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phaと語る、仲良くなるのが苦手な大人の「受動的なコミュニケーション」術

2026.4.1

#BOOK

漫画家オカヤイヅミさんが、ゲストを自宅に招いて飲み語らう連載「うちで飲みませんか?」。第14回は、『書きたいことがない人のための日記入門』(星海社新書)を刊行したばかりの文筆家・phaさんにお越しいただきました。

1978年生まれの同い年、単身者で、自分からぐいぐい行くコミュニケーションが苦手、という共通点をもつお二人。上手な人の誘い方から、子どものいない中年が感じてしまうプレッシャーまで、さまざまな話題が飛び出したサシ飲みの模様をお届けします。

当日振る舞われた「シェパーズパイ」のレシピもお見逃しなく!(レシピは記事の最後にあります)

包まれている食べ物には安心感がある?

pha:よろしくお願いします。この連載に登場しているみなさんはもともとオカヤさんのお友達なんですよね? すごく顔が広いなと思って見ていました。

pha(ふぁ)
1978年大阪府生まれ。著書は『しないことリスト』(大和書房)、『どこでもいいからどこかへ行きたい』『パーティーが終わって、中年が始まる』(幻冬舎)など多数。文筆活動を行いながら、東京・高円寺の書店、蟹ブックスでスタッフとして勤務している。短歌と散歩と日記が好き。

オカヤ:よく「知り合い多いね」って言われるんですけど、自分ではあんまりわからないというか、あまり「人と仲良くなろう!」としているわけではないんです。飲み会でも端っこにいて、隣の人としかしゃべれないですし。

pha:でも呼ばれる。なんかオカヤさん呼ぼう、となるわけですよね。僕は最近そういうのがあんまりないので、うらやましいです。

オカヤ:暇そうなんじゃないですかね(笑)。飲み会は好きなんです。居心地の悪い飲み会も好きで、「居心地が悪いなー」と思いながら二次会まで行く(笑)。phaさんはお酒はそんなに飲まないですか?

pha:味は好きなんですけど、飲んでもそんなに楽しくなったりはしないんですよね。お酒を好きな人って、お酒で解き放たれるところがあるみたいだけど、それはあんまりわからないです。集まって飲むのは楽しいですけど、家で一人で飲みたいとはあんまり思わないな。

オカヤ:私も家では飲まなくなりました。眠れなくて睡眠のお医者さんに行ったときに、寝酒が一番良くないと強く言われて。飲むとごはんがおいしくなるな、くらいが一番いいですよね。

pha:ツールとして飲み出すと、依存につながりがち、という気がしますね。僕は揚げ物をよく食べがちなんだけど、それはストレス解消のツールとして食べたくなっているだけかもしれない、と考えたりします。最近そのあたりのことをChatGPT相手にしゃべっていたら、「それは食欲ではなく、安心感を求めるために食べている」と言われて。それで、どこまで本当か知らないですけど、「包まれている食べ物には安心感があるから、天津飯とか、そういうものを食べるといい」と言われました。

オカヤ:包まれているもの……オムライスとか? ChatGPT、不思議なことを言いますね。

pha:餃子とかでもいいんですかね? どこかに本当にある説なのか、ChatGPTが考えたのかわからないですけど、でもちょっと当たっている気もするというか、包まれているものを食べがちです。

向こうから来てもらう、受動的なコミュニケーションツールとしての日記

pha:僕は自分から人を誘うのが苦手なことに最近あらためて気づきました。以前はシェアハウスをやっていたんですけど、それは、人を誘うのが苦手だから、誘わなくても人が集まってくるようにしていたんですよね。

オカヤ:シェアハウスを運営する方が、人に声をかけるよりよっぽど勇気が要りそうですけど……。

pha:僕は場所を作って待ってるほうが得意なんですよ。オープンで選ばないし拒まない感じで、知らない人も、友達の友達みたいな人もふらっと訪ねてきていました。

オカヤ:すごく苦手な人が来ちゃって困るようなことはなかったんですか?

pha:たまにはあるけど、それは税金みたいなものだから仕方ないなと割り切っていました。オンラインに日記を書くのも同じところがあって、受動的なコミュニケーションというか、「ここに置いておくから見たければ見ておいてね」という感じが、自分に合ってるんですよね。

オカヤ:それはすごくわかります。「こういうの好きなんですよ」と言っておくと、同じようなものを好きな人が向こうから来てくれるのが嬉しい。相手に踏み込んでいかなくてもコミュニケーションがとれる。

pha:そうなんですよね。僕はコミュニケーションツールとして日記を書いていて、そういう日記のあり方ってネット以前はなかったものだ、という話を、このあいだ出した『書きたいことがない人のための日記入門』という本に書きました。

