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NEWS EVENT SPECIAL SERIES

Shing02×粉川心対談。価値観の転換期を迎える現代に、2人が見つける絶望と希望

2024.4.11

#MUSIC

ドラマー・即興独奏家の粉川心がソロ名義としては約4年ぶりとなる2ndアルバム『touch the subconscious』を発表した。2019年にjizueを脱退して以降、ソロツアーやkottなどでの活動を通じて出会った音楽家が多数参加したアルバムには、山本精一や勝井祐二、GOMAから、石若駿や和久井沙良まで、幅広い世代が揃い、即興演奏を軸とした真にオルタナティブな作品に仕上がっている。

そんなアルバムの参加者の中から、今回粉川が対談相手に指名したのが“Kujira”で共演をしているラッパーのShing02。jizue時代に“真黒”と“惑青”の2曲を共作しているように、すでに10年来の親交があり、粉川にとってShing02はある種のメンターで、よき兄貴分といった存在。そこで今回の対談では「自然界から見た人間界」をテーマに制作されたという“Kujira”について聞くとともに、粉川が自らの表現活動を通じて感じている問題意識をShing02に投げかける形での対話を行い、それぞれの現在地を探った。

Shing02と粉川が考える「音楽の力」

―jizueを抜けてからの約4年間、ソロやkottなどで活動をして来た中で、粉川さんが今どんな問題意識を持っていて、今回の対談でShing02さんとどんなことを話したいと思っているか、まずは聞かせていただけますか?

粉川心:Shing02さんに聞きたいことがたくさんありすぎまして……よく音楽の力について考えるんですけど、「音楽が世の中に対して、どれくらい力を持ってるのか?」みたいなことって、Shing02さんはどう考えていますか?

粉川 心(こかわしん)
1984年京都生まれ京都在住、中学からドラムを始める。jizueのドラマーとして活動したのち、現在はソロアーティストとして単独東南アジアツアーの敢行や、国内アーティストとのコラボレーションをはじめ、2020年には石若駿、松下マサナオ、山本啓らと1stソロアルバム『ANIMA』を制作、リリース。2021年からはディジュリドゥ奏者GOMAとのduoユニットでの活動や、kyotoexperimental piano trio「kott」でも精力的に活動し、同年FUJI ROCK FESTIVAL2023にもkottとして出演した。2024年には名だたるトッププレイヤー達が集結したセカンドアルバム『touch the sub conscious』をリリースした。

Shing02:平たく言えば、音楽も食事とかと一緒で、インプットするものじゃないですか。インプットするっていうことは、同じ人間でもシチュエーションや環境が変われば違う風に響くことが当然あると思うんです。

特に音楽は目に見えないじゃないですか。だから聴き手の想像に委ねる部分がすごく大きいと思うし、聴き手の感情的な部分や叙情的な部分が管理されるというか、英語で言えばトリガーされるというか、それはすごくあると思う。

Shing02(シンゴツー)
1975年東京都生まれのMC、音楽家。日本のほかタンザニアやイギリスで少年時代を過ごす。1996年にMCとして日本での活動をスタート。1999年にリリースしたアルバム『緑黄色人種』がロングヒットを記録し、2008年にはアルバム『歪曲』をリリース。国内でのライブ活動を積極的に行いつつ、グローバルかつ独立した視点を持つリリックや変幻自在のスタイルで幅広い支持を獲得している。

粉川:どこかでちょっと「人類を導こう」っていう感覚はありますか?

Shing02:それはあまりにも大それたテーマだと思うんですが、でも音楽に限らず、これまでに絵画だったり、漫画だったり、あとアニメだってね、おそらく作ってる最中に作り手がそんなことを意識してなくても、時間が経って重みを増してくるものがあるじゃないですか。

そのエクスペリエンスを共有することによって、人類共通のテーマを見つけることっていうのは、どの作品においても可能だとは思います。それはヒップホップかもしれないし、ダンスミュージックかもしれないし、あるいは服や食べ物かもしれないし、建物かもしれない。僕はそういうふうに考えてます。

―粉川さん自身は音楽の力についてどう感じていますか?

