説的な傑作『ヤマトタケル』で、以後猿翁のもとで『オグリ』『リューオー』『新・三国志』などの新作が作られてきた。アシタカを演じる團子は今作で、祖父猿翁のそうした魂を感じながら役を組み立て、一座力を合わせて新作を立ち上げることとなる。
團子:スーパー歌舞伎は、(2023年に亡くなった)祖父が命がけで創始したものでございます。祖父のライフワークだった活動であるスーパー歌舞伎という名前のもと、祖父のいない世界で初めて上演することに正直、怖さもありますが、しっかりと覚悟を持って、皆で力を合わせて、誠心誠意、舞台に向かっていきたいと思います。アシタカを演じる上で、アニメ版でアシタカを演じた声優、松田洋治さんのインタビューを読むと、「寡黙な人間である分、一つひとつの言動、その意味が持つ比重が大きい」とおっしゃっているんですね。僕もここを大切にしながら、彼がどのような動機で発言や行動をしていくのか、丁寧に演技の積み重ねをしていかないといけません。

團子:私が2年前に演じたスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』のヤマトタケルは王子という身分で、アシタカも村の王になるべき存在だったという点で似ており、呪われた運命を背負って腐らずに前を向いて進む点でも共通していると思います。ヤマトタケルを勤めた経験を生かして、アシタカに臨めるのはありがたいことです。