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【2025年振り返り・演劇編①】印象深かった公演や劇団は?『秋の隕石』初開催や「南極」

2026.2.9

#STAGE

『Weathering』Photo by Kozo Kaneda / 提供:東京舞台芸術祭実行委員会 / 南極 / Shakespeare's Wild Sisters Group×庭劇団ペニノ『誠實浴池』撮影:igaki photo studio / 画像提供:豊岡演劇祭実行委員会

映画『国宝』のヒットにより、初めて歌舞伎を観る人が増えたという話からスタートした、ライター陣による「2025年の演劇界を振り返る」座談会。

今回は、丘田ミイ子、川添史子、山﨑健太の3名に集まってもらい、2025年観て印象深かった作品や、どんな劇団の活躍に惹かれたのかを語ってもらった。

前編では、2025年2025年初開催だった舞台芸術祭『秋の隕石』のプログラムの充実や、同世代の劇団でありながら、拠点や戦略の異なる「南極」と「優しい劇団」の活動の好対照性のほか、コロナ禍を経て改めて考える、劇場の持つ魅力などについてお届けする。

歌舞伎の観客が大幅増加、『秋の隕石』は初開催

ーまずは、2025年印象的だった公演についてお聞きしたいです。

丘田:古典芸能に詳しい川添さんがいらっしゃるので、最初にお聞きしたいことがあって。映画の『国宝』は2025年の象徴的な作品だったと思うんです。私は全然歌舞伎に詳しくないのですが、やはり歌舞伎の集客への影響は劇場でも肌で感じるぐらいあるのでしょうか?

川添:ありますね。2025年7月以降に初めて歌舞伎を観に行った人が1万数千人という数字が出ているんです。松竹はこれを機に新規客やファンをさらに増やそうと、歌舞伎座の10月公演から25歳以下の観客を対象に、定価の半額で当日券を販売(※)しています。希望する観客すべてにイヤホンガイドを無料で貸し出した日があったそうなんですが、その日、約9割が利用したという数字も出ているとか。

普通に客席にいても、初心者の方が増えたと感じますし。2025年は襲名興行もあり、若手の抜擢もあった3大名作の通し上演もあり、『国宝』で描かれていたような芸の継承を感じる1年でもあったので、ドンピシャなタイミングに映画のヒットが重なりました。演劇関係者として、劇場に盛況感があるのはやっぱり嬉しいことですよね!

※若い人が歌舞伎と出会うことを促進する目的で、「歌舞伎座U25 当日半額チケット」が発売開始。「チケットWeb松竹」で残席の確認などができる。

丘田:ありがとうございます。想像以上の数字でした! 初めて劇場に訪れる方が増えるのはとても嬉しいですよね。

川添:例えば、「わたし賞」があったら2025年はこの演劇にあげたい、みたいなのってあったりしますか? 2025年はこういう傾向の作品に惹かれたなとか。

山﨑:個人的には、2025年は海外の舞台芸術祭も含めてこれまでに観たことがないものにたくさん出会えたという意味でかなり収穫がありました。たとえば舞台芸術祭『秋の隕石2025東京』は、ラインナップが発表された時点でこれは面白い芸術祭になるぞとワクワクしたんですよね。実際に面白い、観たことのないタイプの作品が多かったです。

岡田利規ディレクションで2025年に初開催された、国際的な舞台芸術祭

山﨑:特に花形槙の『エルゴノミクス胚・プロトセル』とフェイ・ドリスコルの『Weathering』の2本は、年間の中でもベストに入れたいぐらい面白かった。

Photo by Azusa Yamaguchi / 提供:東京舞台芸術祭実行委員会

川添:『Weathering』は私も観ましたけど、あれはすごかったですよね。

山﨑:正直、批評を書けと言われてもかなり困るタイプの作品ではあるのですが……(笑)。というのも、舞台から発せられるエネルギーを浴びることに大きな意味がある作品だったと思うんです。四方囲みの客席で、中央にあるプロレスのマットのような舞台に入れ替わり立ち替わりパフォーマーが乗って、やがて舞台が回り出す。