粉川:僕は言葉がない音楽をずっとやってるんですけど、言葉の持つパワフルさにはすごく影響されてるし、羨ましいなと思ってる部分がたくさんあって。何より僕がShing02さんの言葉にずっと導かれている人間なので、Shing02さんの言葉を思い浮かべたときに、「いまこの言葉みたいに自分の人生と音楽が進んでるかな?」って、一個の大きな指標なんですよね。実はShing02さんのリリックをいくつか体に彫ってるんですよ。

―見せてもらってもいいですか?

粉川:これは”Luv (sic) pt2”で、こっちが“400”なんですけど、特に“400”は僕にとってはバイブル的な意味合いがあって。<長いものはぶった切る。出る杭は打ち返す。芸術で訴える!>。これができてるかなって自問自答したときに、jizueでやり切れてないなと思って、それで抜けたっていうのは一個あって。

”Luv (sic) pt2”より<(Science + Arts) * Faith / # of our Ethnic Race!>「(科学+芸術) × 信仰 ÷ 民族の数」

Shing02:それ僕に責任を……。

粉川:話しながらそうなっちゃうなと思ってたんですけど(笑)。

Shing02:まあでも、人生はタイミングなんでね。自分を殺してまで和を尊重する必要はないんじゃないかっていうのは、そもそもの僕の信条なので。

粉川:そうですよね、本当に。

―言葉の力を強く感じつつ、でも自分が主戦場としているのは基本言葉のない音楽で、そこにはジレンマもあるのではないかと思います。

粉川:うん、ありますね。極論を言うと、できれば歌いたいです。でも自分は歌は下手なので、それはできない。その代わりに、ドラムに自分の思想を乗せることが自分の中では一番パワフルな表現なので、その手段を取ってるっていう感じです。もちろんドラムにしか出せないエネルギーも沢山ありますし。

ただ今自分がやっているようなことがどんどん必要とされなくなってるというか、外側に追いやられてるような感覚もどこかにあって。いわゆるホワイト社会みたいな、できるだけ波風立てずに生きようよっていう中で、この濃さを磨いていくことでどういうところに行けるのか迷いがあるので、Shing02さんに聞いてみたいです。個性を磨きすぎると、どちらかというとマイノリティになっていくじゃないですか。そこで世間とのずれが広がることについて、Shing02さんは悩まれたりしたことあるんですか?

Shing02:僕はたまたま小さい頃から海外生活が多くて、そこでマイノリティをずっと経験してきたわけですから非常に身近なテーマなんですけど、かといって自分はマイノリティなんだということを自覚して生きれば、別にそれがハンデになるとは思わないです。

自分と同じような境遇の人はたくさんいるじゃないですか。例えば、アジア人はアメリカの社会では本当にマイノリティだけど、世界レベルで考えたらアジア人の方が多かったりする。だからさっき君が言ったみたいに、世間とのずれが生じるとか、そういう自分対社会っていうのは、そもそもあまり気にしない方がいいと思ってるタイプで。それよりも、自分が毎日エキサイトできてるかとか、そこだと思うんですよね。どうですか?

粉川:今、とても響いてます。

Shing02:日本は相手のスペースやペースを乱さないことが一番のリスペクトだったりするじゃないですか。そこは本当に日本人特有の感覚だと思っていて、逆にその感覚はアメリカにはない。僕個人はたまたまアメリカで思春期を過ごして、ヒップポップにはまって、それでいまがあるので、今回OMAと一緒にやってる(※)のもそうですけど、やっぱり年齢や人種は関係ないところでフラットにフランクに付き合うのが一番心地いいんです。だから僕はまだずっとアメリカにいるんだと思う。

※OMAは2018年に大学で出会ったマンチェスターを拠点とする4人組のヒップホップバンド。3月9日(土)に東京・恵比寿LIQUIDROOMで開催されたイベント『Shing02 & OMA Live showcase』で共演した。

ノイズに溺れずにサバイブしていく。「本当に必要な人とは、そのときのタイミングでちゃんと引き合う」(粉川)

―粉川さんはjizue脱退後に単独で東南アジアツアーを行ったりもしていますが、日本と海外という意味では、今後の活動についてはどう考えていますか?

粉川:言葉がない分やっぱり外には行きやすいので、海外はずっと見てますね。でもやっぱり日本が好きなので、なかなか出れないです。

Shing02:それは住むってことにおいて?

