2025年にインドで公開されるやいなや、インド映画史を塗り替える爆発的ヒットとなった超大作『ドゥランダル作戦』が、ついに日本でも7月10日(金)から公開され、反響を呼んでいる。
同作をはじめ、『花嫁はどこへ?』や、『フォレスト・ガンプ/一期一会』のヒンディー語リメイク『Laal Singh Chaddha』など1000本以上の作品を手がけ、ジオ・スタジオズ創設当初から同社を支えてきたプロデューサー、ジョーティ・デーシュパンデーへのインタビューが実現。
インドのメディアでもほとんど語られてこなかった、『ドゥランダル作戦』における音楽やアクション演出へのこだわり、日本との関わり、そして今後の展望とは?
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「あくまでエンタメとして作る」。結果として繋がる女性のエンパワーメント
ー キラン・ラオ監督や『相撲ディーディー』の制作スタッフなどにインタビューを行ってきたなかで、何度かジョーティさんのお名前が挙がりました。女性にスポットを当てた作品を積極的にプロデュースされていると伺ったのですが、それは意識されてのことでしょうか?
ジョーティ:『マダム・イン・ニューヨーク』は、確かに女性のエンパワーメントを描いた映画と言えますね。
ただ、私自身がそれを強く意識したり、「女性観客のための映画を作ろう」と考えたりしたことは、あまりありません。あくまでエンタメとして映画を作ることを大切にしています。その結果として、女性のエンパワーメントにつながる作品になることは、同作の他にも『花嫁はどこへ?』のように、これまでも度々ありました。

インドの映画プロデューサー、メディアエグゼクティブ。リライアンス・インダストリーズのメディア&コンテンツ部門プレジデント兼Jio Studios CEOを務める。Viacom18のCEOなどを歴任。プロデューサーとして『Laapataa Ladies(ロスト・レディース)』(2023)、『Article 370』(2024)、『Shaitaan』(2024)、『Stree 2』(2024)、『Singham Again』(2024)、などを手掛ける。『Laapataa Ladies』はアカデミー賞国際長編映画賞のインド代表作品にも選出された。
インド初の女性力士の実話に基づいている映画『相撲ディーディー』は日本企業と共同制作をしました。今後も日本とはアクション映画やアニメーション映画などを一緒に作ってみたいと思っていますが、日本に限らず、様々な国と協力しながら、世界へ向けたコンテンツを発信していきたいですね。
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独自のフュージョンがもたらす没入感。音楽を「入り口」にして過激なアクションの壁を越える
ー若い観客の映画館離れが進むなか、同作において、パンジャブ音楽やヒップホップのトレンドを捉えた音楽の存在は非常に重要だったのではないかと思います。
ジョーティ:そうですね。『ドゥランダル作戦』において、音楽は非常に重要な役割を果たしていて。この作品は、音楽によって映画のストーリーテリングそのものを書き換えたと自負しています。
相次ぐテロに揺れるインド政府は極秘裏に「ドゥランダル作戦」を発動させる。パキスタンの都市カラチで最も危険な都市リヤリに巣食う最凶ギャング組織から、事前にテロの情報を掴むこと。潜入という最高難度の任務に選ばれたのは、死刑囚ハムザ(ランヴィール・シン)。身分を偽り組織に入り込んだ彼は、血塗られた抗争と裏切りの連鎖に巻き込まれながら、徐々に組織の中枢へと迫っていく。だがその先で待っていたのは、国家を揺るがす巨大な陰謀だった。任務か、信念か―逃げ場なき極限の中、彼が下す決断とは。
力強くバウンシーなビートを持つパンジャブ音楽やヒップホップ、さらにインド古典音楽の要素を織り交ぜることで、従来の映画音楽とは異なる没入感を生み出しました。なかでも、私の好きな曲のひとつが“Move – Yeh Ishq Ishq”です。
この曲は、ドージャ・キャットの“AAAHH MEN!”をサンプリングしています。スチュー・フィリップス作曲の『ナイトライダー』のテーマ曲でも用いられたことで知られるこのトラックを、Sony Musicから正式にライセンス取得しました。そこに、イスラム神秘主義の伝統的な宗教歌謡である「カッワーリ」の要素をさらに掛け合わせることで、これまでにないフュージョンソングへと昇華させていて。この楽曲の存在が、アクションシーンをより強烈に印象付けてくれました。
インドのアクション映画では、アクションシーンそのものに音楽を強く重ねない傾向があります。しかし同作では、あえて音楽を前面に押し出すことで、アクション映画の構造そのものを変えようとしました。
また、アクション描写が過激で、女性の観客に届きにくいのではないかという懸念もありました。しかし、音楽が作品への入り口となったことで、その課題も乗り越えることができたと考えています。
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複数のアクション監督を起用し、それぞれの強みを生かした多彩な演出
ーアクション監督には、『KILL 超覚醒』のオ・セヨンを起用されていますね。同作のゴア描写(※)には、韓国アクションらしいリアリズムが色濃く反映されていると感じました。一方、銃撃戦には『ファミリー・マン』などで知られるヤニック・ベンの持ち味が表れていた印象です。
ジョーティ:おっしゃる通りです。今回は主に4人のアクション監督が参加しており、それぞれの得意分野を担当してもらいました。

