映画『この夏の星を見る』が、7月4日(金)に公開される。
原作は、北海道新聞、東京新聞、中日新聞、西日本新聞、河北新報、山梨日日新聞の各紙に2021年6月から約1年半にわたり順次掲載され、2023年にKADOKAWAから刊行された直木賞作家・辻村深月の長編小説。2020年のコロナ禍をきっかけに学校生活を制限され、大人以上に複雑な思いを抱える中高生達の青春を描いた作品となっている。映画化にあたり、辻村が執筆時の心境を振り返るコメントを寄せている。
原作 辻村深月 コメント
物語の舞台は2020年、コロナ禍の一年目です。天文部を描いたきっかけは、誰にとっても非日常だったあの日々の中で野外の部活動ならばできるのではないかという単純な思いからでした。けれど、宇宙に目を向けたから見えたこと、著者の私が主人公たちを通じて見せてもらった景色がたくさんあります。志を同じくし、彼らに共感してくださったスタッフ・キャストの皆さんが映画の中で広げてくださった世界もまさにそのひとつです。
皆さんにも、彼らが「この夏」に見た星の輝きを一緒に見届けていただけたら、とても光栄に思います。
主演は『交換ウソ日記』『バジーノイズ』などに出演した桜田ひより。天文部に所属する高校二年生・亜紗役を務める。これまで誰も経験しなかったコロナ禍において、不安な気持ちを抱えながらも懸命に生きる高校生の亜紗を多彩な表現力で演じ切った。
主演 桜田ひより コメント
原作者の辻村さんの作品は以前から読ませていただいていたので、出演が決まった時に、まさか自分が辻村さんの世界観に入れるなんて…という嬉しさが込み上がりました。学生時代のなんでもないことで笑い合えたり、一緒に熱くなれる瞬間を同世代の俳優の方々と大切に演じていこうと思いました。
撮影は実際に原作に登場する高校を使わせていただいたので、感謝の気持ちでいっぱいです。
山元監督は歳がものすごく離れているわけではなかったので、感性や笑いのポイントなどが近いなと感じられる部分も多く、共感し合いながら撮影を進めることができました。共演者のみなさんも本当に素敵な演技をされる方ばかりだったので、たくさん刺激をいただきました。
映画がどのような仕上がりになっているか私自身とても楽しみです。
また同作は若きクリエイターの映画デビュー作となる。監督を務めるのは1993年生まれの山元環。ショートフィルム『ワンナイトのあとに』や配信ドラマ『今日も浮つく、あなたは燃える。』がSNSで注目を呼び、昨今では『夫婦が壊れるとき』や『痛ぶる恋の、ようなもの』などのテレビドラマで監督 / 脚本を務めている。
脚本は1996年生まれの森野マッシュ。東京藝術大学大学院で坂本裕二の元で脚本を学び、2022年に『ケの日のケケケ』で第47回創作テレビドラマ大賞を受賞。『君となら恋をしてみても』や『VRおじさんの初恋』などで脚本を担当しており、実力派の若手として注目を集めている。
監督 山元環 コメント
▼コロナ禍を演出する上での挑戦
表現においても色々な挑戦をしましたが、特に“マスクで表情が隠れてしまう制限を恐れないで描く”ことが挑戦でした。マスクは表情の 60%以上を隠し、どうしても人の情報量を減らしてしまいます。マスクを外さないということを徹底した結果、マスクは透明になり、更にマスクを外すことでシーンの鮮度はまた変わります。
この映画は、感情がマスクを飛び越えて、普通では味わえない楽しみがある映画に仕上がっています。▼初の劇場長編映画を手掛けてみて
登場人物の数/コロナ禍/マスク/星/望遠鏡など、脚本段階から制作まで一筋縄ではいかない題材の映画でしたが、とにかく想像して、模索して、原作同様に真っ直ぐ熱く届くように作りました。商業映画初監督ですが、映画の力を信じて作れたことに喜びを感じています。『この夏の星を見る』の映画の温度が、少しでも観た人の心の栄養になれば嬉しいです。▼辻村深月とのエピソード
この物語は若者に向けられた辻村先生からのエールです。この物語を監督するにあたり、若手である僕の起用を「若い人達 にこそ作ってほしい」と言ってくださり、自分を信じて映画を作ろうと思えました。この映画を作った僕自身が、エールをもらい、勇気をもらえたような気がします。▼主演・桜田ひよりや若いネクストブレイクキャストの印象
主演の桜田ひよりさんは、マスクなんて悠々と飛び越え、逆に表情が印象的で際立っていて、声もとても良かった。ひよりさんの声で表現される言葉に体重を感じて、モニター前で嬉しくなったのを覚えています。
他にも鮮度のある実力派の若手から個性のある俳優の方々まで、観ていただけたら分かる魅力のあるキャラクター達に仕上がっています。コロナ禍で切望した繋がりのある世界を存分に躍動していただきました。
脚本 森野マッシュ コメント
原作小説の中で繊細かつリアルに語られる、マスクをつけた学生たちの心の内を映像的に表現するという挑戦はとて も難しいものでした。それでも、コロナ禍であっても自分にできることを見つけて眩しく輝いている登場人物たちへの憧れが原動力となり、初の映画脚本を書き切ることができました。若手である私たちの代表作になるようにと、常に脚本に寄り添い、やわらかく見守ってくださった辻村先生に、心から感謝をお伝えしたいです。楽しんでいただけますように!
音楽を担当するのはharuka nakamura。『息をひそめて』『あのこの子ども』『アポロの歌』などのドラマをはじめ、映画やCMの音楽を多く手掛けている。2024年に公開された映画『ルックバック』では音楽と主題歌を担当。興行収入20億円を超えるヒットとなった。
なお、原作小説は映画公開に先立つ6月に、角川文庫および児童文庫レーベルの角川つばさ文庫より、それぞれ上下巻で文庫化される予定。7月の公開に向けて、改めて原作も注目を集めることになりそうだ。
『この夏の星を見る』
7月4日(金)全国公開
原作 : 辻村深月「この夏の星を見る」(KADOKAWA)
出演 : 桜田ひより
監督 : 山元環
脚本 : 森野マッシュ
音楽 : haruka nakamura
配給 : 東映
<ストーリー>
コロナ禍に覆われた 2020 年。部活動を制限された中高生たちが挑んだのは、リモート会議を駆使して同時に天体観測をする競技「スターキャッチコンテスト」。茨城、東京、長崎五島の中高生が始めたこの活動がやがて全国に広がり、ある奇跡をもたらしていく――。
<原作情報>

【単行本】
『この夏の星を見る』辻村深月 KADOKAWA
定価:2,090円(本体1,900円+税)好評発売中
【文庫】
『この夏の星を見る』上・下 辻村深月 角川文庫
発売日:6月17日予定
【児童書】
『この夏の星を見る』上・下 作:辻村深月 絵:那流
角川つばさ文庫
発売日:6月11日予定