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カプコンが二次創作のガイドラインを制定した背景。ファンとの「共創」で育むゲーム文化

2026.2.12

文化庁「著作権について知っておきたい大切なこと」

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©CAPCOM
©CAPCOM

ユーザーによるYouTubeでのゲーム実況や、SNS上のファンアートなどの二次創作は、今やコンテンツのヒットを左右する重要な要素となった。しかし、これらの活動について権利者の意思が示されていることは多くはなく、権利侵害のリスクと隣り合わせだ。

「訴えられるかもしれない」「いつ削除されるかわからない」それならば「やらないでおこう」。そんなクリエイターの過度な萎縮を解消し、ユーザーの創作活動を応援するべく、株式会社カプコンは「動画配信ガイドライン」および「二次創作物に関するガイドライン」を制定した。

「バイオハザード」シリーズ、「モンスターハンター」シリーズや「ストリートファイター」シリーズなど、日本のゲーム業界の一翼を担うカプコン。なぜカプコンは、あえてガイドラインとして明文化したのか。そこには、変わりゆく時代の中で「ユーザーと共に歩む」という想いがあった。

同社知的財産部商標著作権室の保田祐子と山田健太、そして文化庁著作権課の飯田真弥弁護士も交えて、ガイドライン制定の舞台裏と、そこから見えてくる著作権と文化の未来について語ってもらった。

※本インタビューは文化庁著作権課によるプロジェクト「著作権について知っておきたい大切なこと」の一貫で実施しています。

公式ガイドラインはファンの創作活動を応援するため

─『ストリートファイター6』の大ヒットをはじめ、カプコンのタイトルはユーザーコミュニティの熱量に支えられている印象があります。2021年には「カプコン動画ガイドライン」、2025年には「カプコン二次創作ガイドライン」も公開されましたが、そのきっかけは何だったのでしょうか。

保田:一番は、やはり「ユーザーの皆様の創作活動を応援したい」ということです。カプコンはユーザーの皆様の創作活動に感謝しています。今や、ファンの方々の発信がきっかけで様々な人がゲームを知ってくださるケースも非常に増えています。皆様の活動がブランドの認知を広げ、それがまた新しいユーザーを呼ぶ。そうしたポジティブな循環を、私たちがしっかりと後押しすることで、ユーザーの皆様と一緒にブランドを育てていきたいと考えたのです。

ただ、実はその裏で、社内的な課題解決という側面もありました。ガイドラインができる前は、ゲーム実況などの動画に対するスタンスが社内で統一されておらず、二次創作をする方たちに安心して創作活動してもらえなかったという状況がありました。

保田祐子(やすだ ゆうこ)
株式会社カプコン、知的財産部商標著作権室室長。

─同じ会社のゲームなのに、担当者によってルールが違ってしまっていたと。

保田:そうです。それではユーザーの皆様も「何が良くて何がダメなのか」がわからず、疑心暗鬼になってしまいますよね。「どうせ消されるかもしれない」という不安の中では、健全なファン活動も盛り上がらないのではないかと。

そこで、共通言語となるような会社としての統一見解を持とうということになりました。グレーゾーンを設けるのではなく、あえてガイドラインという形で明確にデザインし直そうと考えたのです。社内の課題解決が、ユーザーの皆様への貢献にもつながったのかなと思います。

山田:権利はもちろん重要ですが、ユーザーの皆様を萎縮させてしまうのは我々としても本意ではありません。そこで、「ここまでは大丈夫ですよ」というラインを明確にすることで、創作活動を後押ししようということになったんです。

山田健太(やまだ けんた)
株式会社カプコン、知的財産部商標著作権室著作権チーム長。
カプコン動画ガイドライン(個人向け) / 出典:CAPCOMオフィシャルサイトより

飯田:著作権法からの視点で補足しますと、日本において、ゲームソフトの映像は、判例上、「映画の著作物」に当たると考えられており、著作物として著作権法上の保護の対象となります。したがって、ゲーム画面も他の著作物と同じように、配信や改変などをするためには本来、権利者の許諾が必要です。

しかし、配信するたびに個別に許諾を取ることは現実的ではありません。そこでカプコンさんは、ガイドラインによって、あらかじめユーザー向けに配信の許諾をしておくことで、一定の範囲内であれば個別に許諾を得なくても配信できるようにしたということです。

「ゲームをプレイしたくなる動画」ならOK。ビジネスとファン活動の境界線

─特に、ゲーム配信を通じた収益化を部分的に許可している点がユニークに感じられました。企業として、自社のコンテンツで他人が利益を得ることを容認するのは、社内でも議論があったのではないでしょうか。