Photo by Kozo Kaneda / 提供:東京舞台芸術祭実行委員会
Photo by Kozo Kaneda / 提供:東京舞台芸術祭実行委員会

山﨑:最初の方のパートは活人画という、人が止まってポーズを作ることによって絵画の構図を真似るパフォーマンスを参照しているらしいんです。でも、静止しているパフォーマーを眺めていると、実際はものすごくゆっくり動いていて、段々と構図が変化していく。舞台の回転もどんどん高速になっていくなかで、パフォーマーたちは互いに服を脱がし合い、あるいは果物を食べたり草をちぎってその匂いを嗅いだり、五感に訴えるような様々なことが行なわれていく。果ては客席にもいい香りの液体が霧吹きで撒かれたりもするんです。

Photo by Kozo Kaneda / 提供:東京舞台芸術祭実行委員会
Photo by Kozo Kaneda / 提供:東京舞台芸術祭実行委員会

山﨑:フェイ・ドリスコルがアジアで紹介されたのは今回が初ですが、とにかくこんな作品はこれまでに観たことがなかった。僕が観たのは最終日の前日で、まだ席に空きがありましたが、最終日はキャンセル待ちで行列ができていたらしくて。この手のフェスティバルでは、久しぶりにそういうことが起きたんじゃないかなと思います。

丘田:観劇後のやまけんさんからオススメのLINEをいただき、私もすごく行きたかったんですが、都合がつかなかったんですよ。

川添:私は初日に観ました。ゲネを観た知り合いが「臨場感がすごいから、1番前に座れ」と珍しく指示つきでLINEをくれてたんです。その通りに1列目に座りましたが、やまけんさんが説明してくれたように、演者がほとんど動いてないみたいなところから始まるので、最初の1時間ぐらいは「なんでこれを1番前の席で観なきゃいけないんだ」って、勧めてくれた人への恨みの言葉しか頭になくて(笑)。でもだんだん分かってくるんですよね。理解する時間がたっぷりあるというのも面白かったし、アイデア勝負ですね。

山﨑:一方で、パフォーマーには結構な身体能力が要求される作品でもあります。ゆっくり回っているときはずっとポーズをとっていなきゃいけないし、後半は高速回転する舞台にうまく乗ったり降りたりしないとだし。

丘田:高速回転というのは、何か舞台装置があるんですか?

山﨑:人力なんですよ。最初に舞台が回りはじめるときは、音響とか照明のいわゆるオペレーションブースにいる人が降りてきて、パフォーマーが乗っているマットをおもむろに回しはじめるんです。で、しばらく回すとまたブースに戻っていく(笑)。中盤からマットはずっと回り続けることになるんですけど、客席の1番前でメモを取っていた演出家も途中からマットを回すのに参加したり、脱ぎ散らかされて舞台から落ちた服を舞台の回転に巻き込まれないように急いで回収したりもしてて。もともとは、最後は全裸になる演出だったらしいんですが、今回はパンイチまで。ものすごくゆっくり服を脱がし合う場面とか、バカバカしいところも多くて、そこも含めてよかったです。

Photo by Kozo Kaneda / 提供:東京舞台芸術祭実行委員会

『豊岡演劇祭2025』や海外の招聘公演はどうだった?

―フェスティバルで言うと、丘田さんは『豊岡演劇祭 2025』(※)に行かれていましたよね。

※豊岡演劇祭は、兵庫県豊岡市で2020年に始まった、観光やまちづくりと連動した回遊型の演劇祭。平田オリザがフェスティバルディレクターを務め、6年目となる2025年は「演、縁、宴。」をテーマに掲げて開催された。

丘田:そうなんです。『豊岡演劇祭』にはこの何年ずっと行きたいと思っていて、やっと2025年赴くことができました。『秋の隕石』よりひと足先に、Shakespeare’s Wild Sisters Group×庭劇団ペニノの『誠實浴池 せいじつよくじょう』を城崎で観たんですよ。

川添:日本では初演ですよね。

丘田:そうですね。この作品を豊岡で観られたのは、結構意味があったなと思っています。城崎の温泉街を経由し、不思議な銭湯を舞台にしたお話を観たあとに、帰りは実際に外湯に入るという体験ができたのがすごく大きくて。

川添:城崎ではどれぐらいのサイズの劇場でやっていたんですか?