粉川:住むということにおいてはもう絶対に出られないですね。

Shing02:そこはこういう時代だしこだわる必要は全くなくて、まず作品に旅をしてもらって、自分が追いかけるスタイルでいいと思うんですよね。自分はたまたまNujabesと一緒に音楽を作って、いま世界中で同時多発的にトリビュートが行われていたりするので、そういうのもとっかかりにしたいと思いつつ、DJのA-1くんとは和モノのビートをずっと作ってたりもするので、いろんな見せ方があるとは思っていて。

Shing02:自分ももう50歳近くになって、「続けてきた」っていうのもひとつの強みかなとは思うので、そういうヒストリーを振り返ったり、若い人と一緒にやってみたり、いろんなパッケージの仕方がある。それも自然にそういうことになってるから、じゃあ乗っかっていこうという感じですね。こればっかりは、俺が無理くり企画してとかじゃないので。

―先日の『クランチロール・アニメアワード2024』でOMAとA-1と一緒に“battelcry”を披露したのも、『サムライチャンプルー』のテレビ放送20周年というタイミングだったわけですもんね。

Shing02:かっこいいことを言えば、それがどこであれ、自分が必要とされているところに行きたいっていう希望が常にあるので。自分のやってることがちょっと下火になったり、コロナで世界がふるいにかけられたり、いろんなことがあるわけですよ。そういった中で続けていけてるってことは、サバイブできてるってことじゃないですか。

日々の生活レベルでほどよい緊張感を保って、それを続けていけるかっていうのが課題だと思います。それがライターさんであれ写真家さんであれ、自分と関係ないノイズに溺れちゃうと、まずモチベーションが下がってくるじゃないですか。それをブロックするのもひとつの作業というか、タイミングが来たときに準備が整ってないと、出遅れちゃうわけで。逆に言えば、何もしてなくても、準備さえできてればパッと出ていける。その切り替えは大事だと思ってますね。というのも……今日は語らせていただきますが。

粉川:ぜひとも!

Shing02:裏を返すと、無駄な動きをしないことが大事だと思うんです。自分にとって、無駄な仕事や動きをしてると、準備がパっとできないんですよ。いろんなしがらみがあったり、自分の中で自己評価が落ちていったり。だから、ただひたすら何もしないのもひとつの手だと思う。「この仕事は俺がやらなくてもいいかな」って思ったらもうやらない。でも逆に「これは俺しかできない」と思ったら、どんなくだらないことでもやるし、どんな小さな仕事でも引き受ける。実は僕は何でも屋なので、頼まれたらグラフィックもやるし、コミュニティに教えに行ったりもするし、何でもします。本当にちっちゃな個人間のことでも、俺がやった方がいいかなっていうことだったら、全然やります。

粉川:すごくわかります。自分にとって必要ではないと思ったことを断った結果、孤立していく感覚もあるにはあるんですけど、でも本当に必要な人とは、そのときのタイミングでちゃんと引き合うので、それで全然いいのかなと思ってますね。

Shing02:それが最高じゃん。

―今回のソロアルバムに参加してる人たちも、それぞれのタイミングで出会った、必然性のある人たちばかりなんでしょうね。

粉川:そうですね。ありがたい限りです。

“Kujira”に込めた怒りと希望「とことん地に落ちないと気が付かない部分ってある」(Shing02)

―“Kujira”に関してはどのような着想から制作がスタートしていて、Shing02さんとどのようなやり取りがあったのでしょうか?

粉川:壮大なテーマだったので、すぐに「これは絶対Shing02さんにやってほしい」と思いました。「自然界が人間界に対してどう思っているのか。日本語でリリックが欲しいです」というオーダーをさせてもらったのが最初です。

―なぜそのオーダーをしたんですか?

粉川:人間と自然の関わり方みたいなことにはずっと興味があって、Shing02さんはそれについてかなり深いところまで哲学を持ってはるなと思ったので、その一番面白い部分を引っ張り出せたら最高だなという着想ですね。

―タイミング的に言うとやはりパンデミックがあって、人間を中心とする世界のあり方に対する懸念が改めて議論をされたことも関係しているのでしょうか?

