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雪国インタビュー スローテンポと余白が生み出す、緻密なアンサンブルの正体

2026.9.1

雪国『claras』

#PR #MUSIC

川端康成からの影響と、クリックを外した生々しい録音

─京さんの書く歌詞もすごく魅力的ですよね。“クララ”の2番の<素敵な予感がするのと、諦めたような声でいう>という表現なども、曖昧だけど確実に伝わるものがある。歌詞を書く上で意識していることはありますか?

京:歌詞を書く時は、自分の体験やインプットしたものを、誰が読んでも「自分の物語だ」と思えるような余白を残して抽象化することを意識しています。断片的にしたり、ストーリーテリングにしたり、自分の中で色々な手法ができてきて。それを組み合わせて、誰もが感情移入できるものにしたいなと。言葉選びは、自分が読んできた本に影響を受けていますね。

─具体的にはどのような作家から影響を受けているのでしょうか?

京:一番直接的なのは、バンド名の由来にもなっている川端康成(※)さんなどの文学作品です。言葉と表現したいものの関係性や、言葉と言葉の間の余白の美しさみたいな部分に一番影響を受けています。中学生の頃に読んで、そういう感性をゼロから自分に植え付けられた感覚があるので、言葉でも音楽でも、そういう余白は自分の中にあるのかなと。

※川端康成:日本初のノーベル文学賞作家。川端康成が描いた『雪国』は日本文学を代表する名作長編小説。

─「雪国」という名前は、景色や風景を言葉で見せたいからつけたのかと思っていましたが、「物語」を描いているというのは少し意外で、それが個性なのかもしれないと感じました。

京:物語というストーリーそのものを描いているのではなく、「物語の中にいる人が見ている風景」という感覚ですね。

木幡:歌詞だけでそれを表現するというよりかは、演奏も含めた「雪国」というバンド全体で表現しきれるのが目標です。歌詞は音楽の中の一部としての役割を果たしている感覚で。京くんは歌詞を書いている時というより、音楽を作る時に、多分『雪国』を読んだ時の原体験をもとに「こういうものを作りたい」という意識があるんだと思います。

大澤:横から見ていても、天性のバランス感覚があるなと思います。川端が描く世界観を美しいと思った原体験があるからこそ、誰もやっていない言葉の質感や選び方ができているんじゃないかなと。

─新作は歌詞がダイレクトに伝わるというより、言葉と演奏の余白が相互に埋め合って一つの作品になっていると感じました。

木幡:レコーディングの手法も影響しているかもしれません。今まではクリックを聴いてドラムとベースを録って、そこにギターと歌を乗せていたんですが、今回は先に録った歌のデモを聴きながら、クリックなしで録ったんですよ。意図したわけじゃないんですが、自然と歌にある余白にドラムとベースが迎合できたんだと思います。

“カゲロウ”のラストも、クリックがないからこそベースの動きに合わせてドラムの叩き方を変えたりして、完全に曲についていくことができました。

─クリックがないからこその生々しさがすごく伝わります。歌とギターを合わせるのはどうでしたか?

京:もともと僕が作ったデモがすごい「なよなよ」なんですよ(笑)。それを元に叩いてもらっているから難しい部分はあると思うんですけど、普段から一緒に演奏して癖もわかっているので。僕の「なよなよ」しすぎている部分に合わせるのだけが難しかったですね。

木幡:お試しで今回やってみたんですが、その適当に作ったデモを聴きながらやってみたら、ベースとドラムがめっちゃ良くて。レコーディングエンジニアのKensei Ogataさんや京くんは「いや無理でしょ(笑)」って言ってたんですけど、俺らとしては「絶対にできる」と。

─なるほど(笑)。前作の『shion』での経験も活きているのでしょうか?

木幡:『shion』は過去一演奏が難しかったんですけど、それを乗り越えたからこそ、お互いの楽器の特性やリズムのクセを理解できるようになりました。「こういう時に遅くなるよね」「ここでベースを重く弾くよね」というのがわかっているから、よりスネアとバスドラのローをしっかり一緒に押したり、京くんのロングトーンの時は落ち着いたフェーズを作ったり。お互いに会話できた状態で録れたのかなと思います。

─『shion』の時は、テクニック的に難しかったんですか?

木幡:遅いテンポの中で、自分たちの演奏の重心を持つのが難しかったんです。音数が減っているなかでの遅い演奏って、何も考えずにやるとただの弱い音になってしまう。でも、大きい音を鳴らそうとすると遅さがキープできない。そのバランスを保つのが本当に難しくて、でもそれが前回のレコーディングからできるようになりました。

─遅くて大きな音で、緊張感を持って出すのは本当に難しいですよね。僕はスロウコアが大好きなんですが、そういう音楽に日本語を乗せるのは難しいと感じますか?

京:今回、譜割りをすごく意識して歌詞を作ったので、どうメロディーに乗せたら無駄な存在感なく自然になるか、という部分は培ってきたものがあります。自分だけのものが確立されてきている感覚はありますね。

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