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NEWS EVENT SPECIAL SERIES

【第11回】粉川心から伊藤えりへの手紙

2026.7.7

#MUSIC

伊藤えり(いとう えり)
笙奏者、即興演奏、作曲。東京藝術大学在学中に笙と出会い、以来40年以上にわたり演奏活動を続ける。東京楽所のメンバーとしてサントリーホール、国立劇場などの舞台に参加し(〜2008年)、古典雅楽の研鑽を積む。2011年に東京から奈良へ拠点を移し、国内外での演奏やコラボレーションを展開。寺院や歴史的空間での奉納演奏をはじめ、現代音楽、即興、他ジャンルとの共演など活動は多岐にわたる。近年はループマシンを用い、笙のドローンのような持続音と倍音を軸に、空間性の高い独自のサウンドを展開している。

凄まじいこだわりと、常人には計り知れない芸術へ向き合うパワーがある

今回はコラボアーティスト11組目。雅楽の笙奏者、伊藤えりさんについて語っていこうと思います。

伊藤さんは東京藝術大学で笙と出会い、そこから40年近くも笙の世界で、古典に留まらず様々な実験を繰り返して、今もなお成長中という大先輩アーティストです。40年も同じ楽器に向き合い続け、さらにはシンセやルーパーなどの最新機材も取り入れながら進化を続けるという姿勢には尊敬しかありません。

まず僕は、東京藝術大学出身のアーティストという人種が大好きで、経験上無条件に大信頼を寄せています。2ndアルバムに参加してくれた石若駿君、和久井沙良ちゃんもそうですし、今回のプロジェクトでは、魚返明未君と来週コラボ作品をリリースする八幡亜樹ちゃんも東京藝術大学卒です。

どこかで聞いた話でとても強く印象に残っているのが、東京藝術大学では数年に一人の天才を作るための「蠱毒(こどく)の壺」を実践しているという話。「蠱毒の壺」とは、古代中国の呪術「蠱毒」を行うために、多数の毒虫や有毒な生き物を一つの壺に入れて共食いさせ、最後に残った最も強力な一匹(蠱)を取り出して呪詛や薬に用いたという伝説、およびその容器を指します。 

僕はこの思想が大好きで、残酷ではあるけど潔いし、そんな環境に居たらそりゃあみんなあそこまで強く突き抜けるよなと、妙に納得感のある話でした。明らかにみんな異質な才能を持っているし、さらにその自分の武器を最大限まで引き出して、磨いて、世界と戦うっていう能力がみんな飛び抜けているんです。

伊藤さんも例に漏れず凄まじいこだわりと、常人には計り知れない芸術へ向き合うパワーがあり、何度もミーティングを重ねては壊し、練り直し、また壊し、沢山のアイデアを出し合いながら制作を進めていきました。

伊藤えり

そんな中で、違和感があるとちゃんと真っ直ぐに怒ってくれたのは伊藤さんだけでした。
「この説明の、この部分の意図が曖昧だし、みんな言わないかもだけど困惑している人もいるはずだよ」と初期段階でふんどしを締め直してくださったのはとてもありがたいことでした。

遠隔で進めてきたコラボの中では、今回が唯一レコーディングスタジオに一緒に入り、その場で全曲一気にレコーディングしたコラボでもありました。いろんな方法で進めていた遠隔でのデータセッションでしたが、最終調整段階で、「これでは良い作品になりそうにないからコラボ自体をなくしましょう」という事件がありました。

でもなんとかして一緒に作品を作りたかったので、それならばと180度方針を変えて、当日一緒にレコーディングをするという案を出したところ、それなら可能性があるかもしれない! ということでなんとかコラボが実現。

そうしてレコーディング直前になった頃、やってみたいことがある! と言うので聞いてみると、尺八の松本太郎さんを当日連れて行きたいとのこと。「彼の予算は私が全て持つから、良い作品のためには必要だと思うんです!」というまたもや急遽方向転換し、当日のレコーディングでは初対面の松本さんと軽くご挨拶してすぐにセッションへ流れ込みました。

松本太郎(まつもと たろう)
ライリー・リー、石川利光、米村鈴笙の各師に学び、海童道、琴古流、吾妻流を修める。古典の技法をベースに現代曲、オーケストラとの競演、ポップス、即興演奏などジャンルを問わない活動を続けている。奈良市内に複数の稽古場を持ち呼吸法と音作りを主とした指導を行う。奈良大学非常勤講師。

何もかもが想定外で、やっぱりこちらの想定や常識なんかに収まらない人だよなと、ハラハラワクワクさせてもらったコラボでもありました。

しかしやっぱり素晴らしいなと思ったのは、準備や、企画にはものすごく細かく確認作業や、機材の把握、手配などされるものの、実際のレコーディングはワンテイクで終わらせるカッコ良さ。普通のミュージシャンは録り直しや、修正作業などに一番時間がかかるものですが、一発で最高の表現を残してしまう美しさに感動しました。

結局は音が全てなんだなと。いくら快適でスムーズな進行ができようとも、最後の音が弱ければアートとしては何の意味もない。音だけに全集中すれば他のことに気を回してる暇なんてないのが本当の美しい姿、途中にあった問題など帳消しにしてしまうほどの音さえあれば最強だよなと。改めて美しい芸術家像を観せてもらえたのは素晴らしい経験でした。

そんな沢山のドラマを乗り越えてできた3曲はヘッドホンで爆音推奨です。爆音でしか味わえない音の粒子達に導かれ、音の中に入り込んでいって、意識と時空の彼方へ飛ばされる感覚を是非お楽しみください。

粉川心

次回は粉川から八幡亜樹への手紙を7月14日(火)に公開予定。

粉川心(SHIN KOKAWA)長期プロジェクト「13artists×3works」

■プロジェクトコンセプト:身体的負荷の先にある「強いアート」の本質 この途方もない量の制作と連続リリースの背景には、粉川自身の「身体値の限界突破」というテーマがあります。比叡山延暦寺の極限の修行「千日回峰行」から着想を得ており、便利な時代にあえて「質より量」という過酷なアプローチを選択。圧倒的な制作量とライブの継続を通じて、身体 的な負荷の先に見える「強いアート」の本質を突き詰める試みです。また、13週間にわたる活動 そのものをひとつの表現とし、アーティストとしての影響力を拡大しながら、持続可能で心地よいビ ジネスモデルを構築・実証していくという「アートとビジネスの両立」も重要なテーマとして掲げています。

■参加アーティスト(全13組 / 順不同・敬称略)
・zezeco (青木ロビン / manukan)
・ermhoi
・類家心平
・魚返明未
・Noriyuki Inoue (jizue)
・THE BED ROOM TAPE (景山奏 / NABOWA)
・オオヤユウスケ (Polaris)/anzu
・高橋佑成
・早雲
・Momose Yasunaga
・伊藤えり
・八幡亜樹
・Yasutaka Okada (kott)

各種リンク
HP: https://penguinmarket.net/artist/shinkokawa/
Instagram:https://www.instagram.com/drum_shinkokawa/
X(旧Twitter):https://twitter.com/Drum_ShinKokawa
SPOTIFY:https://open.spotify.com/intl-ja/artist/3Vg6ZWLfFLXKgHoE4xbE3k
APPLE MUSIC:https://music.apple.com/jp/artist/shin-kokawa/1575903464

collaborate#11
収録曲:
1.日月輪/Sun-Moon Camellia
2.時雪 – 盤渉
3.The Einstein-Rosen Bridge
配信リンク:https://linkco.re/mDM5dnr4

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