セヨンは韓国仕込みのリアルなアクションを得意としているので、アッバス・アリ・モグルとタッグを組み、ゴア描写を含むエッジの効いたアクションを手がけてもらいました。悪役たちの存在感が際立っているのも、彼の演出によるところが大きいですね。さらに、イギリスを拠点に活動し、『Commando 3』や『Adipurush』などにも参加したラマザン・ブルートが加わることで、アクション全体に重厚感が生まれました。
一方、ヤニック・ベンとアエジャズ・グラブは銃撃戦のスペシャリストです。ギャング同士の抗争やテロリストとの戦闘シーンでは、彼らの経験と技術が存分に発揮されています。
一般的に映画は1人のアクション監督が全体を統括することが多いのですが、同作では複数のアクション監督とスタント・コーディネーターが、それぞれの専門性を持ち寄りました。その結果、アクションのバリエーションが非常に豊かになり、最後まで観客を飽きさせない作品になったと思います。全体を通して、アクションデザインの成果が十分に表れた作品になりました。
※ゴア描写:血飛沫や肉片が飛び散るような、非常に残虐で猟奇的な人体損壊表現のこと

ーOTT(※)では、『ドゥーム・ダーム』のように、劇場映画よりも検閲の制約が少ない分、より挑戦的なテーマや表現に取り組める印象があります。ジョーティさんご自身も、OTTならではの作品に挑戦してみたいと考えることはありますか。
ジョーティ:私はむしろ、OTT向きと思われるような挑戦的な作品を、いかに劇場映画として成立させ、映画館へ観客を呼び戻すか。そのことを常に意識しながらプロジェクトを進めています。映画館から足が遠のいてしまった人たちを、もう一度スクリーンへ連れ戻したいという思いが強いですね。
現在は、1952年のヘルシンキ夏季オリンピックで銅メダルを獲得し、独立後のインド人として初めてオリンピックの個人種目でメダルを獲得したフリースタイルレスリング選手、カシャバ・ダダサヘブ・ジャダブを描くマラーティー語映画『Khashaba』を制作していて。そのほかにも、完成間近の作品がいくつかあり、順次公開を控えています。
※OTT:インターネット経由で映像を配信するサービスの総称

映画『ドゥランダル作戦』

7月 10 日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
監督:アーディティヤ・ダール『URI サージカル・ストライク』
出演:ランヴィール・シン『ガリーボーイ』、サンジャイ・ダット『K.G.F: CHAPTER 2』、アクシャイ・カンナーほか
2025年/インド/ヒンディー語他/シネスコ/5.1ch/206分/原題:DHURANDHAR/字幕翻訳:藤井美佳/配給:ツイン/R-15
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公式サイト : dhurandhar.jp
【ストーリー】
1999年に起きたハイジャック事件でテロリストとの交渉に当たったインド情報局局長アジャイ・サニヤルは、2001年のインド国会議事堂襲撃事件で、ハイジャック犯のひとりが自爆テロに参加していたことを知る。サニヤルはパキスタンのテロネットワークを根絶やしにするべく、極秘の潜入計画「ドゥランダル作戦」を発動する……。