粉川:いや、ずっと同じレベルでそういうことは考えてるので、何かしらの答えがここで提示できたら、すごく意義深いものになるんじゃないかなというのがありました。Shing02さんにこのテーマを振ったときに、「3段階あるけどどれにする?」って言われたんです。人間が存在することがポジティブな歌詞にしたいのか、逆にネガティブな、闇の方のメッセージを強く出したいのか、その中間を取っていいバランスでリリックをまとめた方がいいのかっていうのを、井上(典政)くんのスタジオに向かう行きの車で相談して。

―京都にあるjizueの井上さんのスタジオで制作をしたそうですね。

Shing02:普段の自分の環境でのコラボレーションもたくさんやってますけど、僕はスタジオで集中的にやるのは良いことだと思っていて、セッションと同じで、その場でしかできないことが起きる。もちろん歌詞を書くには多少の時間をもらいますけど、もうスーパーサイヤ人みたいな気持ちで、その時間の中で本気を出すんです。

粉川:さっきのShing02さんからの投げかけに僕は「中間」って言ったんですけど、あとで少し後悔したんですよ。なんで中間をとっちゃったんだろうなって。僕が特に興味があるのは怒りの部分なので、怒りのオーダーをしたときにどうなってたのかなっていうのが、今日一個聞きたかったことです。

Shing02:でも曲を聴いたらわかるように、結局怒りの方が80%ぐらいで。僕の仕事は曲の世界観に寄せてストーリーを作っていくことで、曲がすごくダークな感じだったから、深海というか、光が届かないところから始まるイメージになったんです。ただ僕は手塚治虫のファンで、彼の作品はどんなにダークなストーリーでも絶望っていうのはなかなかないですよね。どこかちょっとした希望がある。そこは僕のイズムに完全に組み込まれてるんです。今回のストーリーに関しても、自然界からしたら人類っていうのは迷惑な存在でしかないかもしれない。だけれども、長い長い歴史をズームアウトして見たら、これからどうなっていくんだろう? みたいなところもあるじゃないですか。

―だからこそ最後は<このまま進めば発見しかない>で締めくくられる。

Shing02:むしろそこだけが希望みたいな、そんなオチですね。

粉川:さっきの車の中で話をしたときに、Shing02さんがポロッと「人間はもう滅んだ方がいいよね」って言ってはったんですよ。

Shing02:そんな真顔では言ってないですよ(笑)。そんな怖い人じゃないです。要するに、とことん地に落ちないと気が付かない部分ってあるじゃないですか。これだけ資本主義が進んで、貧富の差がどんどん広がって、世界中でデモが起きていて、状況は本当に良くない。今回のコロナが何だったのかは誰にもわからないですけど、人間は一度リセットして、いろんな価値観を正すときなんじゃないかなっていうのは、普通に思います。いろんなことがふるいにかけられて、何かに気づいた人も非常に多いと思うんですよ。逆に、それまでもずっとストイックに続けていた人は、そのままただ単に続けていくだけだと思うし。

―粉川さんどうですか? 人間は一度滅びた方がいいと思いますか?

粉川:実は僕もそれをずっと思ってたので、運転しながらその言葉を聞いたときに「やっぱりそうか!」って、勝手に拍車がかかっちゃってたんですけど……ちょっと抑えます。

Shing02:あんまり真に受けないでよ。ギャグなんでね。ひらたく言うと、自分たちを人類としてくくれば、自業自得の部分があるよねっていうことです。

―リリックはもちろんアレンジとも紐づいていて、まさに鯨を連想させるような、海の壮大さが感じられるトラックになっていますね。

粉川:ドラムだけで曲の世界を表現しようと思ったときに、ドラムの音をすごく増幅させたんです。倍音や、面白い周波数的なところを極端に跳ね上げて、空間を埋めたっていう感じ。そういうことをやってるドラマーもあまりいないっていうところがまずひとつ自分の中で面白かったのと、その方が音が強くなったので、メッセージの強さ、テーマの強さとハマるなと思って、ああいう音作りにしました。トラックの音に関しては京都のハナマウイスタジオの宮さんと一緒に実験を繰り返しながら作り込みました。

今回もう一つ実験的だったのは、フリーテンポでやるドラムがすごく好きなので、テンポを全くなくしたときに、Shing02さんがそこにどうラップをあてはめるかなと思って、それを実験的に投げました。これは嫌やって言われてもいいやと思って投げたんですけど、難なく乗りこなされましたね。

―中盤のパートですよね?