丘田:500席ほどある城崎国際アートセンターのホールが、ほぼ満席だったと思います。

川添:『誠實浴池』は私も『秋の隕石』で観ましたが、空間構成がすごく面白かったですよね。海外とのコラボ作品ですが、よくできていたなと思うし、エロスと笑いみたいな感じで楽しかったです。川端康成の『眠れる美女』(※)をベースにしているそうですが、「あの世」のお風呂場を描いていて、そこを仕切っている女の人を片桐はいりさんがやっていて。男の人が1人ずつその店に来店して、彼らのストーリーが語られる、みたいな話ですね。

※ある老人が秘密の宿を訪れ、眠ったままの若く美しい女性と一夜を共にする。

撮影:igaki photo studio / 画像提供:豊岡演劇祭実行委員会

撮影:igaki photo studio / 画像提供:豊岡演劇祭実行委員会

撮影:igaki photo studio / 画像提供:豊岡演劇祭実行委員会

丘田:私が観た回は、城崎温泉に泊まりに来ているような海外の観光客の方が、浴衣で観ていたんです。ふらっと来るにしては、すごい作品を選んだなと思ったんですけど、その場で一緒に目撃した、という体験も込みで、すごく良かったなと思いました。

ーお話を聞いていて、演劇は「その場に行く」という要素も大きいかと思うのですが、生の体験の良さはありましたか?

山﨑:『Weathering』は匂いがしたり色々なものが飛び散ったり、特に生の体験ということが大きい作品でした。海外の作品については来てもらわないと観られないというのも大きいですよね。

これは個人的な好みなんですが、観たことがないものを観たいという気持ちがかなり強いので、印象に残った作品と言われると、そういう傾向の作品が多くなるかな。そういう意味でも、『秋の隕石』は良かったということは改めて言っておきたいですね。

川添:私は人形劇が好きなんですが、『秋の隕石』には人形劇のディレクターの山口遥子さんが入っていて、ハンダ・ゴテ・リサーチ&ディベロップメント『第三の手』とシャヴィエ・ボベス『やがて忘れてしまうもの』という、ちょっとぶっ飛んだ人形劇が2つ入っていたのも面白かったなと思いました。

シャヴィエ・ボベス『やがて忘れてしまうもの』 / Photo by Hibiki Miyazawa / 提供:東京舞台芸術祭実行委員会

山﨑:シャヴィエ・ボベスがすごく面白かったので、山口さんが企画 /統括を担当する2月の『下北沢国際人形劇祭』のチケットももう確保しました。こちらもプログラムを見るだけでも面白そう。ただ、毎日演目が変わるので、全部観ようとすると毎日通わないといけないんですよね……(笑)。

川添:人形劇祭の1回目は全プログラムを観ましたが、どれも見応えあって、すごく良いフェスティバルでした。ハズレなしなので頑張ってどうにかスケジューリングしてください!

2026年は下北沢の4会場にて2月17日(火)から23日(月・祝)に開催。公式サイトはこちら

丘田:そのときに観ておかないと、というのはありますよね。今日のお2人の話を聞いて、フェスティバルで海外の作品をチェックするのを疎かにしてしまっているなと痛感しました。

川添:でも小劇場系の演劇もそんなに再演の機会ってないから、今ここって言えば、今ここですよね。

丘田:そうなんですよね。それもあって、どうしても自分の守備範囲である小劇場の団体を優先しがちになっていて。それでもやっぱり、『秋の隕石』や『豊岡演劇祭』のような芸術祭では、自分の知らなかった新しい団体にも出会うことができるので、来年はもっと事前リサーチに力を入れて観たいと思いました。

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