INDEX
歴史ある「蔵」での録音が引き出した、自然体のアンサンブル
─今回の新作EP『claras』を聴かせていただいて、音が良くなったなと感じました。前よりも音がタイトになって、「こういうことがやりたいんだな」ということがストレートに伝わってきました。
一同:ありがとうございます。
─前作以上にドラムとベースがシンプルになってきている気がしていますが、そのシンプルさがすごく効果的になっていますよね。シンバルが一発鳴るだけで気持ちよかったり、ベースがルートを弾くだけで音に説得力があるのを今作はすごく感じました。そのあたり、リズム隊の2人はどう意識してましたか?
大澤:まず間違いなく、今回録った場所「MUSIC inn Fujieda」(※)が重要だったなと思っていて。ドラムへの影響がとくに大きくて、(木幡)徹己が意図している広がりみたいなものを、より意図的に出したり調整したりできたと思うんです。ベースに関しても、今まで機材を調整して試行錯誤してきたものを全部振り返って、「これが正解じゃないか」という音を今回出せたなと思っています。
※MUSIC inn Fujieda :ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文氏が静岡県藤枝市に設立した滞在型音楽制作スタジオ。同スタジオは130年の時を刻んだ土蔵を改装したもの。
木幡:今回録音した「MUSIC inn Fujieda」は蔵なんですよ。そこで録ったことによって、単純にアンビエントマイクを立てた時の広がり方や、ローがちゃんと散ってくれる感じがすごく良くて。電気を消して薄暗い状態で演奏したんですけど、蔵の木目が見えたり、すごくオーガニックな気持ちになれて、深く入り込んで演奏できました。
大澤:ドラムがそういう環境で録れた上で、ベースも同じような広がりのある空間でリアンプできたので、上手く混ざり合っていい土台ができたと思います。

木幡:そういう環境要因もあったと思うんですけど、そもそも作品を出す時点で、自分たちの演奏力が上がっているのは確実にありますね。「余白」という話で言うと、俺らがアレンジ上でどれだけ休符を作るかというよりかは、1音で出せる重みや情報量を、それぞれが持たせられるようになったんです。ベースで言ったら1音弾いた時の音価の長さの調節とか、ドラムもクラッシュやライドを叩いた時に、どれだけふくよかに長く響かせられるかとか。
PAを担当してくれている俺らの師匠のカツラさんという方がいるんですが、リハの時に「めっちゃ深呼吸しよう」「より深みのある音を出そう」とずっと言われ続けてきたんです。ストイックに縦のリズムを合わせるというより、みんなで呼吸を落として、より深く1音1音を調節できるようにする。その結果、自然と小さい音も大きい音も出せるようになって、ロングトーンが上手くなりました。含みのある音が出せるようになったおかげで、実はアレンジ自体はあんまり変わっていないんですよね。
大澤:弾いている内容はそこまで変わっていないけど、「どう弾くか」と「それをどう音源に昇華させるか」という2つのプロセスで解像度がちゃんと上がっているし。カツラさんが細かくフィードバックをくれるから、普段のプレイも良くなっている。だから、すごくノイズがなく聴きやすい音になっているんじゃないかな。