粉川:そうです。あそこはリズムの一貫性が全くないんです。でもそのうえで見事にラップをしてくれはって最高でした。どこでも聴いたことのないモノになったので、あの部分が一番気に入ってます。

Shing02:リズムに一貫性はなくても、曲全体のテンポは何かしらあるわけですから、そこにとりあえず割り当てるというか、ストーリーの起承転結をうまくあてはめるという感じですよね。そういう僕らが半ば実験的にやったことが、いろんなイメージを喚起するようなものになったのであればすごく嬉しいですし、最終的には本当に自由に解釈してほしいなと切に思います。ちなみに、あの鯨の鳴き声はどうやって録ったんですか?

粉川:kottのベーシストの岡田康孝がダクソフォンっていう楽器を演奏してるんですけど、それを弓でこすった音に沢山のエフェクターをかけた音ですね。彼は鯨の声を出すことに非常に強いこだわりを持ってまして、レコーディングでも一発で完璧なテイクを出してくれました。kottにも深海のストーリーを紡いだ曲があるのでその辺のイメージの共有はスムーズでしたね。

―改めて、粉川さんは曲の出来上がりをどう感じていますか?

粉川:パーフェクトですね。

Shing02:井上さんのおかげもありますね。

粉川:そうですね。井上くんもすごくスムーズにレコーディングを進めてくれましたし、Shing02さんとの関係値もあるから、リラックスした空間でできたのも大きかったです。あんなに実験的にやったのに、メッセージと、曲のストーリーと、起承転結の流れが見事にパッケージングされたなと思って、あれはもう奇跡としか言いようがない。多分2度とあんなことにはならないんですよ。そこが即興の好きなところではあるんですけど、本当に奇跡が起きた作品だなと思ってます。

https://open.spotify.com/intl-ja/track/5fac8pGg9klKEy4bIV3q06

たまたま今生まれただけ。だからこそ、とりあえずやってみる。

―Shing02さんは手塚治虫の「ダークであっても絶望にはなりきらない。どこかにちょっと希望がある」表現に影響を受けているという話がありましたが、粉川さんはそういった表現のあり方についてどう考えていますか?

粉川:僕は絶望癖が強いので、わりと日々絶望するんですよね。テレビをつけたらもう絶対絶望しますし、ラジオをつけても絶望しますし、今日もスクランブル交差点を歩いて、絶望しながらここに来ました。もうちょっとみんな嘘や騙し合いじゃなく、ナチュラルにのびのび生きられないものかなっていうのは、何をやっててもずっと思いますね。

Shing02:逆に聞きますけど、自分がのびのび生きられればそれでいいやとは思えないんですか?

粉川:そこはちょっと欲張りなのかもしれないですね。そういう世界に近づいたらいいなっていう思いが強いのか、自分だけその生活をしたとしても、もはや逃れようがないと感じるのもあるかもしれない。

Shing02:でもそれはみんなそうだよね。あなたに限った話ではない。

粉川:癖ですね。きっと。

Shing02:たとえば僕たちが数百年前に生まれてたら、今と個性は変わってないかもしれないけど、境遇が変わりすぎて、同じ人間は形成されないじゃないですか。価値観が違いすぎて。違う言語を喋ってたらまた違うふうに形成されてるかもしれないし、たまたま今生まれただけなんだって思わないと、逆にやってらんないでしょ。

粉川:そうですよね。

Shing02:100年後にはもっとガラッと違う社会になってるかもしれないし、曲を作るのと一緒で、与えられた時代と与えられた人生の中で、一生懸命やるしかないじゃないですか。与えられた課題を放棄して文句を言ってても何も始まらないし、あんまり思いつめちゃったりすると、考えすぎて何もできてないのと一緒だし。