オカヤ:私も日記を個人的につけることはなくて、インターネットにしか書いていないです。家で一人でいるときにこうだったんだよね、洗濯物を干すのを忘れてさ、みたいな、どうでもいいことを、人に伝えたい気持ちがあるんです。日常を人に言うことって、ケア的な面があると思うんですよね。

pha:それを言う相手がいない人が、けっこういるんですよね。

オカヤ:最近、男性同士のケアについてSNSで話題になりましたよね。私の周りにいる男の人たちは、仲良く趣味の話とかをしてるし、飲み会とかもしてるし、男の人同士が雑談しないって本当かな? と思ったんです。そんなに孤独なタイプの男の人の知り合いがいないなと思って。

pha:男の視点から見るとそういう人は確かにいるんだけど、女性からは観測できないのかもしれないですね。女性にはそういう部分を見せないだろうから。集まって趣味の話とかをするのはできても、悩んでいることを話したりはできないタイプの人はときどき見かけます。個人的な経験では、男性の友人に試しに悩んでいることを話してみたら、相手が本当に戸惑って、どう対応したらいいかわからない、という感じになってしまったことがありました。そのとき、これは数学が苦手な人に数学の話をしてしまったようなものなんだな、と思ったんですよね。その人はいい人なんだけど、相談する相手としては不適切だったな、と。あと、一対一なら弱い部分をさらけ出したりできても、男がいっぱい集まっているとそういう話をしない、というのもありそう。

オカヤ:なるほど。私は女の人同士の「ザ・女の人コミュニティ」みたいなところにもあまり関わってこなかったから、大人になってから気がついたことがいろいろあります。そういえばよく小さいお菓子をくれる人がいるな、とか。あれって、けっこういいものだなと思います。こうやってコミュニティが保たれているのか、と。

pha:女の人がよくお菓子とかくれるのはいいですよね。若いうちは意味もわからずなんとなく受け取るだけでしたけど、ああいうちょっとした気遣いの大切さが今はよくわかるようになりました。男はあまりやらないですね。見習いたい。

オカヤ:そうそう。お歳暮とか年賀状とかも、一周回ってむしろいいシステムなんじゃないかという気持ちになっています。いまって、SNSで頻繁に投稿するタイプの人しか、元気かどうかわからないじゃないですか。

pha:それはたしかにありますね。

子どもがいないことで背負わされる葛藤

オカヤ:あと、私は子どもがいないので、子どもがいる人たちのコミュニティと隔絶感があって。若い人とか子どもを見ると、私は大人として何もしていない、なにかしなきゃいけないんじゃないか、みたいな気持ちになるんです。いま連載していて、こんど1巻が発売になる『ひとごとごと』という漫画が、そういう中年女性の話なんですけど。

pha:僕も子どもがいないので、めちゃめちゃ興味あります。

オカヤ:大人ってなんだろう、結婚して子どもを作って、国に貢献する、みたいなことが大人なの? と思ってしまうんですよね。必ずしもなにか責任を果たさなくてもいいわけですけど。子どもを産んだ人だって、別に社会への責任や義務で産んだわけじゃないだろうし。けど……。

pha:そうですね。そのへんは僕もいろいろ考えます。子どもがいないとわりと暇なので、何をするべきか考えちゃいますね。オカヤさんの漫画って、そこで結論を出すわけではなく、いろんな人がいろんなことを考えて惑っている、というところがいいですよね。現実って実際にそんなものだし、わかりやすく「これはこうなのだ」という主張は、いろんなものを切り捨てていると思うので。

オカヤ:ありがとうございます。いまは価値観が転換しているときだから、「こうすべき」というのがわりと強いじゃないですか。それで、瞬発力の高さが求められている感じがありますよね。「ちょっと考えさせて。1か月くらい考えてもいいですか?」と思うようなことでも、即座に何か言わないと「黙っているのか」と言われそうで怖い、と思ってしまいます。自意識過剰なのかもしれないけど。

pha:特にXなどのSNSを見ていると「何か言わなければいけない」と圧をかけられている感じがありますね。何でも表明しないといけないのは窮屈な感じがします。思ってるけど書かないことがたくさんあってもいい。

オカヤ:それに、本当はXで表明してもしょうがない気もしますよね。

pha:みんな何か言わなければいけないような空気になってしまう、Xという空間が異常ですね。

この日のメニューは、シェパーズパイ、アサリと春キャベツと生ハム蒸し、新玉ねぎと日向夏サラダ、ホワイトアスパラ卵黄ソース。シェパーズパイのレシピは記事の最後に!
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