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Floor Essence 〜dance・club・party〜

エリック・プライズ初来日という事件。シーン再起動の予感がある2023年

2023.5.9

#MUSIC

2023年、ようやくコロナによる規制が終わり音楽の現場に人が戻ってくるようになった。ここ数年エネルギーを失いつつあった日本のダンスシーンはさまざまな理由で苦しい状況が続いていて、特に去年の東京は、シーンの基盤とも言えるageHa、CONTACT、VISIONを失った。しかし考えようによってはこの状況もリスタートする絶好の機会とも言えるのではないだろうか? パーティーは一緒に音楽聴いてたのしむ数人の仲間がいれば成立するし、ちょっとしたアイデアやこれまでの常識にとらわれないやりかたが生まれるには良いタイミングかもしれない。

この連載「Floor Essence」では、ダンスミュージックやクラブシーン、パーティーカルチャーについてのトピックやニュースなどをフォローしながら東京のシーンの再生もしくは若い世代による新しいパーティーの現場の誕生を追いかけてみたいと思う。音楽は誰にも止められないし楽しみ方は自由。そこから音楽ファンがまた、パーティーの楽しみを取り戻すことを祈りながら。

自分のスタイルを貫きながら20年近くシーンの最前線に君臨

今年、東京のシーンがもういちど活気を取り戻し、再起動を予感させる兆候はもうすでにある。ひとつは先日歌舞伎町のまん中に新しいクラブZERO TOKYOがオープンしたことだ。ここを拠点として国内の新しいシーンが生まれるかもしれないし、海外のアーティストやDJの来日の機会が増えることを期待したい。5月11日からはなんとエリック・プライズ(Eric Prydz)の初来日が東京と大阪で実現する。もうひとつはサマソニとフジロックの海外アーティストのブッキングが通常に戻ったことだ。今年はどちらも注目のダンスアクトが多くブッキングされていて、中でもフジロックの土曜日のRomyとTSHAは必見だ。彼女たちを取り巻くUKのダンスシーンについては次の機会で語りたいと思う。まずは来日直前のエリック・プライズについて私の意見を綴ってみたいと思う。

20年以上シーンを追いかけている私にとっても、エリック・プライズの来日はある意味事件と言ってもいいレベルのニュースだ。彼は2004年の“Call On Me”のチャートヒットや初期のSwedish House Mafia(ストックホルムの盟友でEDM 界をリードしてきたAxwell、Sebastian Ingrosso、Steve Angelloによる伝説のグループ)への参加など活動当初からシーンで注目を集めていた。その彼が世界中で唯一無二の存在として認識されたのが2005年のシングル“Aftermath”と翌年リリースのパオロ・モジョ(Paolo Mojo)“1983 Eric Prydz Remix”のリリースだろう。

この2曲はハウス、トランス、テクノなどのジャンルを飛び越えあらゆるDJやパーティーでプレイされていた。彼のリズムは余計なものをすべて削ぎ落とされ一つひとつのパーツのサウンドが極限まで磨かれていて、そのサウンドのクオリティーはドラムだけでも成立している。トラックの構成も至ってシンプルだが、ブレイクでのわずかな展開が信じられないくらいエモーショナルに響く、それはこの20年のあいだ日本でも多くのパーティーフリークが週末ごとのパーティーで体験してきたはずだ。2005年以降は多くのクラブやフェスが来日のオファーをしていたにもかかわらず、一度も実現はしていない。一説によると飛行機が嫌いで、長時間のフライトになる日本へのツアーは無理だろうと言われていた。

筆者も来日が無理なら行くしかないと思い、2011年にロンドンまで観に行くことにした。会場はブリクストンにあるO2アカデミー、5000人は収容できるロンドン最高のライブヴェニューだ。当然のことながらソールドアウトした会場は信じられないほどの熱気で、メインフロアへの扉を開けた瞬間に熱風が吹いてきたほどだった。そこには当時の日本が失ってしまったパーティーの熱狂が当たり前のようにあった。翌年には彼のパーティーはキャパ1万人のアレキサンドラ・パレスの2デイズとなり、この時点でもう世界のトップだったと言ってもいいだろう。

移り変わりの早いダンスシーンのトレンドからは常に一定の距離をおき、自分のスタイルを貫いているところが彼の凄さでもある。2010年代はほとんどのトップDJがEDMに接近したが、彼は自身のスタイルを貫いていた。またパーティーの演出でも2011年の時点で3D映像を取り入れていた。先日のコーチェラの中継でみた人も多いと思うが、現在では『HOLO』というタイトルで3D映像を駆使したパーティーを行なっている。今回の来日は残念ながら『HOLO』ではないが、そのぶん彼の特別なサウンドに集中できるだろう。この10年世界のシーンのトップを走り続けたエリック・プライズ待望の初来日、全ての音楽ファンに体験してほしい。

『Eric prydz Japan tour 2023』

開催日:2023年5月11日(木)
開催場所:東京 渋谷CLUB WOMB
https://www.womb.co.jp/
開場/開演23:00

開催日:2023年5月12日(金)
開催場所:大阪 CLUB JOULE
https://club-joule.com/
開場/開演23:00

開催日:2023年5月13日(土)
開催場所:東京 CLUB ZEROTOKYO
https://zerotokyo.jp/
開場/開演23:00

YODA DJ DATES

5.14 (SUN) 12:00~
千葉県屋形海岸
GROOVETUBE FES
https://www.groovetube.net/

5.26 (Fri) 23:30 – 6:00
吉祥寺CLUB SEATA
ONE AND ONLY 8th Anniversary feat. Solarstone
-Trance & Progressive Classics Night-
t.livepocket.jp/e/77nba

2023.6.04 (Sun) 9.00-17.00
横須賀三笠公園 音楽野外ステージ
Shiosai Boot Camp entrance free!!

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