映画『ハイパーボリア人』が2月8日(土)より全国公開されることが決定し、予告編、場面写真、メイキング写真が一挙解禁された。
『オオカミの家』を手がけたチリ出身の映画監督デュオ、クリストバル・レオンとホアキン・コシーニャの長編2作目となる同作。ギリシア神話やH.P.ラヴクラフトらの創作による「クトゥルフ神話」に登場する架空の民族「ハイパーボリア人」をタイトルに据え、実写、影絵、アニメ、人形、16㎜フィルム、ビデオ、デジタルと様々な手法が織り交ぜられた「闇鍋」のような映画となっている。
実在した親ナチ文化人ミゲル・セラーノや政治家ハイメ・グスマンが登場し、チリの現代史やナチスドイツをモチーフにする一方、主演俳優のアントーニア・ギーセンや、監督のレオン&コシーニャが実名で登場することで、現実と虚構、過去と現在の境界を巧妙に見失わせる。
監督の一人ホアキン・コシーニャは、主演俳優や自身が実名で出演したことについて、「コロナ禍の最中につくったオンライン演劇に、アントーニア・ギーセンと共に監督である我々も実名で出演した。自分たちが話している映像に謎のウイルスが入り込んできて、映像が歪んだり、会話が予期せぬ方向に流れていったりするもので、それが面白かったので、本作でもその構造を活かし、また彼女に自身として出てもらうことが良いのではないかと考えた」と語っている。
同作に登場する数々の人形や、物語の核心に関わる大きな頭は、レオン&コシーニャが撮影の数週間前から開いていたワークショップで参加者と共に作ったもの。この成果物について監督は「綿密にスケジュールを組んで用意周到に臨んだわけではなく、まずルールや仕組みを私たちがつくり、参加した様々な人たちと私たちとの共同作業の中から生まれていった作品」と語っている。
解禁された予告編は、冒頭『オオカミの家』の映像から、荘厳な鐘の音とともに『ハイパーボリア人』の映像に切り替わってスタート。主演のアントーニア・ギーセンが映画のあらましを話していると、画面にノイズがかかり、カオスな映像の断片が映し出されていく。後半では「その昔地球はハイパーボリア人が支配していた」や「この洞窟にヒトラーがいる」などと不穏なセリフが、不気味な人形やアニメーションとともに聞こえ、キービジュアルにも使われている「この人たちどうかしてる」という言葉が混沌としたこの映画の世界観を象徴する。
なお、公開時には第48回オタワ国際アニメーション映画祭に出品されたレオン&コシーニャ監督による短編『名前のノート』も同時上映される。
『ハイパーボリア人』
監督:クリストバル・レオン、ホアキン・コシーニャ 脚本:クリストバル・レオン、ホアキン・コシーニャ、アレハンドラ・モファット
出演:アントーニア・ギーセン
2024年 / チリ / スペイン語・ドイツ語 / 71分 / カラー / 1.85:1 / 5.1ch
原題:Los Hiperbóreos 字幕翻訳:草刈かおり
© Leon & Cociña Films, Globo Rojo Films
<ストーリー>
女優で臨床心理学者でもあるアントーニア(アント)・ギーセンは、謎の幻聴に悩まされるゲーム好きの患者の訪問を受ける。彼の話を友人の映画監督レオン&コシーニャにすると、2人はその幻聴は実在したチリの外交官にして詩人、そしてヒトラーの信奉者でもあったミゲル・セラーノの言葉であることに気づき、これを元にアントの主演映画を撮ろうと提案する。2人に言われるがまま、セラーノの人生を振り返る映画の撮影を始めるアントだったが、いつしか謎の階層に迷い込み、チリの政治家ハイメ・グスマンから、国を揺るがすほどの脅威が記録された映画フィルムを探す指令を受ける。カギとなる名前は”メタルヘッド”。探索を始めるアントだったが、やがて絶対の危機が彼女を待ち受ける……!