火曜ドラマ『未来のムスコ』(TBS系)もいよいよ最終回。
志田未来が約20年ぶりに主演として母親役を演じたことでも話題となった本作は、突然現れた未来の息子だと名乗る男の子と共に、その息子の父「まーくん」を探す物語だ。
最終回直前、ついに本当のまーくんが見つかったと思いきや、予定日になっても息子が生まれてこないという衝撃の展開が。
まーくん候補を演じた塩野瑛久、小瀧望、兵頭功海の演技も魅力的な本作について、前半を振り返った記事に続いて、毎クール必ず20本以上は視聴するドラマウォッチャー・明日菜子がレビューする。
※本記事にはドラマの内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。
INDEX
「だんない(=だいじょうぶ)」を下ろしていく物語

火曜ドラマ『未来のムスコ』は、がむしゃらに夢を追いかけつづけてきたアラサーの劇団員・未来(志田未来)のもとに、未来の息子を名乗る颯太(天野優)がある日突然やってくるところから始まった。幼い颯太の目的は、父親の「まーくん」と母親である未来を仲直りさせること。その願いを叶えて、颯太を無事に2036年の世界へ帰すため、未来たちはまーくん探しに奔走してきた。
筆者は本作を、未来が、口癖の「だんない」とともに一人で背負い続けてきたものを、少しずつ「下ろしていく」物語として見てきた。富山弁で「だいじょうぶ」を意味する「だんない」は、未来の亡き父・剛士(淵上泰史)から受け継いだ言葉でもある。あるときは周りを鼓舞するため、あるときは自分を奮い立たせるために、未来は「だんない」を口にしてきた。しかしその一方で、俳優の夢にも生活のための仕事にも全力で向き合う未来が、自分自身に言い聞かせる「だんない」は、ときに彼女を追い込む言葉のようにも聞こえた。特に颯太がやって来た当初は、その存在を所属する劇団のメンバーや家族・友人にも打ち明けることができなかった。身分証のない颯太は公的な支援を受けることもできない。社会から孤立する未来は、まったく「だんない」ではなかったのである。
だが、未来のワンオペ状態は徐々に解消されていく。最初に異変に気づいたのは、親友の沙織(西野七瀬)だった。それから、未来が所属する劇団「アルバトロス」の座長・将生(塩野瑛久)、颯太が通う保育園の保育士・優太(小瀧望)、劇団の後輩・真(兵頭功海)というまーくん候補の3人をはじめ、アルバトロスの他メンバー、さらには疎遠になっていた母・直美(神野三鈴)までも巻き込んで、みんなで颯太を見守るようになってゆく。
INDEX
子育てを支え合う新たなかたちの提示

家族という枠組みを飛び出し、社会全体で子どもを育てることは、近年のTBSドラマでも繰り返し描かれてきたモチーフだ。たとえば2025年の『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』や『フェイクマミー』、さらに『西園寺さんは家事をしない』(2024年)や『18/40~ふたりなら夢も恋も~』(2023年)なども当てはまる。
これらの作品では、血縁のない第三者が育児に携わる様子が描かれてきたのだが、同居したり、日常生活に深く関わったりと、家族関係ではないものの、ほぼ家族のような状況になるケースが多かった。その点、『未来のムスコ』における第三者の育児への関わり方は、どこかカジュアルだ。未来に演技の仕事が舞い込んだ際には、劇団員たちが日替わりでシフトを組み、颯太のお迎えに行ったり、一緒にご飯を食べたりする。そうした場面は新鮮で、また違った子育てのかたちを提示しているように感じた。未来にとってのアルバトロスのようなコミュニティを築ける人は、現実では決して多くないかもしれない。それでも本作は、子育てを支え合う新たな選択肢の存在を、さりげなく示しているように見えるのだ。
INDEX
夢に育児に奮闘する未来を支える「小さな相棒」

颯太によって激変した未来の日常において、最も大変だったことは何だろう。決して裕福とは言えない暮らしのなかで、さらに子どもが一人増えるという現実的な問題もある。だがそれ以上にハードなのは、何の準備も知識もないまま、突然、一児の母にならざるを得なかったことではないだろうか。たいていは、子どもを授かってからの十月十日といわれる期間のうちに、親になる準備を整えていくものだろう。あるいは子どもが生まれて初めて、親としての自覚が芽生えていくかもしれない。そして子どもの成長につれて、親自身も育ってゆく。
だが未来は、その猶予もないまま、ある日突然、「母親」としての振る舞いを求められることになった。いわば、親としてのスタート地点に立つ準備すら出来ていないまま、子育ての只中に放り込まれたのだ。しかもそれを約一年間も続けてきたのだから、その大変さは想像を超えているだろう。
そんな超ハードモード状態にあった未来が、さまざまな壁にぶち当たりながらも、自分を消費することなく楽しく育児に取り組めたのは、やはり颯太自身の存在が大きい。もちろん当初は、わんぱくで意思疎通ができない颯太に振り回され、戸惑う未来の姿もあった。けれど生活を共にするうちに、二人の関係性は親子でありながら、どこか横並びで歩くバディのようにも見えてきた。颯太は、守られるだけの子どもというより、夢に育児に奮闘する未来の背中を見守る「小さな相棒」のようにも映ったのだ。