『映画スタッフのための契約レッスン』の新たなコンテンツが公開された。
公開されたのは「契約書ひな型例」「解説冊子(ガイドブック)」「解説動画」の3点。同事業は令和5年度文化庁委託事業「芸術家等実務研修会」として、一般社団法人Japanese Film Projectが受託し、2022年7月に公表された「文化庁ガイドライン」に基づき有識者の協力を得て実施している。
これまで文化芸術関係者には、業務内容や報酬等が十分に明示されず、不利な条件の下で業務に従事せざるを得ない状況があった。また、2024年秋以降に「フリーランス新法」が施行される。フリーランスで文化芸術に携わる労働者にとっては、特に契約や交渉などに大きな状況の変化が見込まれている。
今回公開されたコンテンツには、「フリーランス新法」の解説、契約までの具体的なワークフロー、「文化庁ガイドライン」の考え方と「フリーランス新法」の内容を反映させた映画スタッフのための「契約書ひな型例」の提示と解説が含まれている。解説動画には講師として弁護士の長澤哲也を招いている。
また、今回公開されたコンテンツについて解説する対面研修会『ゼロから始める、契約書の読み方講座~映画スタッフ編~』を、2月8日(木)から17日(土)まで東京、神奈川、京都で5回にわたって実施。映画と映像の仕事に関わる全ての人を参加対象としている。
講師は長澤が務め、映画監督の金子由里奈や美術監督の福澤勝広、撮影監督の儀間眞悟ら毎回異なる映画関係者も聞き手として登壇する。参加は無料で、Peatixから予約申し込みが必要となっている。
対面研修会「ゼロから始める、契約書の読み方講座~映画スタッフ編~」
講師:長澤哲也 ●は聞き手
(※各回終了後は会場を開放し、交流会も開催)
【1】2/8(木) 13:30-15:00 @日本映画大学 新百合ヶ丘キャンパス
●山内薫(日本映画・テレビスクリプター協会 代表理事)
●島田隆一(ドキュメンタリー映画監督 / 日本映画大学准教授)
【2】2/9(金) 13:00-14:30 @Loft9 Shibuya
●福澤勝広(美術監督、日本映画・テレビ美術監督協会 副理事長)
●甲斐清香(ポストプロダクションスーパーバイザー、日本映画・テレビ編集協会 専務理事)
【3】2/9(金) 19:00-20:30 @Space&Cafe ポレポレ坐
●儀間眞悟(撮影監督)
●萬代有香(撮影・撮影チーフ)
【4】2/10(土) 19:00-20:30 @Space&Cafe ポレポレ坐
●山中瑤子(映画監督)
●金子由里奈(映画監督)
【5】2/17(土) 17:30-19:00 @キャンパスプラザ京都
●金子雅和(映画監督)
●満若勇咲(ドキュメンタリー映画監督 / 撮影)
参加申し込み:https://jfproject.org/contract/
「フリーランス新法」とは
(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)
フリーランス新法とは、フリーランスと発注者(制作会社等)の間の取引の適正化とフリーランスの就業環境の整備を図るため、発注者(制作会社等)に対して、業務内容を書面等で明示することを求めたり、一定の行為の禁止を義務づける法律です。施行は、令和6年秋頃の予定です。
(『映画スタッフのための契約レッスン』ガイドブックより抜粋)
特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)等に係る取組について|内閣官房ホームページ https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/freelance/index.html
フリーランスの取引に関する新しい法律ができましたhttps://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/download/freelance/law_03.pdf
「文化庁ガイドライン」
文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン(検討のまとめ) 概要
(文化庁資料より抜粋)
Ⅱ 文化芸術分野における契約上の課題
○ 関係者間の信頼関係や従来の慣習等により、口頭による契約が多い
○ 分野、職種、案件により、業務内容や契約期間が異なるなど契約が多様であり、契約書作成に係る事務負担が大きい
○ 業務内容が創作過程で変わることもあるため、契約時に業務内容や業務量を正確に見積もることが困難
○ 契約書があっても一方的な内容であれば、芸術家等が不利益を被ったり、トラブルに発展したりする 等
III 課題を踏まえた改善の方向性
◆契約内容明確化のための契約の書面化
○ 契約の書面化の推進のため、 各分野や業界等の実情に応じた推進方法が求められる
○書面の形は契約書以外にも様々であるが、メール等を含め記録に残すことが重要
◆取引の適正化の促進
○報酬や取引条件について、 芸術家等が協議・交渉しやすい環境を整備していくことが必要
○専門性や提供する役務に見合った報酬とするなど、 取引の適正化を促進していく必要
IV 取引の適正化の促進等の観点から契約において明確にすべき事項等
(1) 業務内容
○具体的な業務や期間等を可能な限り明確に、 できない場合は理由や予定期日を記載
(2) 報酬等
○業務内容や専門性等に応じた適正な金額となるよう双方で十分に協議、 諸経費も明確に
(3) 不可抗力による中止・延期
○ 契約段階において十分に協議、 事後的に協議する場合は業務の履行割合等を勘案し決定
(4) 安全・衛生
○ 発注者は受注者の安全に配慮、 事故・ハラスメント防止のため責任体制を確立
(5)権利
○許諾の場合の利用範囲や譲渡の範囲など取扱いを明確に、 対価の決定時に十分考慮
(6)内容変更
○変更内容も書面により明確に、変更による負担の増減等を勘案して報酬等に反映
○ 基本的な項目のほか、 広告宣伝、 クレジット (氏名表示)、 損害賠償責任、 暴力団排除、 契約終了後、 秘密保持等、 中途解約、 紛争解決に関する条項や、 所属事務所等が発注者と契約する場合の留意点を整理
○スタッフの制作や技術等に関する業務委託契約、 実演家の出演に関する業務委託契約を対象として、 契約書のひな型例及び解説を作成
○分野共通的な項目や取引の適正化の観点から基本的な項目に絞って提示しており、柔軟に工夫し活用されることを期待
出典:
「文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン(検討のまとめ)」を公表します | 文化庁
https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/93744101.html