僕は昔から、下手でも何でもいいからとりあえず何かやってみるスタイルなんです。その結果出来た荒削りなものを見て、また新しいアイディアが生まれるっていう、その連続だと思うし、とりあえずやってみないことには、上手くならないじゃないですか。人生は失敗から学ぶことの方が多くて、逆に言えば失敗しないと何も学びがないわけですよ。僕だったら言語の壁だったり、いろいろありましたけど、とりあえずは学ぶためだと思って、失敗を繰り返さないと。僕はヒップホップというか、活動家的なことをしてきて、政府や資本主義に対してちょっとうがった見方をするのもそれが当たり前。自分がマイノリティであることも当たり前。その中でいかに動いて、自分がまだエキサイトできることを見つけて、それをストイックに貪欲にやる。そこに尽きます。逆に何に希望を感じますか?

粉川:あまり希望を見出せていないところもあるんですけど、人々が魂を磨く手段を持って、それでShing02さんみたいな人が増えたらいいなという希望はあります。

Shing02:“400”にもあるけど、より若いドラマーが心くんを見て憧れる場合も少なくないわけじゃないですか。音楽をやってるっていうだけでもすごいし、内容で感動するかもしれないし、「こんな変わったアーティストもいるんだな」みたいな希望を与える立場にいるわけですから。そのことに希望を持てばいいんじゃないですか?

粉川:そうですね。そういえば、今日京都から東京まで車で来たんですけど、それに希望を抱きながら来ました。世界は1人変えたら100人変わるんですよね。

ー<一人変われば周りの百人変える力持つこと忘れんな>。まさに“400”のリリックにありますね。

Shing02:心くんがこれだけ真面目に音楽をずっと続けて来て、素晴らしいドラマーであることには全く変わりないわけですし、お互いの積み重ねがなければ、この会話自体がなかったわけですよね。だからこれからも、それぞれが誇りを持って続けていくことが大事なんじゃないでしょうか。

粉川:結果僕が励まされる回みたいになっちゃいましたね(笑)。頭ではわかっていたことでも、それを尊敬する人から直接言葉でもらえたのはすごく大きくて、また1個自分のバイブルになりました。ここからその実践が始まるので、消化をするには1〜2年かかると思うんですけど、もっとフラットに、ポジティブにこの世界を生きてみようと思います。

『SHIN KOKAWA touch the subconscious release party』

2024 5.20 mon. open 6:00pm / start 7:00pm
会場:COTTON CLUB

MEMBER
粉川 心 (ds)
山本精一 (g)
勝井祐二 (Electric Violin)
類家心平 (tp)
井上銘 (g)
高橋佑成 (key)
和久井沙良 (key)
橋本現輝 (ds)
他メンバー未定

〈予約受付開始日〉
【Web先行受付】
4/16(火)12:00pm~
【電話受付】
4/18(木)12:00pm~

詳細はこちらより:https://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/shinkokawa/

粉川心『touch the subconscious』

発売日 2024年03月06日
レーベル BRILLIANT WORKS
規格品番:BRWS-006

ソングリスト
01. moon(feat.Sara Wakui)
02. Kujira(feat.Shing02)
03. cosmic circle(feat.Yuji Katsui/ Shun Ishiwaka / Genki Hashimoto)
04. dense fog(feat.May Inoue)
05. prominence(feat.Shinpei Ruike)
06. karma(feat.Seiichi Yamamoto)
07. deep breath(feat.GOMA)
08. deep sea forest(feat.Yusei Takahashi)

配信リンク:https://ultravybe.lnk.to/touch-the-subconscious

kott「kott」

1. 光の足跡/ light cruising

2. 渦/ reflection

3. 風切音/ wind sound

4. 白夜の踊り子/ night dance

5. 白煙の地下室/ cave

6. 光/ reject

7. 波のない海/ deep sea’s stardust

8. 解放/ dive 

配信リンク:https://linkco.re/5hm0ndbM?lang=ja

レーベル:penguinmarket records  

penguinmarket records

2005年設立。kottをはじめインストゥメンタルアーティスト中心に14バンド27作品をリリース。 国外のみならず海外へ活動するバンドが多く、レーベルとして世界で活躍できるアーティスト活動のサポートとして音源リリース、アーティストマネジメントを実施。また音楽を生涯楽しめる文化を醸成する活動もおこなっている。
https://penguinmarket.net

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