9月13日(金)より全国公開されている映画『ぼくのお日さま』(英題:My Sunshine)の公開記念トークショーが、9月16日(月・祝)にテアトル新宿で開催された。
雪の降る街を舞台に、吃⾳をもつホッケー少年・タクヤ、フィギュアスケートを学ぶ少⼥・さくら、元フィギュアスケート選⼿でさくらのコーチ・荒川の3⼈の視点から、「雪が降り始めてから雪が解けるまでの少年の成長」を描いた同作。監督 / 撮影 / 脚本 / 編集は、同作が商業作品デビューとなる奥山大史が務めた。イベントには奥山大史と、その兄で写真家 / 映像作家の奥山由之が登壇。公の場で兄弟揃って対談するのは、2019年に公開された奥山大史の長編1作目『僕はイエス様が嫌い』公開時のトークショー以来、約5年ぶりとなった。
事前に同作を観た由之は、「本編を観させてもらう前に、この作品の予告を見た瞬間、もちろん主人公のタクヤもだけど、タクヤの友達のコウセイがまるで昔スケートをやっていた頃の大史を見ているようでした。かつ、本編を観て、この映画全体の佇まいから、昔一緒に過ごしていた時間とか、大史自身がそこに映っている感触がありました」と感想を述べ、「心に残る作品は、作り手自身をスクリーン越しに見ている感覚になれるものだと思うんですが、そういった作品作りはなかなかできることではないので、作り物をしている1人として羨ましくもありました。作品作りにはたくさんの人が関わり、いろんな条件、事情があるなかで、本来描きたいものがぼんやりしてしまいがちな中で、大史がつくりたいものにスタッフやキャストの皆さんが共鳴して、本当に良いチームで作れているんだなということが伝わってきました」と、同じクリエイターとしての視点でも作品について語った。
続けて、「兄弟の中でも末っ子の可愛かった大史が、自分が作りたいものをピュアなまま作品として完成させられて、こうしてお客さんに届けられたのは、周りの人に感謝だね」と語りかけると、大史も「本当にやりたいようにやらせてもらえましたし、周りの方々に助けられました」と、スタッフへの感謝を改めて伝えた。
また、作品の主人公・タクヤと兄のシーンを振り返り、大史は「食卓でのタクヤのお兄ちゃんは、ちょっと由之を意識した」と、自らの実体験を踏まえたことを明かすと、由之は「あの苦言を呈するお兄ちゃんでしょ? それはちょっと嫌かも(笑)」と思わず苦笑いした。しかし、この作品での「兄」像について、大史は「由之を意識したのは現実主義なところ。子供の頃に弟の僕に向かって『サンタなんかいない』と言うような(笑)。でも、物語を作る上で、そういった夢を見すぎない距離、視点の声が入ることは、お客さんの冷静な声にも近いので、プラスになるんです」と、作品への効果を語った。
さらに、由之からは「もう一つ、この作品はただ優しく柔らかいだけじゃなくて、一瞬眼光が鋭くなる厳しさみたいな感覚が共存しているのも、大史の人間性が現れてる気がする。あとは『僕はイエス様が嫌い』と、画面のトーンが共通していると思うけれど、大史自身はきっともっと多面的だし、人間は言葉では語り切れない多面体で矛盾しているものだと思うから、これまでの2作品とは違った様相の作品も見てみたい」と、今後の作品への期待もこめられた言葉が贈られた。
『ぼくのお日さま』が自身で撮影も手掛けていることについて聞かれた大史は、「なるべくドキュメンタリーっぽく撮るために絵コンテも描かず、現場で役者さんにお芝居してもらって初めてどのように撮るか決めたかったので、カット割りも一部の照明技師さんに見せるだけで、役者はもちろん他のスタッフにも見せなかったんです。そんな中で、スケートシーンは、撮りたい画を撮るにはレールを敷かずに撮影機材を持って、かつスケート靴を履いてリンクの中で撮るのが最善で、となると自分で撮るしかなかったんです」と、撮影に関しても自身のこだわりが詰まっていることを語った。
以前、企業の広告を共同制作したこともあるふたり。「あの時は現場ですごい喧嘩したよね。同じ場面を見てても、アングルとか撮り方とかが全然かみ合わなくて、人間ってこんなに眼差しが人それぞれに違うものなんだなと感じた」と由之が当時を振り返ると、大史は「その撮影の時に女性の顔の撮り方について、正面から撮るよりも後ろや横からの方が美しくリアリティが出る、と由之から言われたことは今も意識している。この作品でも、タクヤがさくらに恋に落ちるようなアングルを決める時に思い返しながら撮ってました」と、共同制作で得た経験を作品に活かしていたことを明かした。
最後には、11月15日(金)から由之による自主制作映画『アット・ザ・ベンチ』が劇場公開されることにも言及。兄弟で互いに刺激を受け合っている様子をうかがわせながらトークショーは終了した。
『ぼくのお日さま』
(C)2024「ぼくのお日さま」製作委員会/COMME DES CINÉMAS
監督・撮影・脚本・編集:奥山大史
出演:越山敬達、中西希亜良、池松壮亮、若葉竜也、山田真歩、潤浩ほか
主題歌:ハンバート ハンバート
本編:90分
配給:東京テアトル
公式HP bokunoohisama.com 公式ハッシュタグ▶︎ #ぼくのお日さま
公式X ▶ @bokuno_ohisama ▶ twitter.com/bokuno_ohisama
公式Instagram▶︎ @bokuno_ohisama ▶ www.instagram.com/bokuno_ohisama
映画『アット・ザ・ベンチ』
©2024 Yoshiyuki Okuyama/Spoon Inc, All Rights Reserved.
監督:奥山由之
出演:広瀬すず(第1編・第5編)、仲野太賀(第1編・第5編)、岸井ゆきの(第2編)、岡山天音(第2編)、荒川良々(第2編)、今田美桜(第3編)、森七菜(第3編)、草彅剛(第4編)、吉岡里帆(第4編)、神木隆之介(第4編)
脚本:生方美久(第1編・第5編)、蓮見翔(第2編)、根本宗子(第3編)、奥山由之(第4編)
音楽:安部勇磨
企画・製作:奥山由之 プロデューサー:佐野大 撮影:今村圭佑 録音:佐藤雅之 美術:野田花子
衣裳:伊賀大介 ヘアメイク:小西神士/くどうあき 編集:平井健一/奥山由之 助監督:鈴木雄太
制作担当:神谷諒 カラリスト:小林千乃 オンライン編集:土屋瀬莉 グラフィックデザイン:矢後直規
配給宣伝協力:池田彩乃 制作・配給:SPOON
2024年|日本|86分|カラー|ビスタ|5.1ch|英題:AT THE BENCH
©2024 Yoshiyuki Okuyama/Spoon Inc, All Rights Reserved.
公式サイト https://www.spoon-inc.co.jp/at-the-bench/
公式ハッシュタグ▶︎ #アットザベンチ
2024年11⽉15⽇(⾦) テアトル新宿、109シネマズ⼆⼦⽟川、テアトル梅⽥ほか全国公開