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「宗教二世」というアイデンティティと向き合う。演劇で社会の規範を揺さぶるD地区に取材

2026.5.8

D地区『京王』

#STAGE

大阪の高校演劇の地区大会区分「D地区」で出会った劇作家の髙谷誉と制作の平沢花彩。両者はそれぞれ10年ほど個別の演劇活動を経て、2022年にその出会いの場から命名したD地区という演劇カンパニーを始動させた。

「社会的な規則や規範は、複数人の振る舞いによって変化しうる」。そんな理念のもと、これまで関東と関西を往来しながら、人と人との関係性から立ち上がる「変化の瞬間」を探求し続けてきた。なかでも、2023年初演の『おかえり未来の子』は、髙谷と平沢の経験をもとに、特定の宗教を信仰している家庭で育った当事者の立場から「宗教二世」として生きる主人公とその家族が抱える葛藤や切実を多面的に描き、『かながわ短編演劇アワード2023』で戯曲コンペティション大賞を受賞。その後もブラッシュアップを重ね、大阪と東京の二都市で再演された。

2025年末からは新作となる『京王』のクリエーションが始動し、自宅でのプレ公演と兵庫県伊丹市にあるAI・HALLでのショーケース公演を経て、2026年5月8日(金)よりSCOOLにて本公演を上演。物語の舞台となるのは、あるカップルが暮らした部屋。投資情報商材マルチに関わっていた男と宗教二世である女の別れの1日を、社会の境界線に揺れる若者の姿とともに描く。

本作では、髙谷の作劇をもとに、青年団と阿佐ヶ谷スパイダースに所属し、様々な舞台作品に参加する俳優・森一生が演出 / 共作で参加する。D地区が今、演劇の創作を通じて見つめる社会の形、人々の姿とはーー。初タッグを組む髙谷と森に話を聞いた。

はじまりは高校演劇。AFF戯曲賞ノミネートがきっかけで再結成したD地区

―D地区のメンバーである髙谷さんと平沢さんは高校演劇を通じて出会ったそうですね。まずは、その経緯と成り立ちからお聞かせ下さい。

髙谷:僕の高校は弱小校で、大会で駒を進める機会もほとんどなかったので、物理的にも勝敗的にもずっと端っこにいたんですけど、同地区の強豪校のOBであった平沢さんがある日声をかけてくれて……(笑)。それが最初の出会いでした。以降10年くらいはそれぞれの場で演劇活動を続け、D地区を結成したのはコロナ禍でした。僕がAFF戯曲賞(Aichi Arts Foundation Drama Award)にノミネートされた時に平沢さんが「髙谷まだ書いてるんやったら一緒にやろうよ」と声をかけてくれたんです。そこから僕が書くものをベースに、平沢さんとともにクリエーションを重ねてきました。

髙谷誉(たかたに ほまれ)
1995年生まれ、奈良県出身。東京在住。2022年よりD地区のメンバーとして活動し、主に戯曲の執筆を担当。『おかえり未来の子』がかながわ短編演劇アワード2023 戯曲コンペティション大賞受賞。

―2023年5月に初演された『おかえり未来の子』はその後も東西を横断して再演され、多くの反響を呼んだ代表作です。私も「宗教二世めが、僭越ながら申し上げます。あなた方は、それを、お分かりにならない」というコピーに引きずられるように東京公演を拝見し、「宗教二世問題」を取り巻くあらゆる視点を紐解く丁寧な作劇に衝撃と感銘を受けた一人でした。

髙谷:傲慢なキャッチコピーをつけてしまいましたけど、正直なところ「わかってる感出してくんなよ」という気持ちがあったんですよね。当時はちょっとしたブームになっていたというか、宗教二世に関していろんな人がいろんなことを言ったり書いたりしていました。でも、僕は「別にわからなくていい」と思っていたんです。当事者一人ひとりの体験としてしんどかったことや、逆に良かったことだってあると思うし。十把一絡げに「宗教二世ってこういう問題です」とは言えないもの、わからないものだと思うんです。社会問題として良くないことが起きている例ももちろんあるけれど、同時に共同体があり、そこで生きている人が今も実際にいる。そんな思いもあり、ああいうコピーを添えました。

D地区『おかえり未来の子』作:髙谷誉、演出:平沢花彩、髙谷誉 / デザイン:小沼桂大

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