保田:そこは社内でかなり議論を重ねました。我々も、利益を追求しなければなりません。特に懸念されたのが、いわゆる「ネタバレ」の問題です。たとえばRPGのゲームについて、ストーリーの結末まですべて見せてしまう「まとめ動画」が溢れてしまえば、「動画を見たからゲームは買わなくていいや」となってしまう。これは明確なビジネスの阻害です。

─そうしたビジネスを阻害する二次創作と、許容できる二次創作の線引きはどのように行ったのでしょうか。

保田:おおまかには、「その二次創作や動画に付加価値があるかどうか」で判断しています。たとえば単にゲーム画面をそのまま流すのではなく、実況や解説を入れたり、編集で工夫を凝らしたりしていただいていれば問題ありません。そういった活動はむしろ、その方の創作活動として応援したいです。一方で、ビジネスを阻害するような悪質なネタバレや、公序良俗に反するものは禁止事項として明記しています。

その動画を見た人が「この人の語り口は面白いな」「こんな遊び方ができるなら自分もやってみたい」と感じてくれるものであれば、それは我々にとってもプラスになります。

─ユーザーの方がそのゲームを「自分もやってみたい」と思えるような二次創作や動画であればOK。逆に「自分でやらなくていいや」と思ってしまうものについてはNGということですね。

保田:そうですね。カプコンのタイトルを共に盛り上げてくださるパートナーとして、ユーザーの皆様を応援したい。そのための収益化の容認でもあります。配信による広告収入や投げ銭が文化としてありますので、その文化に合うようなガイドラインにしています。また、継続的に活動していただく上で、やはり広告収入や投げ銭といった対価は重要なモチベーションになるかと思います。クリエイターの皆様が正当に収益を得て、さらに創作の裾野が広がり、結果としてカプコンのブランドも育っていく。そんな、関わる全員が幸せになれるエコシステムを目指しました。

「ルール=不自由」ではない。海外と日本で異なる反応

2025年11月には二次創作ガイドラインを公開されましたが、反響はいかがでしたか?

カプコン二次創作ガイドライン / 出典:CAPCOMオフィシャルサイトより

山田:非常に好意的に受け止めていただけたと感じています。SNSなどでも歓迎する声が多く、ガイドラインがきっかけで新たに二次創作を始める方もいらっしゃいました。我々が懸念していた「ルールができると窮屈になる」という反応はほとんど見られず、安心しましたね。

飯田:日本の著作権法では、「引用」や「私的複製」などの著作権者の許諾なしで利用OKな行為が限定列挙され、包括的に利用がOKとなる行為は定められていないため、書いていないことは原則NGと受け止めがちです。だからこそ、日本においては、今回のようなガイドラインの提示が好意的に受け止められているのではないでしょうか。

―海外では違ったケースもあるのでしょうか。

飯田:著作権法は国ごとに異なる部分があります。たとえばアメリカの著作権法では、「フェア・ユース」という制度が定められていて、社会的に公正と認められるような著作物の利用について、権利者の許諾なく行うことができます。この「フェア・ユース」は、著作物の利用方法や目的を特定せずに、利用目的などの要素を総合的に考慮して事案ごとに判断するという包括的な規定なので、ガイドラインの制定によって利用が制限されるという場合もあります。そうすると、ユーザーの受け止め方も異なったものになるかもしれません。コンテンツの利活用を促進していくというときでも、国や地域ごとの法制度や文化の違いに合わせて、コミュニケーションの取り方も考えていく必要があるわけですね。

各社それぞれの事情で、ガイドライン制定が難しいケースも

─カプコンさんの取り組みを見て、追随しようとするゲーム会社も多いかと思いますが、こういったガイドラインを制定しようとしたときに法律上のハードルがあったりするのでしょうか。

飯田:ゲームには、独自に創作したキャラクターやストーリーをベースとしたオリジナルのものもあれば、アニメや漫画を原作とする、いわゆる版権ものもありますね。

自社で創作したオリジナルのキャラクター / ストーリーであれば、そのゲームに関する著作権は、基本的にゲーム制作会社が持つことなります。このような場合には、自社の判断だけで利用許諾の範囲を決められます。

─版権もののゲームだと事情が異なるのでしょうか。

飯田:版権もののゲームだと原作がありますよね。原作に基づいてゲームを制作した場合、そのゲームは基本的にその原作の「二次的著作物」に当たります。そうすると、ゲームの動画を配信するためには、原作者などの原作の権利者からの許諾も必要になります。権利関係が複雑に絡み合うため、包括的なガイドラインを出すハードルが高くなりがちです。

─ガイドラインを出すのも大変なんですね。

飯田:そうですね。今はそれぞれの会社の事情に合わせて、ユーザーとの向き合い方を模索している段階だと思います。

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